かろうじてインターネット

「少年ジャンプ」と水木しげると映画とおもちゃと特撮を愛します。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

『シングルマン』は内面を着飾るファッションだよ。

シングルマン

 今回は『シングルマン』の感想です。
 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ。公開間もなく話題作という事もあり、夜遅くの回にしてはなかなか盛況でした。40前後の人が多めかな。
 

概要;グッチ、イブサンローランなどでの活躍で知られるファッション・デザイナー トム・フォードが、クリストファー・イシャーウッドの原作を基に、初監督をした作品。
 1962年、ロサンゼルス。大学教授のジョージ(コリン・ファース)は、16年間共に暮らしたパートナー、ジム(マシュー・グード)を交通事故でなくして以来、8ヶ月に渡り悲嘆に暮れていた。そして今日、その悲しみを断ち切り、人生に終止符を打とうと決意する。身の回りを整理し、最期を迎える準備を進めていくジョージだったが、大学ではめずらしく自らの信条を熱く語り、ウンザリしていた隣家の少女との会話に喜びを感じ、かつての恋人で今は親友の女性チャーリー(ジュリアン・ムーア)と思い出を語らい合うなど、その日は些細な出来事がいつもと少し違って見えるのだった。そして一日の終わりを迎えようとしていたジョージだったが、そんな彼の前に教え子のケニー(ニコラス・ホルト)が現われ…。
("allcinema online"より抜粋)


 ファッションにはてんで詳しくありませんが、そんな僕でも名前を知っているくらいのトム・フォード初監督作品だそうで、さすがオシャレなセンスはある映画でした。
 例えば中盤のチャーリー(ジュリアン・ムーア)との貴族的で虚無的な酒盛りのシーンや、山の上で無邪気に語り合うジョージと主人公の強烈なコントラストのモノクロの回想シーン、全編を覆うビビッドな色彩などとてもオシャレ。音楽のセンスもカッコイイ。そういう映像って、いくら「コマーシャル的だ」とか「正攻法ではない」と言われようとも、大好きなのですが、そういう映像に終始徹するだけで、そのオシャレさに意味はなく中身は空っぽの表層的オシャレ映画は、そういった映像も安っぽくなってしまいあまり好きではありません。音楽のミュージッククリップによくあるけど。オシャレという手段が目的化してしまっているような。

 で、本作はそういった、オシャレ映画が陥りがちな、「表層的な何か」を否定している。
 以前取り扱った『渇き』『彼女が消えた浜辺』は、そういう社会の薄っぺらな表層の部分が社会活動を潤滑に動かすその重要性を語ってもいたけれど、こちらはあまり肯定してはいません。
 そしてそういうテーマ性が実にファッションデザイナーらしい孤独と葛藤により描かれているのではないかと考える。そこら辺を考えていきたいと思います。
 
 主人公ジョージは"「現在」とは老いへの恐怖であり、「過去」とはもう自分のものではないもの、「未来」とは更なる老いへの恐怖である"という感覚にとらわれており、「今」に生きることができない、心ここにあらずの状態である。皆が戦々恐々としているキューバ問題にこれっぽっちも興味を抱かない、大学教授のくせに。
 オシャレな彼は遺書に「(遺体のネクタイは)ウィンザーノットで」と書くほど自分の「表面」を気にしているため「老い」とは最大の恐怖なのである。つまり彼にとっての「今」は「上っ面」なのである。
 だから彼は表層を取り繕う。朝から一生懸命自身の表層をオシャレに磨きあげる。そうすることで逆により気持ちと乖離していく自分の表層に、更に心ここにあらずの状態へとなっていく。奔放で気持ちに素直な犬をうらやましがり、異常に可愛がる。

