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『ソフィアの夜明け』はスケールが巨大な挑戦状だよ。

ソフィアの夜明け

 今回は去年の東京国際映画祭で最優秀賞となる東京サクラグランプリを受賞したことでも話題の『ソフィアの夜明け』の感想です。

 観に行った映画館は青山のシアター・イメージフォーラム。映画サービスデイに行ったので、確実に混むかなと思ってはやめに行ったらそうでもなかったです。もう一つのシアターで上映していた『死刑台のエレベーター』その再上映は何かのあてつけなのでしょうか?)がやたらと混んでいました。TOHOシネマズでやっている『午前十時の映画祭』などもそうですが、古い映画を箔を漬けて上映すればほぼ確実に流行っていますね。それはとてもいいことなのでしょうが、ますます新作映画の肩身は狭くなって行っているような。そのうち、あと100年後くらいには、映画が落語のように、新作が邪道とされがちな古典芸能めいてきたりして…。
 客層はほぼ全員一人客。30~40代男性が多めでした。


概要:製作・監督・脚本・編集はこれが長編デビューとなるカメン・カレフ。主演のフリスト・フリストフが撮影終了後突然他界したことでも話題に。
 社会主義体制の崩壊から2007年のEU加盟、さらには経済のグローバル化という激動の20年間を経た現代のブルガリアの首都ソフィア。38歳のイツォ(フリスト・フリストフ)はアーティストとしてつまずき薬物に溺れてしまい、現在はその治療をしながらアルコール漬けの日々。ある日彼は、トルコ人一家が若者の過激派グループに襲われている現場に出くわし、助けに入る。偶然にも、そのグループにはしばらく疎遠となっていた彼の17歳の弟ゲオルギ(オヴァネス・ドゥロシャン)の姿も。やがてイツォは助けたトルコ人一家の娘ウシュル(サーデット・ウシュル・アクソイ)に惹かれていくが…。
"allcinema online"より抜粋)


 例えば幼い時に、人々の幸福を実現させるべき国が国民に殺し合いをさせていることを不思議に、そしてとても恐ろしく感じたことをよく覚えている。
 この戦争の話はたとえが大きすぎるかも知れないが、例えば自分も傷ついたことがあるだろうに何故平気で人を傷つけられるのかとか、このような「根本的におかしなこと」というものは、まさか個人の力でどうこうできるものでもなく、歳を重ねるごとに、適当な折り合いどころを見つけて、考えないように、もしくは目を背けられるようになる。
 今作はそのような、世の中が当たり前のように抱えている問題に対して、果敢に戦いを挑んでいる映画である。そこらへんを解説していきたい。


 主人公イツォの弟ゲオルギはまだ20歳にも満たないほどで、そういった疑問に対しての折り合いどころがわかられないために過激な右翼活動に巻き込まれていってしまう。
 そんな弟を心配するイツォも、もはや若くもないのに、世の中に対して適当な接し方をみつけられず、漠然と苦しみ、それを誤魔化すかのようにアルコールやドラッグへと逃げている。始末が悪いのは、彼自身がその苦しみに無自覚でいることだ。なのでその不安をどこにぶつけるべきか分からず恋人にも杜撰な態度をとってしまう。
 だから物語の前半は、この二人の兄弟のわけもわからぬイライラによって圧迫された息苦しい雰囲気になっている。それは登場人物がスクリーンをギチギチに占拠する構図だったり、役者のアップの多さだったり、せわしない編集テンポだったり、主人公の貧乏ゆすりだったり、兄弟揃って食事を「薄味」だと調味料で刺激を求める姿だったり。

 主人公イツォを演じるフリスト・フリストフの実人生をモデルにした本作は、例えば彼が住んでいたアパートや彼が制作した絵が実際に使われていたり、恋人役の女性も実際の恋人だったり、そういった臨場感が作品にリアリティを与え、またこのフリストは映画制作後、不慮の事故にて亡くなってしまったそうだが、そういった偶然の不幸もこの作品が持つパワーに拍車をかけている。『シングルマン』『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』がそうだったように役者の実人生が作品にリンクしたことが映画にエネルギーを与えていると言えよう。

 この物語に劇的な変化は訪れないのだが、ウシュルという、名前に日本語でいうところの「キラキラ」という意味がある、トルコ人(かつてトルコが支配していたブルガリアではトルコ人は保守派に差別されがち)の少女とイツォが出会ってから、イツォのぼんやりとした苦しみに一筋の光明が差し込む。
 彼女が言うには「世の中根本的におかしなことがある」「それは皆が緊張しているから」「それは暴走している」と。そのあと彼女が体験した宗教的な話が続くのだが、彼女の言葉により、彼の不安やイライラは「言語化」される。なんだかよくわからない感情に「言葉」や「形」を与えられたことで、多少の安心を得たイツォは、ようやくイライラに対して、目を背けるのでも自暴自棄にぶつかっていくのでもなく、冷静に対処すべく、向き合いはじめる。
 彼の主治医は、彼に神を信じることで得られる安心感を教えるが、特別信心深くない彼はそこに救いを求めない。イツォが行ったことは自分の中にある善意を信じることであった。
 「自分の中にある善意を信じる」とは隣人や家族に優しく接する自分を否定しないことであり、それが彼の陰々滅々とした夜を明けさせてくれるかもしれない。そういった希望の夜明けを感じさせながら本作は終了する。


 以上、「自分の中にある善意を信じる」というメッセージはとても頼もしく、世の中に対してきちんと向かい合う勇気を与えてくれる。『アバター』ではございませんが、ネットやゲームや映画の世界に逃げがちな現代において、現実と向き合うという考えられるべきテーマを扱った映画だと思います。


 如何せん、日常のうすぼんやりとしたイライラと向かい合う物語という点で、ちょっと「薄味」と感じてしまった僕もイツォらと同様に、世の中に対して不安を覚えつつ目を背けているのだろう。もう少し映画ならではの攻撃性が欲しかったとは思います。

 中村ゆりレベル。美女なんですがなかなかブレイクしませんね。

 次回は『ルイーサ』の感想を書くよ。アディオス!
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  1. 2010/11/09(火) 02:56:47|
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第22回東京国際映画祭コンペ部門で東京サクラグランプリ、最優秀監督賞と最優秀男優賞の三冠を獲得したヒューマンドラマ。現代のブルガリアを舞台に、未来の見えない一組の兄弟の葛藤する様を描き出している。監督は本作がデビュー作となるカメン・カレフ。主演のフリス...
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