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『これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫』はむしろ赤塚不二夫のことを描いているのだ。

赤塚不二夫

 最近、更新が全く出来ずに申し訳ありません。
 そういえば、今回で映画感想200本目だそうです。よく凝りもせずにやっていますね。
 そんな200本目はよりにもよって『これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫』の感想です。

 観に行った映画館は新宿バルト9。朝イチの回しかやっていなく早起きして観に行きましたが、観客はぼくをいれて4人だけでした。なんか勝負に来たかのような中年男性4人。前売り券を500円で買ってみました。


概要:2011年の日本作品。長年漫画編集者をやっていた武居俊樹の書いた『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』を劇映画化。監督はこれがデビュー作となる佐藤英明。脚本は『踊る大捜査線』の君塚良一。
 1967年、大手出版社小学館の入社式。そこに現われたのは、『少年サンデー』の看板作家・赤塚不二夫(浅野忠信)。イヤミの扮装で厳かな雰囲気をぶち壊すや、彼の音頭で社員全員が“シェー”のポーズ。大好きな少女漫画を手掛けることを夢見て、期待を胸にこの日を迎えた新入社員の武田初美(堀北真希)は、あまりのことに呆然と立ちつくすばかり。しかし、そんな初美のことを、赤塚が見逃すわけもなかった。やがて赤塚の担当となった初美は、赤塚の強烈な手ほどきを受ける中で、意外にも秘められたバカの才能を開花させていく。
("allcinema online"より抜粋)


 このブログでもちょくちょく書いてはいたけれど、赤塚不二夫のファンである。尊敬すらしている。
 男、女、オカマ、オナベ、大人、子供、病人、障害者、権力者、犯罪者、貧乏、金持ち、ブス、美人、庶民、有名人、他人、身内、右翼、左翼、そして彼らにまつわるすべての事件、すべての事象をことごとく満遍なくおちょくり、すべての既成概念をしっちゃかめっちゃかに覆し、それを笑いに転化し「そのすべてはナンセンスである」と言い切ってしまう赤塚不二夫の漫画はある種の宗教や哲学であるとすら思う。


 そんな彼と彼の編集者"男ドブス武居"との関係を描いた『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』を物語映画化した本作は、なんとなく分かってはいたが、ひどく陳腐で杜撰でどうしようもない映画――なのだが、その杜撰さが一周回って赤塚不二夫のナンセンスさをどこかで再現してしまっているというマジカルな作品であった。今回はそこを解説。


(1)本作を構成するすべては"悪い意味で「ナンセンス」"である。

 a.まずギャグが"悪い意味でナンセンス"。
 一応コメディ映画の体裁をとっている本作であるが、2時間の間4人の観客の誰からも失笑以外クスリとも笑いがもれなかった。それもそのはず、本作はただの一言も面白いことを言っていないのだ。これは凄まじい。スベっているとか、わかりにくいとかそういうのではなく、ジョークが描かれていないのだ。どんなシリアスな作品だってちょっとしたユーモアはあるはずなのに、本当にこれっぽっちもないのだ。
 本作がそれでもコメディ風に見えるのは、登場人物たちが取って付けたように「シェー」や「タリラリラン」をやっているという点、またそれを含め登場人物が彼ら自身が面白いと思ってニヤニヤしながらやっていることがぐだぐだ続くからだ。
 たまに忘れている人が多いっぽいんだけど、物語において登場人物が笑えることは、受け手にとってはギャグでは一切ない。
 観客としてはとなりの座敷で知らない人たちがやたらと盛り上がっている飲み会の席のような感覚で漫然と登場人物たちがニヤニヤしながら「タリラリラン」と言ったり、シェーのポーズをとるのを眺めることとなる。


