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『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』はエロティックな雨が降るよ。

ヌードの夜

 今回は『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』の感想でございます。
 観に行った映画館はシネマート新宿。あそこの小さい方の劇場。病院の待合室みたいですよね、あそこ。月曜日メンズデーということもあり、客層は男だらけ。しかも見事に全員一人客。き…気持ち悪い!
 当ブログの元ネタラジオ番組である『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』のその週の課題映画がこの映画だった事も混んでいた理由でしょうか?


概要:93年の『ヌードの夜』の続編的な映画。監督・脚本は『ヌードの夜』『天使のはらわた』『夜がまた来る』『GONIN』などの石井隆。
 とある街でバーを営む2人の姉妹 桃(井上晴美)とれん(佐藤寛子)、そしてその母あゆむ(大竹しのぶ)。ある日、妹のれんが、“何でも代行屋”の紅次郎(竹中直人)を訪ね、父の散骨時に落としてしまった形見のロレックスを捜してほしいと依頼する。少々疑問を感じながらも、天使のようなれんにほだされ、とうてい見つかるとは思えない依頼を引き受ける次郎。やがて、偶然にもロレックスを発見するが、そこには肉塊らしきものが。不審に思い、知り合いの女刑事安斎ちひろ(東風万智子)に調査を依頼すると、ほどなく返ってきた鼠の肉との回答に安堵する。しかし実際には人肉で、ちひろは次郎を泳がせ監視することに。そうとは知らない次郎は、ロレックス発見に気をよくしたれんから、新たな依頼を受けるのだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 本作の副題『愛は惜しみなく奪う』とは、「愛」が「誰」の「なに」を惜しみなく「奪う」のか。そこを考えてみたい。

 本作には「雨」の描写がやたらと多い。ほぼ全編降っていると言っていいだろう。屋内のシーンでもシャワーシーンがあったり、終盤の天井から落ちてくる無数の銀色の粒子があり、これらも「雨」を象徴していると言っていいだろう。また冒頭の肉片をまき散らすシーンも「雨」のようである。
 「雨」は何を表すのか? 佐藤寛子演じるれんは「雨で服が濡れて冷たいから脱ぐ」といい全裸になる。また父親の山神(宍戸錠)に犯されかけた時、その身の汚れを落とすように服を脱ぎシャワーを浴びる。
 れんは、時に清純であり時にエロティックであり時に悪魔のようであり時に天使のようであり、『ヌードの夜』というタイトルとは裏腹に、脱いでも脱いでもその本性がどこにあるのかわからないキャラクターであるが、彼女は雨にうたれているとき、身体も心も「ヌード」になる。
 例えば『シングルマン』も、主人公のジョージは服を脱ぎさっていくことで自分の真の心が表れていったが、彼女も同様。シンプルだった『シングルマン』と違い、もうちょい複雑な脱ぎにくい表層を持っているが。

 竹中直人演じる紅次郎は観客視点のキャラクターであるが、彼はれんとは逆に裏表の一切ない、見つからなくて当たり前の100万円のロレックスの腕時計をきちんと届けるような、馬鹿正直なキャラクターであり、れんは彼の正直さを恐ろしい殺人計画に巻き込むのにうってつけだと身体を使って利用する。
 しかしながら一夜(いや半夜もない)の肉体の関係によって、正直者の紅次郎は彼女を愛してしまう。「嘘をつけない男」と「嘘しかつけない女」。れんもまた彼を愛しているフリをして騙しながら、心の底では本当に愛してしまっていたのではないだろうか。
 何故なら彼女が紅次郎に会い、彼を信頼する「フリ」をしていたとき、彼女は常に「雨」に濡れていたからだ。あれは「フリ」ではなく「ヌード」の心であったのではないだろうか。

 すると最後のシーン、彼女に天井から降り注ぐ銀色の粒子がふりかかる時見せた表情と台詞は「嘘」ではなくて、また紅が言うように、彼女の本性は悪魔ではなく天使だったのではないだろうか。
 おそらくそのような彼女の本性は、紅以外、誰も信じやしないだろうが、紅はそれを一心に信じ続けるのであろう。それが損な性格だと分かっていながらも。
 何故なら彼は最後、絶望の淵から立ち上がるからだ。(絶望から立ち上がるという描写を「食べる」という行為に置き換えた演出はとても好き。前作の哀しい結末と対比になっているのであろう)
 「嘘」が苦手な紅は作中二つの嘘をつくが、その一つがれんに警察と通じていることを隠したこと、それが結果的に彼女の完全犯罪を失敗させ、彼女を死にいたらしめるわけであり、紅はそこに絶望を感じていた。
 そしてもう一つの嘘が警察に猫を飼っていると言ったこと。しかしある雨の日に死んだれんの生まれ変わりのような猫が彼のもとに迷いこんでくる。「雨」が「嘘」を洗い流し、「嘘」を「真実」にしたのである。
 だからいつも雨に濡れていたれんが紅を愛していると言ったその気持は、服を着た「嘘」ではなく、「ヌードの心」だったと、彼は信じることができ、だから生きるために前進をはじめたと考えられる。

 本作はやたら下からのアングルが多い。前作『ヌードの夜』にも増して、閉塞感がすさまじく、死体の臭いが漂い、ドロドロヌメヌメした決して気持ちのいい映画ではないのに、見終わったあと、シャワーを浴びたあとのように、大泣きしたあとのように、どこか爽やかなのは、我々も下からのアングルで見続けたことで雨に濡れ、「ヌード」にされたからではないだろうか。

 以上、本作の副題は色々な意味が込められている。父親の歪んだ「愛」がれんの人生全てを奪ったともとれる。れんの偽りの「愛」が紅の善を奪ったともとれる。しかし紅の「愛」がれんの「服(表面)」を奪って、偽りつづける彼女の心を「ヌード」にしたともとれるのではないだろうか。


 他に良かった点は、なんといっても佐藤寛子の官能美。前作の余貴美子に増して本当にエロティック。この人、もと生徒会長なんですよ、うひょー!!
 大竹しのぶと井上晴美との悪女だらけの三人家族がアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの『悪魔のような女』を彷彿とさせてとても良かったです。彼女たちの悪事をもっと見ていたかった。缶ビール片手に死体を切り刻むシーンとか凄まじい。
 90年代前半的な音楽や美術のチープなセンスも、前作ほどではないにせよ、日本製フィルムノワール的で良かったです。

 ただ前作と比較してインパクトあるシーンが少なめだったのが残念。前作はクローネンバーグ風のゴアファンタジー描写とか、エンディングに海中から引き上げられる黄色の車などが印象的でした。

 谷澤恵里香レベル。

 次回は、当ブログは基本日本で劇場公開されている新作映画を取り扱う事にしているのですが、これは新作扱いでいいのでしょうか? 『アバター<特別編>』(IMAX 3D上映)の感想を書いてみたいと思います。ほな!


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  1. 2011/12/07(水) 15:28:14 |
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