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『最後の忠臣蔵』は吉良上野介のこともちょっとは考えてあげてほしいよ。

最後の忠臣蔵

 更新しないでごめんなさい。
 今回はリクエストを受けて観に行ったシリーズ第4弾『最後の忠臣蔵』です。
 ちなみに次のリクエストも先日頂きました。『やぎの冒険』。観に行く暇あるかな?

 観に行った映画館は新宿ピカデリー。公開からしばらく経っているのもあってお客さんの数は少なめ。ご老体が多めでした。夫婦で来ている人が多いみたい。


概要:監督は『北の国から』『ラストソング』の杉田成道。劇場映画は17年ぶり。脚本はベテラン田中陽造。『四十七士の刺客』の池宮彰一郎が原作。
 赤穂浪士の討ち入りから16年。すでに、とうに終わった事件と思われていたが、四十七士の中にあってただ一人、切腹することなく生き延びた男がいた。その男、寺坂吉右衛門(佐藤浩市)は、大石内蔵助(片岡仁左衛門)より生き証人として討ち入りの真実を後世に伝え、浪士の遺族を援助せよとの使命を受けていたのだ。遺族を捜して全国を渡り歩き、ついにその旅も終わりを迎えようとしていた。そんな時、彼は討ち入りの前夜に突如逃亡したかつての友、瀬尾孫左衛門(役所広司)と出会う。固い絆で結ばれていた2人は、主君内蔵助のために命を捧げようと誓い合ったはずだった。そんな吉右衛門の非難にも決して真相を語ろうとしない孫左衛門。しかし彼にもまた、裏切り者の汚名に耐えてでも生き延びなければならないある使命があった。それは、内蔵助の隠し子、可音(桜庭ななみ)を密かに育て上げるというものだった。その可音にも晴れて縁談話が持ち上がり、孫左衛門の使命もいよいよ終わりを迎えようとしていたが…。
"allcinema online"より抜粋)


 前回、批判豪々の『スプライス』にえらく感銘を受けた僕ですが、今回のこの作品、世の中の好評に反して、結論から言って僕はあまり楽しめませんでした。一般論に逆らってみたいだけじゃねえか?と、いよいよ僕の薄っぺらさが露呈してしまいそうですが、今回はごめんなさい。みなさん絶賛の中、不満をつらつら書かさせていただきます。

 この作品、変なところ作り混みすぎて、変なところ描写不足だったりして、つかみ所が見つからないという、そもそも『忠臣蔵』という根本となる物語に僕が一言あるため穿った見方をしがちという、そんなところが不満の原因なのですが、そこを書きたいと思います。


 まず、根本を否定してしまうようで悪いのですが、『忠臣蔵』という物語が僕はどうしても好きではないのです。
 色々なアプローチの仕方で何千回も繰り返し作られてきたこの物語、その多くが美談であると語っているけれど、天の邪鬼の僕には、嫌味を言われて癇癪起こした男のために、その子分たちが47人も集めて老人を集団リンチしにいく物語に思えてしまう。
 で、更に苦手なのはその全員が集団自決するところ。浅野内匠頭の遺恨を継いで復讐したのであれば、その意思を継いだものは生き残るべきであって、それが主君の後を追って死んでしまっては、浅野内匠頭も報われないのではないかと、それって「死ねば感動」みたいな昨今の日本映画が持つチープな病理に通じるものを感じる。

 まあ史実なのだから仕方ないのかもしれませんし、それが近世的な美学なのかもしれませんが、あまり気持ちのいい物語には思えません。

 で、本作はそんな『忠臣蔵』のその後、16年後を描いた物語。

(以下ネタバレ)

 しょっぱなから物語の結末の話を書きますが、最後に主人公の役所広司演じる孫左衛門が役目を終えたからと、先に自決して散っていった同志のあとを追い、切腹するんです。で、それに感動した佐藤浩市演じる吉右衛門が「お主は48人目の赤穂浪士じゃ(AKR48)」みたいなことを言う。
 で、そこにいたるまでの物語を見るに、本作は浅野内匠頭の遺恨を継いだ大石内蔵助の意思がその後如何にして受け継がれていったかって事を描いた作品だと思うのです。

 例えば3人の主人公はそれぞれ、吉右衛門は赤穂浪士の意思を生きて記録すべく、可音(桜庭ななみ)は大石の血を絶やさぬように、孫左衛門はそのような彼女を見守るようにっていう使命を持ち、終盤最も感動させたいシーンなのであろう大石にかつて恩義を受けた者たちが可音の結婚式に集うシーンも、赤穂浪士の意思は生きていることを表現している。

