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『アイスバーグ!』はほぼサイレントなのに台詞が重要だよ。

アイスバーグ2

 今回は『アイスバーグ!』の感想。
 観に行った映画館はTOHOシネマズシャンテ。ファーストデイに観に行ったのもあり、公開二日目だったのもあり、満席とは言わずまでも、そこそこ混んでいました。客層は女性が多め。隣のお姉さんが夜のお仕事の人っぽいんですが、美人で超ミニスカでエロくて困った。あと香水くさかった。


概要:ベルギー出身の道化師カップル、ドミニク・アベルとフィオナ・ゴードン監督・主演による長編映画デビュー作。監督・脚本はこの二人の他にブルーノ・ロミ。
 ブリュッセル近郊。フィオナ(フィオナ・ゴードン)は近所のバーガーショップで働く主婦。ある夜遅く、一人で勤務している途中うっかり冷凍室に閉じ込められてしまう。次の日店員に発見され九死に一生を得るものの、夫のジュリアン(ドミニク・アベル)も子供たちも家族の誰一人、自分の危険どころか不在にすら気付かず、フィオナは次第に冷たいもの、氷への憧れを抱きはじめる。ついにある日、バーガーショップに納品に来た冷凍車に乗り込んで、氷をめざす旅に出発する。アフリカ難民たちと一緒にフランス国境へ。検問をパスし、老人の集団におし流されてバスに乗り、たどり着くのはフランス西北端の海辺の町バルフルール。一方ようやく妻の不在にめざめたジュリアンは、がむしゃらに彼女を捜し始める。フィオナは、小さな舟<タイタニック号>の持ち主寡黙な船長ルネ(フォリップ・マルツ)に、アイスバーグ(氷山)につれていってくれるよう絵を書いて訴える。やがて、嫉妬と執念のジュリアンも、フィオナを追ってタイタニック号に乗り込み…。


 
 今回は、サクっと行きます。

 本作はバスター・キートンとかチャップリンとかジャック・タチの映画のように、基本台詞がない映画である。映画のあるべき姿として台詞がほとんどないコメディを目指している。例えば『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』のジョニー・トーなんかも言葉に頼らない映画を撮るけれど、ああいうレベルではなく、もっと実験的なまでに台詞数を極限まで削っている。
 で、「イヌクティトゥット語」なるイヌイット語とフランス語を掛け合わせたような言葉を、世界で唯一喋れるイヌイット女性の独白から始まる本作は、言葉のほとんどない映画だからこそ伝えられる「言葉の不安定さと尊厳」を描いていると思う。

 今作に登場するのはコミュニケーションが出来ない人々ばかりである。だれも自分ことを観てくれない寂しさ、孤独を知り、言葉でなんとかその寂しさをフォローされるも、言葉による関係に真実はないことを知った妻フィオナ、言葉をかければいいと思い、態度で気持ちを表すどころか、そんなフィオナの事を見ようとしない夫ジュリアン、かつてのトラウマから喋れず耳も聞こえなくなったコミュニケーションをそもそもとらないルネ船長。

 引いたカメラでスクリーンの大画面を目一杯に使って、この映画で語られる静かだが可笑しいユーモアは、総じて互いに干渉できず、干渉しようとも届かない孤独の表現である。
 例えば走って抱きしめようとすれば転び、殺してやろうと思えば凶器は相手に届かず、もちろん三者の愛情は一方通行、ただただ平行線を辿るばかり。
 そのようなコミュニケーション不全は孤独で悲しくて、登場人物たちはその孤独に必死に歯向かう。だがその表現はどうもとんちんかんであり、だからこそユーモアが生まれどこか優しい笑いがおこる。
 ここにおいて、言葉による表現はほとんど相手に届かず、互いのコミュニケーションを害すものでしかない。序盤の枕に顔を埋めての何を言っているか理解不能ですれ違うばかりの会話や、中盤にあるやたら回りくどい電話の伝言ゲームなど。だから、ジュリアンは妻を愛しているが故に「大嫌いだ!」と叫び、事態をさらに混乱させてしまう。

 で、本作は、言葉を「道具」として信頼すると、それはいたって無力になる危険性を帯びており、言葉の持つ本分は「道具」ではないと語っている。
 「道具」とは言葉を、血が通ったナマモノとして扱わないこと。または定型文として扱ってしまうこと。言葉をナマモノとして扱ったとき、言い換えればそのとき、その場にいた、その使用者にしか表現できない言葉を扱ったとき、その表現はもっとガツンと心に届くものとなるはずである。
 言葉を喋れないルネ船長は、「身体」で気持ちを表現することを余儀なくされている。言葉に不信感を抱いたフィオナは、だから言葉に頼らない、その人オリジナルの表現で持って感情を示す彼に惹かれていく。
 そしてルネ船長はイヌイット女性に触れ合う事で心と身体とに密着した「生きた言葉」に触れる。イヌイット女性は「イヌクティトゥット語」という自分だけしか表現し得ない「生きた言葉」を大切にする女性である。その影響によってルネ船長は言葉を取り戻そうとする。
 一方で最後まで、血が通っていない言葉による表現に依存し、すれ違い続けたフィオナとジュリアンの夫婦は、最後まで報われることはない。

 以上のように、本作は非常にセンスのあるユーモアと映像で、言葉で感情を表現することの困難さと、それが出来る言葉の持つ力強さをうまく描いていてとても楽しめました。

 他に良かった点として、原色をふんだんに使いビジュアルスケープをとことん意識した映像がとてもキュート。

 俳優たちの首から上をほとんど動かさずぴょんこらぴょんこら飛び回る様がシュールで面白い。本当によく動きまわる。バルフルールの老人たちも大きなアクションはとらないものの妙に印象的でユーモラス。あの人たち俳優じゃなくてボランティアで出演したそこらへんの人らしいです。

 軽い気持ちで見れて笑えてオシャレで、そのテーマ性はとても深遠。21世紀のジャック・タチの二つ名は伊達じゃない!オススメでございますよ。

 倉科カナレベル

 てなわけで、次回は引き続きドミニク・アベルとフィオナ・ゴードン監督・主演による『ルンバ!』の感想を書きますよ。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/08/12(木) 17:19:27|
  2. 映画ア行
  3. | トラックバック:2
  4. | コメント:2
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コメント

氷山

こんちは。

おお、そんな話だったのか。

なんで氷に取り付かれるのかはよく分からなかったですね。
  1. 2011/01/17(月) 22:34:10 |
  2. URL |
  3. ふじき78 #rOBHfPzg
  4. [ 編集 ]

>ふじき78さま
 確かに、なんで氷に夢中になるのか忘れてしまった。
 あれ?
 もう一度見たいのですが、DVD化はされるのだろうか。
  1. 2011/01/18(火) 23:45:33 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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