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『ブロンド少女は過激に美しく』は神の視点で描くエロスだよ。

ブロンド少女

 今回は現在数え年で102歳マノエル・デ・オリヴェイラ監督の『ブロンド少女は過激に美しく』の感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズシャンテ。シャンテで上映されている作品は半分くらい観に行ってますね。信頼のブランド。
 14日で安い日だったので、そこそこいらっしゃいましたが、まぁ平日だったので満席ほどではない感じ。若い人もちらほらいましたが、ほとんどが中高年。ネット予約したものの、時間を思い切り間違えてしまい、劇場の人に迷惑をかけてしまいました。丁寧にご対応してくれてありがとうございます。


概要:監督・脚本は『夜顔』や『コロンブス 永遠の海』の現役最高齢マノエル・デ・オリヴェイラ。主演のリカルド・トレパは彼の孫。原作は19世紀のポルトガル作家エッサ・デ・ケイロースの短編『ある金髪娘の奇行』。
 リスボンを出発した列車の中、一人の男が隣に座る見知らぬ婦人にある打ち明け話を始める。かつて叔父の店で会計士として働いていたマカリオ(リカルド・トレパ)は、仕事場の向かいの窓にたたずむ若いブロンドの娘に恋をする。やがて、その娘ルイザ( カタリナ・ヴァレンシュタイン)とめでたく交際を始めたマカリオだったが、叔父に猛反対され、店を追い出されてしまう。やむなく愛するルイザをリスボンに残し、遠くの島国へ出稼ぎに行くマカリオだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 本作が気になった理由として、10代や20代が撮った映画はきちんと10代や20代らしさが出ているが、100歳の監督が撮った作品とはどのようなものだろうかという興味。
 年齢による映像感覚の違いっていうと、市川崑監督が60歳の時に撮った『犬神家の一族』(76)と、それと同じ脚本、構図で91歳の時に撮った『犬神家の一族』(06)とを見比べるとよくわかるが、テンポや視点がまるで異なるのだ。
 76年版は金田一耕助(石坂浩二)と野々宮珠世(島田陽子)の関係に男女の恋愛的な雰囲気が感じとれたが、06年の金田一の視点は言わば「神」のような視点であり、作品全体を俯瞰して眺めている。
 また市川崑のアイコン的表現であった目にも留まらぬスピーディーな編集も、作品全体を広く包み込むような瞳で語るかのような、どこかゆったりした「能」にも似た強弱の少ない平坦なテンポとなっていたが、それはやはり90代のテンポ、さしずめ「神」のようなテンポなのであろう。

 で、『ブロンド少女は過激に美しく』であるが、まあゆっくりした映画なのである。
 セリフとセリフの「間」には、妙な時間がある。失礼ながら眠気と格闘してしまうほどのテンポである。登場人物が台詞を喋った後、次のショットに行くまでに2~3秒無言の時間があり、ようやくショットが変わるという、「んん?今の間なんだったの?」と思うことしばしば。例えば映画が始まって電車内で車掌さんが乗客の切符を確認しているんだけど、ただゆっくり切符を確認するためのカットが1分ほどある。こんなに長いショットだとするとこの車掌さんは重要人物なのかなと思うのが普通だが、これ以降出てこない。そんな不思議なテンポがずっと続く。

 視点もやはり「神の視点」。登場人物の描写や行動も、そのディテールはあまり深く描き込まれない。なぜルイザはマカリオと結婚することをあっさり承諾したのか。何故あれほど愛したルイザをマカリオはいとも簡単に突き放したのか。なぜ伯父はマカリオの結婚をあんなに反対したのか。凡百の監督ならそこらへんがストーリーテリングの腕の見せどころと、気合いを入れて作劇するところだけど、さすが100歳、そんな些細な機微など気にしないで、広い目でただ淡々と物語を紡ぐ。(ただ、まぁこれは原作小説が1873年のもので、現代を舞台に置き換えているとはいえ、ほぼ原作のまま映像化しているそうなので、19世紀と現代とでは、登場人物の描写方法がまるで別物であるという理由もあるのだけれど、それにしても語り口が淡々としすぎている)

 このように、ゆったりとしたリズムにて、細かな人間性などを敢えてか描かず、淡々とドラマティックな起伏を感じさせず全てを受け入れるような体勢でドラマを紡いでいくところに「神の視点」を感じさせる。
 だが、そんな中、ラストシーン、憔悴したルイザがベットの上に座るショットで何故だか無防備にガバッと脚を開いているのだが(このページの上に添付したポスター参照)、それは少女の無防備さであり無邪気なエロスであろう。そこに100歳になりながらラブストーリーを撮れるほどの活力をオリヴェイラ監督に与えているスケベ根性を垣間見て、恐れ入ってしまった。

 ではこの「神の視点」とは如何にして成り立っているのか?
 この物語は主人公マカリオがうら若きルイザに恋し、やがて少女の持つ生態の不可解さに困り果て、最終的にその恋を投げ捨てるまでを淡々と描くのだが、少女の持つ、美しくきらびやかで、素行が悪くて、エロティックで、子供っぽくて、無邪気で過激で、そういった永遠なる理解不能さをも映画という一つのフレーム内に収めてそれをそのまま享受しているような、一種の人間に対する「達観」とも言えるものが感じられる。そしてその「達観」こそが、物語を平然と眺め、起伏なく淡々と語ることができる、100歳のオリヴェイラ監督ならではの「神の視点」を成り立たせているのではないかと思われる。


 以上、本作は100歳ならではの「神」を思わせるようなおおらかな視点によって描かれる映画ではないかと思いました。
 決して名作にはならないであろう作品ですが、大変お勉強になりました。
 不満点を書いたら不粋になりそうで書けません。
 中谷美紀レベル。

 次回はイ・チャンドンのプロデュース作品『冬の小鳥』について書きます。小難しい映画が続きますね。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/10/22(金) 02:06:52|
  2. 映画ハ行
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:0
<<『冬の小鳥』は子供のPG12映画だよ。 | ホーム | 『ヘヴンズストーリー』は昔からある宗教の映画だよ。>>

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ブロンド少女は過激に美しく

打ち明け話という古風なスタイルの風刺劇のような物語だが、現役最高齢の巨匠オリヴェイラの手にかかると、格調高い掌編のような空気を帯びる。これが風格というものだろうか。リスボンから南へ向かう列車の中、会計士のマカリオは、隣に座った見知らぬ夫人に自分の体験談...
  1. 2010/10/22(金) 07:13:39 |
  2. 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP

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