 で、そこに関してはとてもいいと思うんです。「最後みんな死んじゃってどーすんだよ!」といった『忠臣蔵』という物語に感じていた不満を補ってくれている。

 すると「なんで最後孫左衛門切腹しちゃうの?」って疑問がなおさら湧いてくる。それが他殺ならまだ「やはり夢(意思をつぐということ)は儚く散るのか」ってな具合の儚げな哀愁など出て、いいかもって分かるんですが、役所広司自分から進んで意味なく切腹しちゃうんだもの。残された者の苦しみとか彼がいちばん分かっているだろうに、彼に恋していた可音やゆう(安田成美)を置いて自己満足的に切腹してしまう。
 これでこの物語が何やりたいのかまるで分からなくなっちゃうんです。
 結局「意思を継ぐ」って物語を否定してやいないか?
 「死ぬより生きることのほうがつらいような孤独」って分からなくもないのですが、そんなに辛そうでもないしっていうか、回想シーンでの可音との日々とかすごく幸せそうだったし。


 で、これ僕の読解力の問題かもしれないけれど、可音の恋も、浅野内匠頭の意思も、赤穂浪士の意思も、孫左衛門の命も、どれもこれも何も実らせず全て儚げに消えてしまう。それは冒頭に引用される近松門左衛門の『曽根崎心中』のフレーズ〝この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜、一足づつに消えて行く、夢の夢こそあはれなれ〟が示すように。そして儚く消え入ったそれら赤穂浪士たちの受け継がれた意思が結集することでただ一つ実らせることができた少女の成長と幸福ってのを書きたかったのかなーとは思います。
 が、それを感じさせるには描写がちょっと下手なのが気になって、どうしてもそれを素直に受け入れにくい。


 例えば、この映画は起承転結の「起」の部分が長すぎて、説明された様々な要素がその後どう障害にぶつかり、どう転がっていくかという、この物語が何をやりたいかわかる部分に到着するまで(可音が大石内蔵助の隠し子と判明するときまで)が長すぎる。
 それに加えて、実のならない木を見て、吉右衛門が「実のならない木か…まるで俺のようだな」とか、セリフがいちいち説明くさいから、ただでさえ設定説明が多い冒頭部分が退屈に思えてしまう。
 説明と言えば感傷的すぎる音楽とかもあまり好きではない。
 『北の国から』ってとても好きなドラマなのですが、やはり杉田成道監督って、映画よりも分かりやすい説明が求められるテレビドラマ向けの人なのかなって思ってしまう。

 逆に肝心なところは説明不足で、例えば大石内蔵助を慕っていた家臣たちが最後に可音のもとにかけつけるシーンで、大石内蔵助がどれだけ立派なことをしたかの描写が、冒頭で吉右衛門が彼の遺言で赤穂浪士の親族にお金を渡して回ったり程度のもので、その偉さがあまり伝わらない。
 「いや、大石内蔵助のやったことはみんな知ってるでしょ?」なんてツッコミが入るかもしれないけれど、大石内蔵助ってもはやほぼ創作上のキャラクターみたいになっていて、彼の描き方は作品によって多種多様である。僕みたいに彼にあまり好印象を持っていない人もいる。そんな宙ぶらりんのキャラクターをほとんど描写せず、その立派さをさも周知の事実のような感じで描くのでまるで説得力がない。

 結婚式に駆けつけるのが孫左衛門を疑っていた吉右衛門や、かつて孫左衛門を襲った家臣三人組だけだったら、そこまでに彼らが大石内蔵助を如何に思っていたかの描写があったから感動出来たんだけど、次から次へとあれよこれよと見も知らぬ家臣達が来るあのシーン、あれじゃいくらなんでも来すぎで嘘くさい。


 このように『最後の忠臣蔵』は描写がいまいち物足りなく、テーマを素直に掴みにくい映画になってしまっているように感じた。そもそも『忠臣蔵』に愛着のない僕のような「故」には冷たく「新」も知らない輩には、前提としての『忠臣蔵』に対する美学が伝わりにくいのだから、その描写をほとんど省いてしまうのは、根本的な説得力が欠けている風に感じる。


 あと、これは単純に読み取れなかったか見落としてしまったのですが、あんなに結婚を拒否してた可音が急に結婚を意識したのは、吉右衛門が何か口添えしたから?


