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『奇跡』は特になんでもない映画だよ。

奇跡

 こんにちは。今回は是枝裕和の新作『奇跡』の感想です。ここで告白しておきますと、実は是枝裕和作品、いいという噂はしょっちゅう耳にしてまいかい観に行こうと思うのですが、面倒くさくて観に行ってませんでした。ごめんなさい。

 観に行った映画館は吉祥寺バウスシアター。月曜日男性1000円のメンズデーを利用いたしましたので、確かに男性多めといった感じ。どちらかというと高齢の方が多かったです。


概要:2011年の日本映画。監督・脚本・編集は是枝裕和。音楽・主題歌はくるり。
 小学6年生の航一(前田航基)と小学4年生の龍之介(前田旺志郎)は仲の良い兄弟。しかし両親が離婚してしまい、それぞれの親に引き取られた2人は鹿児島と福岡で離ればなれに暮らしていた。ある日、九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を目撃すれば願いが叶うという噂を耳にした航一。再び家族4人の絆を取り戻したいと願う彼は、龍之介と連絡を取り、一緒にすれ違う現場に行こうと約束する。こうして兄弟は、それぞれの友だちや周囲の大人たちを巻き込みながら、奇跡を起こすための無謀な計画を進めていくのだが…。
("allcinema online"より抜粋)


 最近ミノムシを見なくなった。
 別にミノムシの数が減ったというわけではなく、心理的にも物理的にもミノムシに視線がいかなくなったのだろう。つまり子供の頃に比べてミノムシが見えるような背の高さにはいないし、そもそも興味がなくなったのだ。

 子供の頃は全てが"ファンタジー"だった。現実を大人のような把握の仕方で見ていなかったというのが適切だろうか。
 世界は家と学校と最寄り駅周辺ぐらいが全てであったし、20分もないような下校時はスリルにあふれた大冒険であったし、近所の犬は同じ目線で語り合える親友だったし、クラスのカワイコちゃんや若くて美人の先生は世界一の美女だった。そしてコガネムシやカマキリが宝物だった。なんで大地震が今にも起きそうなこの国に平気で生活しているのか意味不明だったし、人はいずれ死ぬことに怯えないのも理解不能だったから日々恐怖に震えてもいた。

 だから日常生活も『パイレーツ・オブ・カリビアン』並のアドベンチャーとファンタジーにあふれていた。

 本作はその大仰な『奇跡』というタイトルに反して何も起こらない映画である。世界は日常を繰り返す。ただそれは"大人の目線"で見た場合。"子供の目線"で見た時、ここは素敵な奇跡だらけの世界に見える、そんな映画だと思った。



(1)本作の主人公である2人の兄弟は子供らしい現実のとらえかたをしている。

 兄・航一は小学六年生。少しづつだが"大人の視線"を身につけてきていて、「現実」を大人のように捉えるようになってきているがまだまだ子供。ドラマチックに見えないこの現実を認められない。
 冒頭登校前に部屋を雑巾がけする彼は一見しっかりしているいい子にも見えるが、彼はただ現実を認められないだけなのだ。親の都合で理不尽に鹿児島に連れてこられたことを認められないから、部屋に入り込んでくる火山灰(つまらない現実の象徴)が許せないのだ。
 それはしっかり者の母親のぞみ(大塚寧々)や祖父母(橋爪功と樹木希林)が側にいることも起因となっている。何でも面倒を見てくれる母と祖父母がいてくれるから、どうしても見えてくる「大人の現実」を否定し、その反動で「桜島が大噴火して町がなくなって欲しい」なんて突飛で幼稚な空想に浸る余裕がある。(大人の視点を持ち始めているからこそ逆に幼稚な願いを持つという点では、航一の同級生二人の「イチローみたいな野球選手になりたい」「犬を生き返したい」「学校の先生と結婚したい」という願いもこれに当てはまる)

 逆に弟・龍之介の方は、いい加減でだらしなくいい歳して夢を諦められない父親(オダギリジョー)についていったため、生活のために自らが動く必要に迫られている。もしかしたら寂しいのかもしれないが、幼いながらに精一杯現実と向き合っている。
 ただし兄と違い、まだ幼い彼にとってトマトを育てることもキャベツが食べられるようになったことも、大事件でありアドベンチャーとスリルとファンタジーたっぷりの世界だ。だから生活臭溢れる現実も楽しく、それを否定する必要がない。


(2)物語は"大人の視線"で描かれるシーン(主に前半)と、"子供の視線"で描かれるシーン(主に後半)に大ざっぱに分けることができる。

 "大人の視線"では、どのようにトマトが輝いているかも、どのように火山灰が積もっているかも、死んだ親友の犬がどのような表情をしているのかも、ポテトチップの袋の底に溜まったカスの美味しそうな感じも、好きな女の先生の自転車から盗んだベルがどのように愛おしく輝いているかも、出前でとった親子丼の蓋をパカッと開けた時のおいしそうな湯気の臭いもわからない。(※)
(※)かといって本作は別に子供の視線を讃えるような作品ではない。大人にならないとわからない楽しさもたくさん登場する。例えば酔っ払った時に買ったグエーと鳴くアヒルのオモチャだったり、ぼんやりとした味の和菓子だったり、子供のように嘘っぽくはないささやかで現実的な願いだったり。


 物語は後半、子供だらけの冒険(というにはスケールがあまりにしょぼいが、彼らにとっては大がかりな"冒険"だ)がはじまることで"子供の視線"のシーンになる。
 それまで大人ぶって"子供らしい視線"を否定し、それでいて大人になることも否定していた航一は、子供だらけの冒険のなかで精一杯頭を使い、不安になり、ワクワクし、キャッキャと騒ぎ、作中初めて"子供らしい視線"を肯定する。

 そこにおいて上記に並べた様々な日常的なことは、二つの新幹線がすれ違うだけという、実はなんでもないことと同様に「奇跡」と思える。現実を肯定すれば世界はすべて美しい奇跡なのだ。

 そういえば本作に登場する子供たちは常に走っている。まるで走らなければ見逃してしまうほどの「奇跡」が世界中に溢れているようだ。


 以上、『奇跡』"なんでもない日常"をただ描くだけの作品であるが、"子供の視線"を介すことでたまらなく美しい奇跡にあふれた作品になっていると思う。


 影響を受けやすい僕は映画館を出たあと井の頭公園で見たカタツムリに感動してしまった。ミノムシにも再会できるかもしれない。


(3)他にまえだまえだの演技も良かったし、くるりの日常ファンタジックな音楽も良かったし、作品のテーマ性に深く絡みついた様々なキャラクターの視線を意識したカメラワークも良かったです。

 是枝裕和、面倒くさがらずきちんと見ようと思いました。良作だとおもいます。

 玉井詩織レベル。

 次回はダークファンタジーなのでしょうか『赤ずきん』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/06/24(金) 03:09:37|
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