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『トゥルー・グリット』のコーエン兄弟は多分信じられるよ。

トゥルーグリット

 今回はアカデミー賞にもノミネートされてました。コーエン兄弟の新作『トゥルー・グリット』の感想です。
 『シリアスマン』とこの『トゥルー・グリット』、コーエン兄弟の映画が立て続けに見られるのは幸せですね。

 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ。お昼に行ったのでたいして混んでいませんでした。客層は年配の方が多め。やはり西部劇は年配の方に人気があるようです。


概要:69年のジョン・ウェイン主演西部劇『勇気ある追跡』の原作ともなったチャールズ・ポーティスの同名小説をジョエル&イーサンコーエンが映画化。監督・製作・脚本・編集を兼任する。音楽はカーター・バーウェル。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。
 自立心と責任感を併せ持つ14歳の少女マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は、町を訪れていた父親が雇い人のトム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に殺されたとの報せを受け、自ら遺体を引き取りに向かうとともに、必ず父の仇を討つと心に誓う。しかし、犯人のチェイニーは法の及ばないインディアン領に逃げ込んでしまう。そこでマティは、大酒飲みだが腕は確かな隻眼のベテラン保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)に犯人追跡を依頼する。最初は子ども扱いしていたコグバーンだったが、マティの執念に押し切られ彼女も同行することに。やがて、別の容疑でチェイニーを追っていた若きテキサスレンジャー・ラビーフ(マット・デイモン)も加わり、少女には過酷すぎる旅が始まるが…。
"allcinema online"より抜粋)


 『ボーリング・フォー・コロンバイン』の途中で挿入されるアニメで言っていたことだったと思うけど、アメリカ人は様々なものに怯え続けてきたと、最初はインディアン、続いて黒人、続いて社会主義国家、続いて中東諸国。その発展に則すように銃を発展させてきたと。
 まあこれはアメリカ人に限らなく様々な国家、人種などに言えることだろうけれど、西部開拓時代というのはそういうインディアンに怯え彼らを迫害してきた歴史であり、多くの西部劇というのはそれを美化してきた映画でもある。
 『トゥルー・グリット』は古典西部劇『勇気ある追跡』と原作を同じくする作品であるが、そのような"怯えと迫害の時代"において、「真の勇気とは何か」を問う。


 本作で大スクリーンにて展開されるのは、開拓前のアメリカ西部の大自然の雄大な過酷さである。飢えた動物たちはいつでも食らいつこうと徘徊しているし、雪や雨は容赦なくその下にいるものを凍りつかせるし、いつ終わるのかすらわからない荒野はまるで無限地獄。『アンチクライスト』じゃあないが"悪魔の教会"のごとき残酷な大自然の中で人は本当の勇気を試される。


 主人公の少女マティは14歳ながら西部の街でたった一人アウトローな大人の男たちと張り合うことのできる、聡明で大人っぽく機転が利くキャラクターとして描かれる。
 しかしながらそれは「勇気」ではなく「無鉄砲」なだけであった。一歩街に出てアウトローどもが蠢く居住地に行くと彼女はこれっぽっちも役に立たない。『ブンミおじさんの森』のごとく人と獣が平等に死ぬ世界において、無垢なる少女にしつこいまでに人と獣の死体を見せつけその無力さを強調する。

 ジェフ・ブリッジス演じるルースターは人に心を開くことができない。二人の愛する女とたった一人の息子に裏切られ、人との深い関わりを避けて飲んだくれている。
 だから息子と同程度のマティが頼ってくれたことがうれしく、悪態をつきながらも彼女に協力する。
 それでも不器用な彼は、マティを傷つけ続ける。いつかマティに呆れられることがに怯えているのだ。