 良かった点もたくさんあります。例えば季節の描写、落ち葉や雪など、日本家屋にあわさったりして、ちょっと記号的な表現すぎるきらいはありますが、まあ美しいものは美しい。
 あと人形浄瑠璃を挿入するセンスとか好きです。

 他の不満点としては大石内蔵助といったら彼を演じた片岡仁左衛門さん、老けすぎやしないか? というかこの映画、全体的に役者さんが老けすぎ。江戸時代ってもっと平均年齢若くないだろうか。


 多分、悪い映画ではないんです。何度も申しあげているように、『忠臣蔵』がそもそも嫌いな僕には、ハナからその美学を一般的なものであると前提して語っていくストーリーテリングゆえに、穿った見方をしてしまったってのもあるんでしょうね。
 『忠臣蔵』が好きな人には、むしろウケがいいのかもしれない。

 加藤ローサレベル。

 次回は、えええ、リメイクなんて作ってたんだーでおなじみの『THE JOYUREI ~女優霊~』の感想。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/01/24(月) 01:07:35|
  2. 映画サ行
  3. | トラックバック:2
  4. | コメント:6
<<『THE JOYUREI -女優霊-』を撮った意味がわからないよ。 | ホーム | 『スプライス』は正しい保健体育の教則映画だよ。>>

コメント

こんにちは

 そうなんですよねぇ。孫左衛門が生きてこそ、訴えられるものがあると思うんですけど、そういう意見は少数派か…。
 まぁ、そう思うのは、私が『忠臣蔵』をあまり好きではないためかもしれません。『忠臣蔵』といえば、真っ先に思い浮かべるのが赤穂浪士の残虐さを検証した杉浦日向子著『吉良供養』ですから。

 あと、可音が急に結婚する気になったのは、吉右衛門の登場で、内蔵助の遺志を継ぐということを意識したからではないでしょうか。
 吉右衛門も孫左衛門も「個」を殺して内蔵助の遺志のために行動している。であるならば、内蔵助の忘れ形見たる自分こそ「個」を考える立場ではない。そう自覚して、みずからも「個」を犠牲にしたのでしょう。
 本作は、登場人物が「個」を犠牲にして、集団の一体感の中に埋没する物語――孫左衛門の死によって、そんな風にも感じられます。
  1. 2011/01/26(水) 03:40:32 |
  2. URL |
  3. ナドレック #cxq3sgh.
  4. [ 編集 ]

>ナドレック様
 コメントありがとうございます。
 そんな本あるんですね、興味深いです、『吉良供養』。読んでみます。図書館にあるかな。

>登場人物が「個」を犠牲にして、集団の一体感の中に埋没する物語
 なるほど、その集団の意志の結晶が可音の幸福であったと、確かにそう観ると彼女の行動に一貫性が読み取れますね。
 どこかに書いてあったけれど、「自己犠牲」の精神は現代人には共感しづらいと。特に戦後、集団主義に拒否反応を示しがちな日本人にとって。そのわかりづらさをアンチ『忠臣蔵』の僕なんかにもきちんと伝えられる内容であったら素晴らしかったのになと思います。
  1. 2011/01/27(木) 12:33:49 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

ちなみに

私は『吉良供養』を雑誌掲載時に読みましたが、『ゑひもせす』という本に収められています。
  1. 2011/01/28(金) 04:11:25 |
  2. URL |
  3. ナドレック #-
  4. [ 編集 ]

>ナドレックさま
 ご親切にありがとうございます。図書館で予約いたしました。
 ついでだから敬愛する市川崑監督が映画化した、『最後の忠臣蔵』と同じ池宮彰一郎原作の『四十七士の刺客』も予約してみました。
  1. 2011/01/29(土) 00:56:47 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

自決について

赤穂浪士が討ち入り後に自決したのは、主君の後を追った訳ではなく、徳川家がくだした主君の切腹という判断に対し半旗を翻したのではない、ただただ主君の恨みを晴したかっただけだという意味で自決をしたと聞いた事があります。
もし切腹をせずに、裁きを受けての切腹であれば、仇討ちではなく徳川家の判断が間違っているという抗議になり、それはある種のクーデターになってしうまう。それを防ぐための四十七士の最後の忠臣、それが切腹だと思いますよ。
  1. 2011/08/26(金) 03:06:04 |
  2. URL |
  3. 名無しの権兵衛 #-
  4. [ 編集 ]

>名無しの権兵衛さま

 はじめまして。
 コメントありがとうございます。

 そういう政治的な意味合いもあったのですね、あの集団自決には。そう考えると、政治的な行動の原点にロマンスがある物語とも読め、僕好みの物語に近づいて、少し苦手意識が薄れます。
 また遊びにきてください。
  1. 2011/08/26(金) 11:22:57 |
  2. URL |
  3. かろうじてアメリゴ・ベスプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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