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『ヘヴンズストーリー』は昔からある宗教の映画だよ。

ヘブンズストーリー

 今回は長いので話題なのか、内容で話題なのかの作品『ヘヴンズストーリー』の感想でございます。

 観に行った映画館はユーロスペース。上映回数が1日2回しかないので、わりと混んでいました。前目が好きなので少し前で観たら首が疲れた。5時間はツライ…。客層はほぼ一人客。この映画館は一人客が多いですね。売店に売っていたカスタード入りのあんぱんが美味しかったです。


概要:監督は『感染列島』『フライングラビッツ』『MOON CHILD』などの瀬々敬久監督。
 両親と姉を殺され、祖父に引き取られることになった8歳の少女、サト(本多叶奈/成長後は寉岡萌希)。同じ頃、巷では、未成年であったミツオ(忍成修吾)によって行なわれた理由なき殺人事件が注目を集めていた。そして、テレビ画面には、青年に妻子を殺されたトモキ(長谷川朝晴)が「たとえ法律が許しても、自分がこの手で犯人を殺す」と言い放つ姿が。偶然それを目にしたサトにとって、以来トモキが英雄となり、彼の復讐に自分の想いを託すことが生きる拠り所となっていくのだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 今回は先に不満点を語りますね。
 「泣く」と「叫ぶ」と「泣き叫ぶ」としか感情表現の仕方を知らないのではないかと感じるほどナルシスティックな映画で、10000回くらいある役者の顔のどアップを削ればもう少し短く出来たのではないかと感じました。
 語っている自分に酔っているナルシスティックな部分は、オーバーアクト気味のウェットな演出や、顔のアップの長回し以外にも随所に見られ、例えば前半に登場するロック少女タエ(菜葉菜)のひとりよがりで「ワタシカワイそう…」な意識はイタかったし、終盤サトがバスに同乗した小学生女子に「ねえ神様っていると思う?」と尋ねるシーンとか(まあこのシーンは半分ファンタジーなのでセンスはともかくお咎め無しでもいいけど…)、監督が作詞したらしいエンディングに流れるテーマソングのそのまんまの歌詞とか。あと「それカッコイイかもしれないけど危ないから!」でおなじみの拳銃の片手撃ちとか。
 あと「復讐屋」(カイジマ/村上淳)って設定が物語にリアリティを無くしていたかなって。いくらプロの殺し屋だろうと白昼堂々動物園で飼育員らしき男を拳銃で撃つか? そしてプロの警察がトイレの貯水タンクに拳銃隠すか?

 などなど、この4時間40分という時間や無理のあるドラマは監督が語るに酔ってしまって、周囲が見えなくなってしまった結果なのではないかという疑惑を否めないのであるが(それで感情移入がしにくいキャラクターも多い)、まあそれだけ語ればなかなか骨があるのも確か。他にも色々ありますが、とりあえず不満点おしまい。


 で、ここからが本論。
 本作の冒頭と後半の冒頭、そして最後に白い狐のお面を被った人形劇があるが、ご存知お稲荷さまであり、稲作文化であった我が国のお米を害獣から守り続けたカミサマである(この人形劇のシーンはとてもいいです。岡本芳一さんという方が主催していた「百鬼どんどろ」という興行団体だそうな。岡本芳一さんは既にお亡くなりになったそうですが)。
 で、この映画は人が古来より想像していた「カミサマ」なるものを映像に描いているのだと思う。そこら辺を解説してみたい。

 「カミサマ」と言ってもキリスト教的な神ではなく、本作冒頭に登場する狐を信仰するような神道やヒンドゥー教や、はたまたギリシャ神話に出てくるような善悪・森羅万象を合わせ持ち畏れられるカミサマ。キリスト教のカミサマなどはわりと新しいカミサマだから近代的な政治や倫理感を反映させているが、古代のカミサマは人間が決して逆らえないもっと理不尽な力(天災や運など)の理由づけも担っていた。これは人間が本能的に畏れるパワーである。
 本作では残念ながら「天災」や「事故」に関しては触れてはいないが、人の命を簡単に奪ったり与えたりする「運命(運)」を執拗に描くことで、一つの町が巨大で逆らえない「悪意」に覆われていく様子を描く。その「悪意」こそ、カミサマの存在・意識を感じさせる、どうしようもないパワーであり、誰彼構わず情け容赦なく襲いかかるそれによって登場人物の運命は翻弄されてしまう。殺人事件の被害者家族も、「人に近いもの(人形)を作る」といった点で神と似た存在であったはずの響子(山崎ハコ)ですらも非情な運命へとまき込まれて行く。

 そういった、見境ない「カミサマの意識」の旋風が、先日取り扱った『悪人』同様に、物語が進むに連れ、登場人物の持つ「善」や「悪」といったキャラクター性などなくしてしまう。それは「たまたま殺人者になったものとたまたま殺人者にならなかったもの」といった具合で、殺人鬼も被害者の家族も10歳にも満たない子供も皆同様に善であり悪である。何故ならば社会的な規範のなかで人間が選択できる範囲の善や悪など限られており、今作が匂わせる、目には見えない「巨大で逆らえない意識」というカミサマの御技のような力の前では善も悪も同義のようなものであるからだ。
 だから殺人鬼と被害者の家族は終盤同列の存在とされているし、殺人鬼が命の恩人となったりする。(「殺人の罪を償うために、殺人を繰り返す」といった復讐屋カイジマの矛盾は、それが作品内で効果的に描かれていたか否かは別として、本作の混沌を象徴するようなキャラクターであったのだろう)