 「表層」だけの彼にとって、慰めは16年間愛し合った恋人ジムの存在であり彼こそがジョージの存在を肯定しジョージたらしめるただ一人の理解者であった。彼といる時は表層を取り繕わず「充足した中身(人間関係?)」を体験する事が出来る。ジョージはこれを「真の関係」と呼び、この関係により表層だけでなく精神も充足され、はじめて「今」を感じて生きることができるのである。
 しかしそんなジムが不慮の死をとげ、ジョージは絶望的な孤独に襲われ、彼は「表層」だけの生活にうんざりして、自殺を意識しはじめる。
 教え子ケニーとの対話までは…。

 このように今作は、「表層」だけのファッションを避難し、「充足した中身」かあるいは「死」かを行ったり来たりする物語である。トム・フォードというファッションデザイナーについてはまるで詳しくないけれど、やはりこれはその半生、「身体を覆う布っきれ」という「表層」を取り扱うファッション業界に身を置いてきた彼だからこそ描けた、孤独と葛藤のドラマなのではないかと思う。


 弱冠難解な会話を羅列し思考のひけらかしを感じてしまうのは語りたがりゆえか。もう少し言葉ではなく映像で語って欲しかった。言葉で映画を語ってしまうのはこの作品が否定する「表層だけのもの」にも準ずるものがあるんじゃないかな? ちょっと皮肉。

 みすかされたことを言われると悔しい反面ちょっと嬉しかったりする人にオススメ。
 広瀬アリスレベル。2代目電波人間タックル。

 次回はやっと公開が始まって感想が描けます『エクスペンダブルズ』の感想です。
スポンサーサイト

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/10/17(日) 13:05:49|
  2. 映画サ行
  3. | トラックバック:3
  4. | コメント:0
<<『エクスペンダブルズ』は男同士のコミュニケーションマニュアルだよ。 | ホーム | 『悪人』は悪い映画だよ。>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://karoujite.blog104.fc2.com/tb.php/150-4398b59a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

シングルマン

公式サイト。原題:A Single Man。クリストファー・イシャーウッド原作、トム・フォード監督、コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、マシュー・グード、ジョン・コルタハレナ。核戦争で人類滅亡も現実問題として考えられていたキューバ危機直後の1962?...
  1. 2010/10/17(日) 18:14:06 |
  2. 佐藤秀の徒然幻視録

映画レビュー「シングルマン」

公式サイト◆プチレビュー◆死を覚悟して初めて知る生の輝き。デザイナーのトム・フォードの手腕は初監督とは思えないほど見事だ。 【75点】 「愛する者を失った人生に意味などあるのか」。1962年11月30日。8ヶ月前に16年間共に暮らしたパートナーのジムを事故で失っ?...
  1. 2010/10/17(日) 23:46:54 |
  2. 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP

『シングルマン』

美しく、ミステリアス。 繊細なディテールで構築された、 門外不出の愛と死への、設計図がここにある。 『シングルマン』 A Single Man 2009年/アメリカ/101min 監督・脚本:トム・フォード 出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア 無駄がない...
  1. 2011/03/09(水) 16:05:06 |
  2. シネマな時間に考察を。

FC2カウンター

プロフィール

かろうじてアメリゴ・ベスプッチ

Author:かろうじてアメリゴ・ベスプッチ
 映画のこととか長々と書くブログです。
 たまに映画以外のことも書くよ。
 コメントくれたら嬉しいです。
 更新あんまりできないけれど。
 あと現代人なのでtwitterを始めました。
 chikiuso2800って名前。
 ご意見、ご感想、取り上げてほしい映画のリクエストなどございましたら、コメント欄か上記twitterIDにてお知らせください。

 なお映画の感想コーナーの最後で、実に分かりやすく画期的な映画の評価方法として、その映画のレベルに見合ったアイドルの名前を書いております。

Twitter on FC2

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

映画ア行 (36)
映画カ行 (51)
映画サ行 (35)
映画タ行 (28)
映画ナ行 (8)
映画ハ行 (40)
映画マ行 (17)
映画ヤ行 (4)
映画ラ行 (14)
映画ワ行 (1)
2010年度映画ランキング (3)
少年ジャンプ (47)
特集 (3)
謝罪 (2)
未分類 (0)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。