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『ロシアン・ルーレット』では弱者は弱いよ。

13

 今回はリメイク企画すっかり忘れていました『13/ザメッティ』のハリウッドでのセルフリメイク『ロシアン・ルーレット』の感想。

 観に行った映画館は新宿ピカデリー。ポイントシステムが変わってポイントで観に行きづらくなりました…。
 客層はぼちぼち。ここはいつもそこそこ混んでますね。30~40代の男性一人客が多めでした。


概要:2010年のアメリカ作品。2005年の『13/ザメッティ』のセルフリメイク。製作総指揮・監督・脚本・編集・原案はゲラ・バブルアニ、音楽はマルコ・ベルトラミとバック・サンダース。
 病気の父を抱えた貧しい青年ヴィンス(サム・ライリー)。ある日、ひょんなことから耳にした大金が入るという仕事を求めてとある館へとやって来る。内容も分からず足を踏み入れたヴィンスだったが、なんとそこでは、17人の男たちが円になり、一斉に目の前の男の後頭部に向けて引き金を引く集団ロシアン・ルーレットが行われようとしていた。最後まで生き残れば100万ドルの賞金だが、運のない者には死だけが待っていた。プレイヤーは、刑務所からそのまま連れてこられたパトリック( ミッキー・ローク)や、弟ジャスパー(ジェイソン・ステイサム)によって無理やり病院から連れ出された重病のロナルド(レイ・ウィンストン)らワケありの連中ばかり。しかもその周囲には、それぞれのプレイヤーに大金を賭ける醜悪なギャンブラーたちの姿。成り行きからゲームに参加することになり、他のプレイヤーと同じように1丁の拳銃と1発の銃弾を渡され、第1ラウンドへと臨むヴィンスだったが…。
“allcinema online"より抜粋)


(1)幼少のころより荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』信者であるぼくは迷いもせず先日発売された『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を購入いたしました。
 この本の素晴らしさは言うに及ばずですが、その序文に書いてあった"ホラー映画の持つ意味"「かわいい子にはホラーを見せよ」が名文だったのでそこを抜粋したいと思います。

 世界の醜く汚い部分をあらかじめ誇張された形で、しかも自分は安全な席に身を置いてみることができののがホラー映画だと僕は言いたいのです。(中略)登場人物たちにとって「もっとも不幸な映画」がホラー映画であると。だカラ少年少女が人生の醜い面、世界の汚い面に向き合うための予行演習として、これ以上の素材があるかと言えば絶対にありません。もちろん少年少女に限らず、この「予行演習」は大人にとってさせ有効でありうるはずです。(P.17,L.1~)



 すなわち物語とは多かれ少なかれ違う人生や生活の"追体験"なわけで、美しくハッピーな追体験と同様に、最悪な不運の追体験もあり、それを経験することは重要であると。
 例えば『塔の上のラプンツェル』は醜が美に打ち勝つ物語であったし、『ザ・ファイター』は経済的にはかなり下層な方にいる一般的な家族が協力しあってボクシング世界チャンピオンの座を勝ちとるという物語だったし、『処刑剣 14 BLADES』は悪の国家権力に強靱な肉体を持つ一人の兵士が立ち向かう物語であった。
 このように多くの映画(特に上記のような純粋エンターテイメント作品)は大体弱者が強者に勝つのが常である。
 なぜそれがエンターテイメントとして成り立つのか。それはそのことが珍しいから。強者が弱者に勝つのが世の常だからだ。
 ホラーは逆だ。最悪のタイミングで最悪な存在が最悪なことをする。

 さて、『ロシアン・ルーレット』弱者が強者にとことん打ちのめされる、映画では珍しい、現実的ではありきたりな恐怖を描いている。これはそういう類の追体験を描いている作品だ。


(2)本作は強弱がはっきりした物語である。
 テーマはシンプルであり、強い者は常に勝ち常に得をし、弱い者はとことん損して敗北し無造作に死んでいく。金持ちが痛い目にあって貧乏人が得をする映画が多いのは、現実はそうでないからだ。権力者は傷つかないが、底辺にいる弱者はすべからく損をする。

 経済的弱者の主人公ヴィンスの父は瀕死の負け犬になっているし、気の弱そうなヴィンスはゲーム参加者からいじめられたりする。圧倒的な権力を持っていると思われるギャンブルの参加者たちはなにをやっても(例え人を虫けらのように殺しても)自由だ。ヴィンスの直属のオーナーとなる老人の、枯れきった身体とは裏腹に欲望に煮えたぎる瞳の不気味さが素晴らしい。
 マイケル・シャノン演じる人を人となんてまるで思っちゃいない司会者は実に雑に参加者を扱い、どぎつい音響(弾倉をカラカラと回す音、ブザーの音、乾いた銃声はなんだかレイプされた感覚だ)は頭をガンッと殴られたようで、それらの要素によって観客は様々な欺瞞や飾りを剥ぎ取られ弱者となり、ヴィンスとともに異様な緊張感がある暴力の渦に強制的にまき込まれる。それはボンヤリしていたら取り返しのつかない暴力にまき込まれてしまったという『ヒーローショー』を彷彿とさせる恐怖である。