 そして、物語は、多くのカミサマが破壊の後、再生/創造を施すように、壮大なカタストロフ(破局)のあと、壮大な救済で映画全体を覆うことで、観客はこの映画の中に古来より、どこか本能的に信奉していた「カミサマ」の存在を喚起させられる。

 このように、前半で徹底的に殺人事件の被害者の家族たちの苦しみを描いておいて、後半で彼らを殺人鬼と同列に並べることで観客に「カミサマ」を感じさせ、さらには「神の御技」であるところの「破壊と創造」を描く演出はとても面白いと思いました。先に「語るに酔って長くなってしまっている」と書いたけれども、「善悪のバランスの崩壊と同義化」といった演出、その結果「カミサマ」を喚起させるためには、ある程度の長尺は必要だったのかなと思います。


 以上、本作は「殺人」の加害者と被害者の家族たちがそれぞれ運命に翻弄されることで大差のない存在となっていきカタストロフ(破局)を迎え、新たな創造/再生が行なわれるという物語を綴って行くことで、人が古来から信奉していたような原始的で基本的な「カミサマ」を感じさせようとしたのではないかと考える。


 「神の視点」に関しては次回取り扱う予定の『ブロンド少女は過激に美しく』の方が、自覚的にかそうでないかはよくわかりませんが、シンプルに出ていたかな。
 見応えはある作品であり、こんなん映画館でしか味わえない体験(ビデオじゃダレてしまう)なので、見るか観ないかで言ったらもちろん見るのをおススメします。

 上野樹里レベル

 そんなわけで次回も似たようなテーマになりますが、『ブロンド少女は過激に美しく』の感想を書きます。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/10/21(木) 14:28:34|
  2. 映画ハ行
  3. | トラックバック:4
  4. | コメント:2
<<『ブロンド少女は過激に美しく』は神の視点で描くエロスだよ。 | ホーム | 「週刊少年ジャンプ」2010年46号の一言感想 その(2)>>

コメント

こんちは

KLYさんのトラックバックから流れてきました。

長いけどビックリするような展開はなかったですね。
ただ、だれないと言うだけでよく出来てると思います
(4時間越えてダレたら堪らない)。
神様の手の上で踊らされる人間を書くなら、
最後の希望を象徴する出産を流産させてしまうとかいう
外道な考えも私の頭の中に浮かんだんですけど、
そこまでやっちゃ辛すぎてイヤかな。
  1. 2010/11/04(木) 01:12:16 |
  2. URL |
  3. ふじき78 #rOBHfPzg
  4. [ 編集 ]

>ふじき78さん
 はじめまして。コメントありがとうございます。
 ですよね、どんどん、続きをみたくなる作りは、大作商業映画をたくさん撮って来た瀬々敬久監督、さすがといったところですね。
 確かに、もっと登場人物を突き放したような作風でも良かった気がします。『ガープの世界』みたいな。

 また遊びにきてください。
  1. 2010/11/05(金) 11:35:21 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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ヘヴンズ ストーリー

10月10日(日)@銀座シネパトス。 夫婦50割ふたりで3,600円で鑑賞。 スクリーン1座席数177の観客は20人とちょっと。 2週目の日曜日で稼動15%では厳しい興行なのでは?
  1. 2010/10/21(木) 16:25:46 |
  2. あーうぃ だにぇっと

ヘヴンズ ストーリー(レビュー前編)

『感染列島』や『サンクチュアリ』の瀬々敬久監督が送る全9章、4時間38分にわたる超長編作品。それぞれの身に降りかかる殺人事件をキーに多くの人間が絡まりあいながらも生きていく様子を丁寧に描いた意欲作だ。『掌の小説』の寉岡萌希、『笑う警官』の忍成修吾、『か...
  1. 2010/10/21(木) 19:06:46 |
  2. LOVE Cinemas 調布

ヘヴンズ ストーリー(レビュー後編)

『感染列島』や『サンクチュアリ』の瀬々敬久監督が送る全9章、4時間38分にわたる超長編作品。それぞれの身に降りかかる殺人事件をキーに多くの人間が絡まりあいながらも生きていく様子を丁寧に描いた意欲作だ。『掌の小説』の寉岡萌希、『笑う警官』の忍成修吾、『か...
  1. 2010/10/21(木) 19:07:02 |
  2. LOVE Cinemas 調布

『ヘヴンズストーリー』をユーロスペース2で観て、まず長さについて語るのは正等と思う男ふじき☆☆☆

五つ星評価で【☆☆☆普通。こういう話題は別にこの映画で初めて語られた訳ではない】       何と言っても4時間38分。 まあ、まず長さが話題だよね。 なんで長さが話題になるのかってと、 思った以上に内容が普通だからだね。 でも4時間を越える映画で だれ?...
  1. 2010/11/05(金) 00:48:47 |
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