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『エンジェル・ウォーズ』の主演は実は僕でしたよ。

sucker

 今回はザック・スナイダーの初オリジナル脚本作品『エンジェル・ウォーズ』の感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ。この手のマニア向けな映画はあんまりここじゃ受けないのか、客の入りは今ひとつ。客層は30代前後の男性一人客が多めって感じ。


概要:製作・監督・原案・脚本は『ドーン・オブ・ザ・デッド』『300』『ウォッチメン』『ガフールの伝説』のザック・スナイダー。音楽はタイラー・ベイツ、マリウス・デヴリーズ。撮影はラリー・フォン。
 愛する家族を奪われ、醜悪な継父の陰謀で精神病院へと送られてしまった少女、ベイビードール(エミリー・ブラウニング)。そこに待ち受けていたのは、世にもおぞましいロボトミー手術だった。彼女は同じ境遇にいるロケット(ジェナ・マローン)、ブロンディ(ヴァネッサ・ハジェンズ)、アンバー(ジェイミー・チャン)、スイートピー(アビー・コーニッシュ)の4人の少女たちに一緒に抵抗しようと呼びかける。しかし、希望を失った4人は、ベイビードールの脱出計画にためらいを見せる。そんな中、いよいよ絶体絶命の窮地に立ったベイビードールは、彼女の最大の武器にして最後の砦である空想の世界へと飛び込んでいくのだった。
("allcinema online"より抜粋)
 

 子供のころ、横断歩道の白線の上だけを歩かなくてはいけないゲーム(とも言えないような具にもつかない遊び)をしていたが、あれをやっている時、白線でない部分は、想像の中では世にも恐ろしい阿鼻叫喚の地獄絵図か、はたまた工業廃水によって巨大化してしまった人喰いワニだらけの沼であったりした。
 また今みたいに映像が立派ではないファミコン時代のゲームはキャラクターも樹も家もアクションも何もかもたんなる記号であり、その記号に自分の知識にあるものを脳内で当てはめることで「リアルな世界」を空想し楽しんでいたんだと思う。

 そういう「脳内補完」の作業は、とりわけ映画には、文学や音楽に比べ、あまり必要性がないと考えられがちだが、そんなことはないと思う。映画、文学、絵画、音楽、舞踏などなどジャンルに限らず、優れた作品ほど、鑑賞者が自身の体験に照らし合わせられる一般性を持ち、百人が見れば百通りの脳内補完ができると思う。


 本作の最後、登場人物に対して様々な体験をさせたり、生かしたり殺したり応援したりディスったり…もろもろの効果を登場人物に与えるのは---「あなただ」といったナレーションが入る。

 『トスカーナの贋作』は映画を見る行為を映像化した作品であったが、本作は"映画を見る観客を描いた映画"だと思う。


 本作は「話をふくらませた話」である。精神病院に入れられた少女ベイビードールがただ脱走をはかるというだけの物語。『プレデターズ』の感想で書いたが「詰め将棋」的な作品。そこに様々な妄想を付加し、映画史上最大級に大げさに表現、話を膨らませることで一大アクションスペクタクルへとされている。

 で、ここでザック・スナイダーという監督がどのようなニーズを寄せられる監督か考えてみたい。そのフィルモグラフィを見るに古典どころか聖典レベルのジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』のリメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』、映像化不可能と言われた名作アメコミの映画化『300』『ウォッチメン』、忘れてはならないファンの多い児童文学の映像化『ガフールの伝説』。要は"オタク受けがとてもいい監督"であり、スナイダー監督初オリジナル脚本である本作もまたメインターゲットにオタクが見据えられている。

 で、本作はただ精神病院を脱走する物語に、前回の『ガリバー旅行記』ではないが、80年代以降の海外のオタクが皆歩んで来たであろうサブカルチャー総記のような様々な要素をこれでもかと引用し、地味な話を目一杯膨らませている。

 例えば主人公のセーラー服と日本刀の組み合わせは『BLOOD THE LAST VAMPIRE』だし、ナチスみたいな軍服とガスマスクは『ケルベロス』みたいだったりと、あからさまな押井守リスペクトが感じられる。
 またゾンビ兵は90年代に我が国も巻き込んで一大ブームを巻き起こした『スポーン』のようだし、ドラゴンは数多のビデオゲームのアイコンだし、汽車の中にいるロボット兵は『スター・ウォーズ』新3部作を彷彿とさせる。
 押井守にせよ『スポーン』にせよ『スター・ウォーズ』にせよフォロワーを多く作り出したエポックメイキングな作品である。この映画のメインターゲットにされている者のほとんどが少なくともうち一つは経験した作品であろう。
 主人公たちの脱走劇をど派手にするのは、これらの我々がよく知っている要素のサンプリング&リミックスである。

 そして観客は勝手にこれらのスペクタクルシーンを"主人公の妄想"と考えてしまう。そんな説明どこにもないのに。

 これは結末にて明らかにされるのだが、このスペクタクルを妄想していたのはベイビードールでも生き残ったスイートピーでもない、それは他でもない「あなたたち」=観客なのではないかと問いかける。
 『トイ・ストーリー』シリーズでアンディがオモチャをガチャガチャさせているだけなのに彼の脳内では、どこかで見たようなシチュエーションにて、オモチャたちの大合戦が繰り広げられているシーンがあるが、そのような形で、地味な脱走劇をあり合わせのオタク知識で補完することで盛り上げているのは実は観客なのではないかと示唆してくる。

 BGMにしてもビートルズやクイーン、イギーポップ、ジェファーソン・エアプレイン、ユーリズミックスやビョークの有名曲をカバーやリミックスを頻繁に使用。まるで我々観客が知っている歌をBGMとして脳内で流しているかのようである。
 またエンドクレジットではブルー・ジョーンズ(オスカー・アイザック)とマダム・ゴルスキー(カーラ・グギーノ)がデュエットでロキシー・ミュージック"Love Is The Drug"のカバーを披露するが、それこそまるで『トイ・ストーリー』のアンディ、知っているキャラクターをその性格だけ残し別の活躍をさせる遊びをしているようである。


 人は創作物を読むときフルに想像力を活用する。小説などは想像力なくしては読むことができない。映画だって色々と自分の経験や知識を当てはめることで脳内補完し、それを楽しもうとする。
 逆に言えば受け手なくして創作物は存在し得ない。その点において、創作物の最大の主役はいつだって受け手である。
 以上、このような理由で『エンジェル・ウォーズ』はそのような映画鑑賞の際の観客の脳の働きを描いているのではないかと考えた。

 本作の正式タイトル"Sucker Punch"とは、「予想外のパンチ」の意味。予想外のパンチをくらったのは、ベイビードールたちでも悪役たちでもない、多分最後に「これはお前のことを描いた映画なんだよ」と指をさされた我々観客なのかもしれない。


 さすがザック・スナイダー。オタクのハートをがっちりキャッチのおバカ映画なのに、考えることもおおかったりします。

 大政絢レベル。

 次回はわれらがドニー・イェン師匠が出演しております香港版『エクスペンダブルズ』こと『孫文の義士団』の感想。

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/04/25(月) 16:45:47|
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