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『恐怖』は「呪いの映画」かもよ?

恐怖
 夏は楽しい映画が多くて大変ですね。早く見ないと終わっちゃう映画もたくさん。
 そんなわけでこの映画のせいで、他の映画の感想の更新が大幅におくれているのではないかと思われる、『恐怖』の感想を今回は書きたいと思われます。

 観に行った映画館はテアトル新宿。かなり重要な映画館の一つだと思いますが、このブログに登場するのは地味に初めてですね。客層は怖がりたがりの高校生がたくさん。うるせー。上映中もぺちゃくちゃ喋っていましたが、内容が内容なだけに、しだいに唖然として腑に落ちない顔をして映画館を出て行ってました。怖がる準備は万全で、でもJホラー的な表現はかなり控えめな映画で、例えば『呪怨』のような「ここで怖がれ!」って描写がないため、仕方なしに警官が登場人物に刺されて血を噴き出す怪奇でも心霊でもなんでもないシーンで「きゃっ!」とか言っていたのがおかしかったです。


概要:Jホラーの火付け役として知られる一瀬隆重プロデュースの「Jホラーシアター」シリーズ、最終作品。監督・脚本は『リング』や『女優霊』『おろち』の脚本家高橋洋。
 開頭手術によってむき出しとなった脳に電極で刺激を与え反応を調べる実験を記録した戦時中のフィルム。実験台となった人々は、人間が普段見えない何かを見るようになる。それを凝視する医師の悦子(片平なぎさ)。やがてスクリーンに映し出される白い光。偶然にも、その不思議な光を目撃してしまった幼い姉妹、みゆき(中村ゆり)とかおり(藤井美菜)。17年後、死に取り憑かれたみゆきは集団自殺の募集に引き寄せられ、失踪してしまう。姉の行方を追うかおりは、音信不通となっていた母・悦子の存在に辿り着くのだが…。
"allcinema online"より抜粋)


 映画に限らず多くのすぐれた芸術は「世界の創造」を行っていると言えないだろうか。例えばビートルズの曲をはじめて聴いた時、世の中の見え方がちょっと変わった気がしたし、古今亭志ん生の落語を聞いたあと世界がオモシロおかしくいとおしく思えたり。もっと具体的なものを言えばこの映画の監督高橋洋に強く影響を与えたと言われる楳図かずおはそれまで培ってきた恐怖への探索を追求し、向上させ、活かすことにより『14歳』で一つの新たな世界を創造してしまった。
 で、この『恐怖』も、「ジャパニーズホラー」と呼ばれる作品群が持つ独特の演出方法を追求していくことで一つの新たな世界観を創造したのではないかと思われる。今回の論旨はそんな『恐怖』による「世界の創造」。そこを考えていきたいと思います。


 まず、ジャパニーズホラー的な恐怖演出とはなんぞやという、そのごく簡単な説明から。
 端的に言うと、「無意味に思える映像のモンタージュが観客の心に喚起させるイヤな想像」ではないかと。 
 ジャパニーズホラーといってもその手法などたくさんあって定義化するのは難しいのだが、誤解を恐れず簡単に言ってしまうと「心霊写真の動画版」である。
 歴史的には『邪眼霊』や『スウィート・ホーム』から始まったと言われ、『女優霊』『リング』などの作品がそれをブラッシュアップしていき、『呪怨』『回路』なんかがそれを発展させたと言われていて、それらは総じて「フィルムに映っているいびつな『何か』の恐ろしさ」を描く。
 例えば『邪眼霊』で流れる情報番組に映り込んでいた遥か後方でぬっと立っている白い女性。『女優霊』でロケバスの中に誰にも気づかれずふっと立っている幽霊。彼女たちがなぜそこにいるのか、存在意義は不明だし無意味、その存在に気づかない観客すらいるかもしれない。だがそこに彼女らが存在する異物感の放つまがまがしさとリアリティは凄まじく、だから彼女の持つ「無意味」にも観客は「イヤな想像」を巡らしてしまう。「イヤな想像」はエスカレートしていき、「これ以上イヤな想像をしたら気がふれるかも」と、スクリーンから目を背けたくなる。その「無意味」の不気味さを完成させているのが、ご存知『リング』に出てくる「呪いのビデオ」だ。全ての映像に意味がないのに、俳優の意味深な演技や光と陰の奇妙な演出によってとても不気味なものになっている。

 『女優霊』も『リング』もそこで描かれる恐怖は「見てはならないもの」に起因するが、この見れば見るほどイヤな想像が駆け巡り目を背けたくなる「無意味」の恐ろしさが、「見てはならないもの」が心底怖い原因であると、ここでは考える。


 で、本作『恐怖』はその「見てはならないもの」に対する恐怖を突き詰めて描いている。そのイヤな想像がとめどなく我々の脳を行き渡ったら、人はどうなるのか、そこに高橋洋による「新たな世界観の構築」がある。