 マット・デイモン演じるラビーフは誇り高きテキサスレンジャーであり、そのプライドが他者との間に大きな壁を築いてしまっている。

 ルースターは実は腕のいいガンマンであり容赦なく撃鉄を引き人を殺し、またラビーフは腕前は見かけ倒しなところがあるものの、誰にも負けないテキサスレンジャーとしての自負がある。だがそれらは勇気ではなく怯えるがゆえの過剰なる防衛であった。
 そのため大いなる西部において彼らの孤独やプライドゆえの強さは役立たず、すぐに命とりとなる仲間割れを起こしてしまう。


 一方で彼らが追う悪役たちチェイニーやネッド(バリー・ペッパー)も怯えるがゆえ、過剰に攻撃し、悲鳴をあげ、裏切り、殺し合う。そして虫けらのように意外なまでにあっさりと死んでいく。マティがあんなに恨んでいたはずの宿命的な悪であったチェイニーですら。
 その点でマティたちも悪役たちも大きな違いはない。大いなる西部の大自然の前では主人公たちもゴミクズのように人しれず死んでいくだけのちっぽけな怯えた存在である。


 ではマティたちが彼ら悪役と違う点は何だろうか。
 マティは旅の中で飲んだくれのルースターを亡き父親の代わりのように信頼をした。
 ルースターはただマティを守るため、1対4の無謀な戦いに挑み、作戦の重要な役割を、本人が自負するほど射撃の腕前も無かったラビーフを信頼して託した。そしてマティの命を救うために、彼女の愛馬を殺すまで走らせるほど残酷にもなれた。
 ラビーフはプライドを捨てて、マティを救うべくいがみ合うばかりであったルースターと協力した。

 チェイニーたちはそれでもトカゲの尻尾切りを繰り返し、怯えながらみすぼらしく死んでいった。

 マティたちが「アウトローの地」であった西部のインディアン居住地で見つけ出した、悪役たちとは違うものとは「人を信じる勇気」であったと思う。そしてそれこそがこの映画が語る「真の勇気」ではないだろうか。


 アメリカがその歴史上で異分子を排除していったように、異分子は恐ろしい、なるべく排除したい。しかしこの映画には異分子だらけだ。
 いつ裏切るとも思えない怪しい飲んだくれと、すぐにカッとなるプライドだけが高い見ず知らずの男、一人じゃ何にもできやしないただの14歳の女の子(西部劇というジャンルに少女という存在はそれだけで異分子だ)―――この過酷な世界でそれぞれを信じ命を預けることがどれだけ怖いことだろうか。山小屋に潜んでいた小悪党の青年は信じていた仲間にあっけなく裏切られ寂しく死んでいった。人を信じて死んでいったものもたくさんいる。
 しかしその恐怖を乗り越え、それでも人を信じなければこの世界で生き残ることはできないのだ。


 以上、先述のようにアメリカの歴史は他者に怯え、攻撃してきた歴史であったという考え方がある。多くの西部劇とはその行為を美化してきた。そのような中で『トゥルー・グリット』は、怯えて攻撃するのではなく、人を信じることの勇気と困難さ、そして人を信じることで生じる強さを描いているのではないだろうかと考える。


 個人的にはコーエン兄弟は『シリアスマン』のような皮肉いっぱいの作品の方が好きなので、ちょっといい子ちゃんすぎる感じが寂しかったです。
 あとマット・デイモン(ラビーフ)はもっと深く描けた気がします。

 ジェフ・ブリッジスの演技はとてもイカしてました。普段寝ぼけてるくせに敵が迫ってくるときホルスターに手を添えるあの目の緊迫感の緩急が凄まじかった。『トロン:レガシー』の胡散臭いカッコよさも好きなのですが、こちらのどうしようもないオッサンだけど拳銃抜いたら達人って感じが好き。


 西部劇は大きなスクリーンで見るに限ります。特に本作で描かれる広大な西部の地はなるべく大きなスクリーンで見てこそそのテーマ性が伝わると思います。

 井上真央レベル。

 次回はディズニーの新作アニメ映画で、『プリンセスと魔法のキス』に続く新たなプリンセスストーリーです。『塔の上のラプンツェル』の感想。

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/03/27(日) 02:02:03|
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