 b.続いて演出が"悪い意味でナンセンス"。
 自主制作映画なんかを作ったことがある人はわかるだろうけど、脚本に書いてある文字の上ではそこそこ会話っぽいものが成り立っても、実際に喋ってみると不自然だったり、アクションと台詞を同時に進行させると台詞が長すぎたり短すぎたりで、どうも間がもたなかったりする。
 で、まあそこら辺の打開策としては、いちばんに「そんなに台詞に頼らずできる限り俳優のアクションや、言いたい事を観客が連想してくれるような映像で見せる」というのが最重要で、さらには「もたない間を編集でカットする」なんて暴力的な編集テクニックもあったりする。
 しかしながら本作はそんな演出の基本がまったくできていないのだ。
 「そんなに台詞に頼らない」というのはさすがの『踊る大捜査線』の君塚良一先生、どだい無理な話で、重要な要素は全部台詞で説明している。悲しいなら「悲しいよ~」と言わせ、怒ったときは「もう怒った」と言わせる。変な話、もうそこらへんは諦めているっていうか敢えて突っ込むのもバカバカしいのですが、問題はそれ以上に深い。
 なんと「悲しいよ~」しかセリフがない。それしか言わせないんです。それ以上のセリフがない。おそらく「悲しいよ~」とか「もう怒った」以外の台詞が脚本上に書いてないんです。そのうえカメラワークがいい加減だからセリフなしの長回しには耐えられそうもない。
 だから俳優たちは一生懸命アドリブを加えて間をもたせようとするのだけれども、主人公は浅野忠信と堀北真希、すごくアドリブが苦手なタイプの俳優なわけで、これがまた目もあてられない。
 例えば浅野忠信が母親石田あゆみを誉めたたえるシーンは「満州はさあ、あの頃死体がたくさんあってさあ、母ちゃん頑張ってさあ、母ちゃんほんとすげえんだよ、母ちゃんありがとう、母ちゃんありがとね」みたいなまったく意味のない単語をぶつぶつ譫言のように喋らせていたり、その後石田あゆみが死んで浅野忠信がやたら顔色のいい彼女の死体にしがみつき泣き叫ぶ病院のシーンも同様の譫言。
 会話シーンも一生懸命間をもたせようと「え~本当ですか~?」「ホントホント」「へ~本当なんだ~」という無意味すぎるやりとりが繰り返される。

 また編集テクニックに関してもぶっとんでいて、俳優たちがセリフを喋るタイミングまでぼけーっと待っているのだ。セリフを発するタイミングになるとそれまで突っ立っていた俳優にフォーカスが合い急に怒ったり悲しんだりの演技をはじめる。
 さすがにそれはまずいと感じる俳優なりスタッフもきちんといるのだろうけれど、この制作陣がそんな彼らの要望にいい演出を与えてくれるはずもなく、例によって不自然なアドリブをさせられている。例えばひどいのだと、ラーメンの屋台のシーン。店主はすでに完成しているラーメンを目の前に置いて、客に給仕せず何故か背中におぶった赤ん坊をあやしている。で、カメラが彼に近づくと突然「はい、出来上がったよ~」なんて言ってラーメンを客に渡す。あのラーメンは3分放置しておけば出来上がるインスタントかなんかなのだろうか?


 c.で、物語もテーマも"悪い意味でナンセンス"。
 以上のような杜撰すぎる演出でロクな物語が紡がれるはずもなく、物語もテーマも不自然のオンパレード。

 例えば何故か"男ドブス"から美女に設定が変更になった堀北真希演じる編集者武田はマジメという設定なのだけど、入社式で無理やりシェーのポーズをとらせようとした赤塚不二夫をグーで殴り倒し、彼の担当になったならば「こんな下品な漫画、嫌いです」とか「私はこーんな漫画(少女漫画)が好きなんです」とか言う社会性皆無のバカ女っぷり。で、赤塚不二夫は彼女に無理やり酒を呑ませて「よし、これでこいつもバカになったのだ」なんて言う。さらにバカが足りないとわかるともっと呑ませて「タリラリラーン」と言わせて「お前も相当バカになったな」なんて言う。いや、その女登場時よりずーっとバカですから!

