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『エッセンシャル・キリング』は"理解できない"よ。

エッセンシャル

 今のところあと書かなきゃならない感想が9本溜まっています。
 今回は久しぶりのヴィンセント・ギャロ主演『エッセンシャル・キリング』の感想です。

 観に行った映画館はシアター・イメージフォーラム。前回、前々回と同様にファーストデイに行ったので満席近く混んでいました。ここは前方が見えづらいです。
 客層は若い20~30代の一人客が多め。


概要:2010年のポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー映画。製作・監督・脚本は『早春』『アンナと過ごした4日間』のイエジー・スコリモフスキ。
 アフガニスタンで米兵を殺害したことで、米軍によって拘束された男ムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)。収容所で激しい拷問を受けた後、軍用機で別の場所へと移送される。やがて、護送車で移動中に事故が起こり、彼はその混乱に乗じて脱出に成功する。しかし、そこは右も左も分からない雪深い森の中。それでも、追っ手から逃れるべく、やみくもに逃げ続けるムハンマドだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 ケンカをおさめるためには"互いの言い分を聞く"という手段は有効であり、相互理解が仲直りに繋がる可能性もなくはない。

 本作の主人公ムハンマドはただひたすら逃亡する。人を殺し、女を襲い、恥も外聞もなく無言で死に物狂いで生きる。そこが一体どこなのかも、自分がどこに向かえばいいのかも分からぬまま黙々と逃亡する。
 最初米軍のトラックから転げ落ち偶然逃亡できたあと、寒さに耐えきれずもう一度捕まろうと降伏しようとした彼がどうしてそこまでパワフルに逃亡するようになったのか


(1)アメリカのアフガン侵攻は泥沼化しいつ終わるとも分からない。アフガニスタンの年間死傷者はタリバン政権に殺害された者より米軍に殺された者の方が多くなってしまっているとか。ベトナム以上のグズグズした状態が待ち構えているとも言われている。
 本作で描かれるムハンマドの極限の精神状態にその問題の原因が隠されているかもしれない。

 アメリカのアフガン侵攻に関してはそこら辺相互理解がちょっと難しい。僕が国際政治に関してまるで疎いうえに、知っていることもいまいち上手く説明できないので、あまり丁寧には書けないし間違っている箇所があるかもしれないけど、なんだかえらく複雑だ。基本は土地の奪い合いなんだろうけれど、両者様々な思惑のもと戦っている。

 アメリカ側は、ウサマ・ビン・ラディンを匿っているアフガニスタンに自由主義を広めるという大義名分のもと、石油利権やら麻薬栽培による利益を得るために侵攻しているというのが通説である。兵士がどこまで理解できているのかは定かではないが、まあ大義名分と本心は違うくらいは知っているのか、でも前回の『モンスターズ/地球外生命体』で書いたように、イラク国民の生活水準が向上したなんてデモを信じているくらいだから…。

 アフガニスタンの実質上の支配者タリバンの場合はどうだろうか。やはり本心は利権争い、お金絡みなのだろうが、大義名分としてはコーランに描かれている理想世界の建設というものがあり、"宗教がらみ"という点がアメリカの場合とは状況を大きく異にさせている。

 タリバンの兵士たちは宗教心によって戦っているのであり、彼らは自身が"神の兵"であるという自覚がある。それは物質的・経済的な欲望ではなく精神的な問題なのだ。
 だから手こずる。ちょっとした敗北が信じる神やアイデンティティに強く関係し、単純な経済的な理由ではないからアメリカのアフガン侵攻は泥沼化してしまう。アフガニスタンのタリバン兵は自分の存在を成り立たせている神のため決して負けられないのだ。


(2)本作の主人公ムハンマドはロケットランチャーをぶっ放し殺人を犯したあと、気を失い耳鳴りがおきる。偶然生き長らえ、自分の命が一度破裂したのを感じた彼はそこで「生き返る」という宗教的体験を得る。一度死んで生まれたばかりの彼は赤ん坊のように女性の母乳にくらいつく。
 そして何気ない耳鳴りが、"神の囁き"へと変わっていく。

 本作は"音"がとても重要な働きを持つ。最初なんでもないと思われていたハエの羽音や鳥の鳴き声が、後々カミサマのお告げだったのかと思われてくる。無言の劇がその音描写をより効果的にする。

 そして神の存在を次第に確信していくにつれ様々な偶然は"神の啓示"となる。偶然通りかかった猪が自動車事故を起こし、ムハンマドは偶然生還し、偶然敵兵を殺すことに成功する。これらは全て神の思し召しなのだ。その時、彼が犯す殺人はただ私利私欲のためのものではなく、生存のため神のために不可欠で本質的な殺人――"エッセンシャル・キリング"なのであった。


(3)『BIUTIFUL ビューティフル』の時も書いたけれども、宗教というのは人がどうしても避けることの出来ない「死」という運命への恐怖に対して生み出した精神安定剤のようなものであるという。精神安定剤の過剰な摂取はその意味合いが変わってしまうのと同様に宗教も使い方次第で人間の精神を暴走させてしまう"麻薬"となってしまう。

 ラストシーン、極限状態におかれたムハンマドの姿は突如消失する。彼の存在が全て幻だったような描写だが、宗教心によって暴走した彼が見ていた現実は我々とはもはや違うものだったのかも知れない。アメリカとタリバンがそれぞれ観ている現実が違うように。

 以上、『エッセンシャル・キリング』は、パワフルでエネルギッシュな無言の逃亡劇から、盲信的な宗教心が見せる我々とは異なった現実感を描写し、そういった戦争の狂気を無言のアクションの連続が肉感的に伝える作品だと感じた。


 エネルギッシュというには語弊があるほど次第に常軌を逸脱していくギャロが「本当に道を踏み違えてしまった『バッファロー'66』」みたいで良かったです。
 映画とはそもそもサイレント。動きのみで見せるのが基本だと思うので、無言の逃亡劇をひたすら見せることで、こうも様々な憶測を喚起させるのは素晴らしいなと思いました。

 杉本有美レベル。

 次回は、俺たちのM・ナイト・シャマランが帰ってきた!と思ったら製作でしたでお馴染み『デビル』の感想です。

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/08/20(土) 10:27:46|
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