 以上、強弱がハッキリした本作では、強者はなんでもアリで、弱者はただ強者にいいようにされるだけなのだ。
 

(3)あまりにニヒルに”力”のヒエラルキーを描く本作が、弱者に一つ救いを提示しているならば、力ある者に勝つ可能性を提示している点だ。
 弱者を問答無用で虐げる暴力を避けるために必要なのはただ一つ"より強い力"だ。強者より強い力を持てば強者に勝てるのだ。

 強弱がはっきり出ていると書いたばかりで矛盾しているが、リボルバーの中に弾を一発だけ装填して誰かが弾に当たって死ぬまで参加者それぞれが自らを撃っていくというゲーム・ロシアンルーレットにテクニックの強い弱いは基本ない。それは運の問題とされる。
 それなのに本作では参加者のうち誰が生き残るかというギャンブルのオッズはやたら偏るし「あいつは強い、あいつは弱い」という情報が飛び交う。
 そして実際にロシアンルーレットに"強い者"と"弱い者"がいる。もちろん、"強い者"が勝ち、"弱い者"が負ける。

 『インビクタス -負けざる者たち-』でマンデラ大統領の強靭な「負けざる信念」が少しだけ世界を変えたように、この物語には、おそらく「信念」が強いほど強運を呼び込むというルールがある。

 ヴィンスの貧乏から脱したいという信念が彼に"ロシアン・ルーレット"の参加の切符を手に入れさせたし、最初は子猫のように怯えていた彼がそれでも生き残りたいという信念を強靭にもったからこの凄惨なゲームに生き残ることができた。死に損なったプレイヤーが処刑されたり、恐怖のあまり立てなくなった太った黒人プレイヤーが死んでいったりと、弱気になった者から死んでいくのだ。ヴィンスが最終的に勝利するカギとなるのが、原題でもある"13"という背番号にある。この呪われた数字にビビった者から破れていくのだ。
 全てが死んだようにざらついた映像のなかで、怯えながらも強力な生命のエネルギーを失わないヴィンスの瞳が印象的である。

 ところで本作は別にアクションシーンもないのに、まるで『エクスペンダブルズ』のように肉体派俳優ジェイソン・ステイサムミッキー・ロークが出ている。彼らのたくましい肉体は"強者"のアイコンであり、本作においても、実の弟をコマのように扱い死なせたり、悠々と勝利し、大金をせしめたりする。なぜなら彼らはシンプルに"強い"からだ。


 以上、本作は強者がとことん勝ち、弱者がとことん損をするというシビア極まりない世界を描き、恐怖の追体験を観客に与える作品だと感じた。


 ところで、ヴィンスは"強者"となり勝利を手にするが、"強い力"は彼に幸福をもたらすのだろうか。本作の哀しい結末は何かもう一言いいたげである。


(4)不満点というほどではないのですが、『悪魔を見た』『ビー・デビル』『ホステル』はたまた『プレシャス』『ブルーバレンタイン』『ヒーローショー』などなど様々な残酷映画を見てきた我々としてはもうちょっとはらわたをほじくり出されるような感覚に襲われてもいいとは思いました。いささかパンチが弱い。

 あとオリジナル版『13/ザメッティ』と比較すると、あちらはフランスのど田舎って点と、モノクロって点が殺伐とした得体の知れない不気味さを描いていて好きだったのですが、本作はアメリカだしカラーなのが少し残念。総じてこのリメイク版の方が好きなのですが。


 そんなこんなで、恐怖映画としてはなかなかの作品だと思います。強力な音が素晴らしいのでお家で鑑賞するのならばなるべくヘッドフォンかけて大音量での鑑賞がオススメです。

 神田沙也加レベル。

 次回はダニー・ボイルの新作です『127時間』の感想。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/07/02(土) 03:28:12|
  2. 映画ラ行
  3. | トラックバック:10
  4. | コメント:2
<<『127時間』はトレンディな孤独だよ。 | ホーム | 『赤ずきん』はジュブナイル向け『アンチクライスト』だよ。>>

コメント

節理

生き残らせる、生き残らせないは神のみが決める。
プレイ中も、プレイ後も、とでも言いたかったみたいだ。
  1. 2011/09/04(日) 23:20:59 |
  2. URL |
  3. ふじき78 #rOBHfPzg
  4. [ 編集 ]

>ふじきさま

 こんばんは。
 コメントありがとうございます。
 個人的には神無き世界の物語と読めましたが、無慈悲な神の視点でもありますね。
 またきてください――という前に更新しなくちゃ…。
  1. 2011/09/07(水) 00:41:14 |
  2. URL |
  3. かろうじてアメリゴ・ベスプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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