 この世は実は「見てはならないもの」に囲まれている。片平なぎさ演じるマッドサイエンティスト悦子は「見てはならないもの」を認識できる脳を持つ事を人類の進化と述べているが、その存在は全ての法則を根本的に否定し、人が人であることすら否定する。だから脳はそれを意図的に見せないことで自我を保っているのだ。なので見てはならないものに囲まれているという概念を実感しただけでも、脳の視覚制限は解除されてしまい人は正気を保つことが難しくなる。
 つまり高橋洋は『女優霊』や『リング』で描かれた「見てはならないものを見てしまう恐ろしさ」にありふれた世界を暗示し(実際にハッキリとした見てはならないものたちの描写は本編には出てこない)、それを追求していくことで新たな世界観を観客に提供しているのだと思われる。
 言い換えてみれば、今作は、我々は気づいてないだけで常に「貞子」に見つめられて生きているのだという、もはや哲学的とも言っていい魔の世界観の可能性を提示し、映画館を出た後の観客に世の中をちょっと違った恐怖に満ちた世界に見せている。

 この「新たな世界観」の描写は、前述したようにハッキリとはされないが、断片的にちらつかせ、より観客がその「世界」にイヤな想像をする仕組みになっている。
 例えばまったく意味のわからない少女の突如の妊娠。登場人物の背後に妙な空間を空けて不安感を誘ったり、カットのテンポも妙におかしいことがある。そのような連続に、観客はイヤな予感をかき立てられる。いわば、『リング』における「呪いのビデオ」を94分見させられる感じ。
 そのような描写の積み重ねで、観客はイヤな予感を次々として、例の「魔の世界観」の存在を感じるようになる。


(以下、重大なネタバレになります)


 ここで、最後、この物語がただ一人の登場人物の脳が見せたまやかしである事が示唆される。
 例えば『姑獲鳥の夏』や『マトリックス』『ゼイリブ』などでも語られたことだが、「脳」が見せてしまった以上、それが本当に現実にあるものかどうかといった違いはなくなる。脳は視覚だけでなく、触覚、嗅覚、聴覚、味覚も全て支配してしまうのだから、「ある」ものは「ある」のだ。
 脳が見せるまやかしを否定できない以上、やはり「魔の世界」は実存するのだということをこの映画は証明するである。

 作中、みゆきの脳がみゆきの目に見せているはずの主観のビジョンが周囲の人々にも感染していき、周囲の人々も「見てはならないもの」を見れるようになる。つまり「主観が客観化」していく。その現象が意味するのは、「魔の世界」の広がりである。脳がみゆきの五感に見せているものが「現実」である限り、必然的に他者にとってもその感覚は「現実」であり得ないはずはないのである。だから周囲にいるものにも瞬く間に「魔の世界」の認識は広がるようになる。


 以上、靍橋洋監督は、『女優霊』『リング』と今まで培ってきた、「見てはならないもの」(「無意味なもの」が連続する事で観客が喚起される「イヤな想像」)を作品の全編にわたって描写する事により、「魔の世界」の存在を示唆し、一方で脳の見せる世界の非現実性を否定する事で、「魔の世界」の実在を証明し、我々観客がそこで日常をすごしていることを実感させるのである。


 不満点としては、やはり、いくらなんでも分かりづらすぎるところ。説明過多な作品が多くて飽き飽きしていましたが、説明不足すぎるかなあって。まぁ説明は少ないくらいの方が怖くていいのだけれども。
 あとサービス精神をもう少し持って欲しかったです。やっぱり身の毛もよだつようなJホラー的表現ってのは、先の高校生達だけでなく、ほとんどの観客が期待して観に行っただろうし、そこらへんはお約束としておさえておいて欲しかったかなって。まぁ、もはや消費され尽くした貞子的表現を今高橋洋監督がやる必要があるのかと言われれば、微妙だし、今作でそれをやると単なる「びっくり装置」になりかねないから、まぁ無い方が上品ではあるけれど。

 あと最後の劇場が震えるほどの絶叫や片平なぎさの淡々と喋る様子は、けっこう恐かったです。

 評価はね、かなり難しいんだけれど、決してエンタテインメントとして成功している映画ではないんですね、でもなんか妙に気になる、僕もあんまり気になって、ここ数年のJホラーの名作と呼ばれる映画やTVドラマなど片っ端から見ている調子だし、やっぱりこういう「なんだかわからないけれど妙に気になる映画」ってのはすごいと思います。他の方のブログ等見てるとたいてい評判悪いっぽいんだけれど…。
 柏木由紀レベル

 今回も長かった…。
 次回は、これまた話題のホラー映画『僕のエリ、200歳の少女』の感想を書きます。


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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/07/31(土) 01:32:30|
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