(※)二度目に泥酔するシーンで、武田が赤塚不二夫と手を握り飲み屋街の人々をスローモーションにて殴り倒していく実に不可思議なシーンがあるのですが、何故か中年男性しか殴らないんです。女性や老人は殴らない。なんかその赤塚不二夫が最も嫌悪しそうな差別意識に、この映画の底の浅さが伺えると思う。

 で、武田は赤塚不二夫に『天才バカボン』を超える作品を作ってもらおうとするのだけれど、一緒にオカマバーで呑んで、何が楽しいんだかまったくわからないダンスを踊っていたら(タイムリーにも『白鳥の湖』ですよ!!『ブラック・スワン』より禍々しいですよ!!)赤塚不二夫は勝手に、何の伏線もなく突然『もーれつア太郎』のアイデアを閃く。武田なーんにもしてないんです。
 また人気キャラクターニャロメを閃く時もひどい。「何か強烈なキャラクターが欲しいな」なんて言っていた武田がほんの数秒で漫画の片隅にいた猫の絵をみつけ、なんの脈絡もなく「このキャラクターよくないですか!?」と。したらば赤塚先生は「ああこの猫はね…」と、野良猫をとっつかまえて手足を縛って川に放り投げて遊んでいた虐待シーンを回想。したらば次のシーンでニャロメは急に人気キャラクターになっている。はあああ!?

 まあ気になった点を書きましたが、本当に最初から終わりまで全てがこんな調子。
 そんなわけで、テーマの「バカになること」ももちろん限りなく浅はか。実際の赤塚不二夫が言う「バカ」とは先述の通り、「世の中は様々な苦難や差別に満ち溢れてそれに苦しんでいる人も多いだろうけれど、バカになってみればそんな身にふりかかる問題など笑い話、世の中はハッピーに見えるよ」ってな具合のある種の哲学なのですが、本作における「バカ」とは「生真面目でいちゃ面白い漫画は作れないよ」程度の実に規模のショボいどうしようもないレベルでの「バカ」なんです。
 だから作中の赤塚不二夫は、現実の彼の作品の「バカ」とは違い、「バカ」をビジネスとしてしか見ていなく、不謹慎なギャグも出来ないし、道行く人を満遍なく殴ることもできないのだ。ちょっと強く厳しく言ってしまえば赤塚不二夫に対する愚弄だと思います。

 このように本作は「バカ」や「これでいいのだ」といった赤塚不二夫のアイデンティティを、杜撰でもやる気なくても金儲けしか考えていなくても大丈夫といった甘えのための免罪符程度にしかとらえていなく、細かい演出テクニックからテーマ性まで一事が万事、”悪い意味でのナンセンス”に満ち溢れているのではないかと言える。


(2)が、ここで一つの"奇跡"が起きているのだ。
 終盤、スランプに陥った赤塚不二夫は旅館に泊まり込んで『レッツラゴン』を執筆するのだが、そこで何が何だかよくわからないけど『レッツラゴン』のいちエピソードが実写で再現される展開になる。
 で、ここであまりに杜撰でチープな作劇が逆に功を成して、赤塚不二夫がたまにギャグでやる"あえてヘタクソに描かれた子供の落書きのようなむちゃくちゃな世界観"を再現してしまっているのだ。赤塚不二夫が制作に携わっている『下落合焼とりムービー』くらいのレベルで赤塚不二夫っぽいのだ。

 それまでは今まで当ブログで扱ったあの若手人気俳優の監督作品ぶっ飛びリメイク映画などに比べてもひどい映画だったのですが、あまりにひどすぎるとこういうラッキーパンチがあるんだなと、少しだけ本作が好きになりました。


 以上、『これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫』はあまりに杜撰すぎるチープな作りのために、逆に赤塚不二夫のヘタウマ漫画を再現してしまっているマジカルが起きていると感じた。


(3)良かった点は『誰かが私にキスをした』よりも堀北真希が可愛いかったこと。役の上でも、おそらく実際にも嫌々やらされている感がなんかむしろエロチック。


 最近、この手の映画を扱っていなかったので、刺激を頂きました。最近は面白い映画を劇場で見るのと同じくらい、酷い映画を劇場で見るのが好きです。ここまでひどいのはちょっと珍しいのでいち体験としてオススメしておきたいです。

 ジオング(モビルスーツ)レベル。

 次回は、やっと観に行きましたので前回予告した『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』の感想を書きます。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/30(月) 01:53:02|
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