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『白いリボン』はスマートでエレガントな残虐ファイトだよ。

白いリボン

 i-podに音楽をたくさん入れてシャッフルで聞くのが好きなのですが、先ほど整理しておりまして、残ったのを見ると…スチャダラパー、電気グルーヴ、ピチカート・ファイヴ、カヒミ・カリィ、ライムスター、コーネリアス…なんだかすっごく渋谷系です!
 こんなんでいいの?
 90年代こんなに引きずっていていいの?『REDLINE』のこと言えませんね。

 今回はミヒャエル・ハネケの話題作『白いリボン』の感想です。

 観に行った映画館は銀座テアトルシネマ。水曜日の安い日だったこと、初週だったこともあり満席。1時間半も前に到着したのに、前方2列しか余っていませんでした。客層は映画好きそうな青年と年配の方が多めといった感じ。ここは最前列でもなんとかいけますから別にいいんですけれど。
 

概要:監督は『ファニー・ゲーム』や『ピアニスト』『隠された記憶』のミヒャエル・ハネケ。本作で2009年のカンヌの最高賞パルムドールを獲得。
 第一次世界大戦前夜、ドイツ北部の小さな田舎町。地主である男爵が支配するこの町で、ある日、帰宅途中のドクター(ライナー・ボック)が落馬して大けがを負う。道に張られていた細い針金が原因だった。その次には、男爵の製材所で女性の事故死が発生する。さらに、男爵(ウルリッヒ・トゥクル)のキャベツ畑が荒らされ、挙げ句に男爵の息子が行方不明になる。犯人がわからぬまま、敬虔な村人たちの間に不安と不信が拡がり、次第に村は重苦しく張り詰めた空気に覆われていく。これらの怪しげな事件に、この町にやってきた新人教師(クリスチャン・フリーデル)は首を突っ込むが…。
"allcinema online"より抜粋)


 本作の持つ「恐ろしさ」について考えたい。

 ミヒャエル・ハネケは『ファニー・ゲーム』『隠された記憶』などで知られた監督であり、残虐でサディスティックな作風の中で、その神経を逆撫でするような屈折した知性が光る監督である。
 で、今作はおとなしい牧歌的な雰囲気漂う農村が舞台であり、ハネケ作品では今のところ唯一のモノクロ作品である。そのモノクロの映像が描き出すのは『ソフィアの夜明け』『堀川中立売』以上にどぎつい、目には見えない悪意(暴力、嫉妬、欺瞞、脅迫、階級差別)であり、禍々しくも静かな静かな悪意が寒々とトゲトゲしく肌に突き刺さってくる雰囲気だ。

 本作は冒頭でこれがいつの時代どこの国の物語かを明示しない。まあ20世紀初頭でドイツあたりだとはすぐに推測できるが、それが明示されるのは結末、観客は自分がどこからどこに連れていかれるかわからないままおとなしく欺瞞に覆われた悪意が次第に平和な農村を包みこんでいく様を体験していく。一つの村がエゴによって崩壊していく様は『ドッグヴィル』を彷彿とさせる。

 タイトルの「白いリボン」は「純潔」を守るための約束を象徴し、「純潔」の教えにより村は統率と平穏が保たれていたと思われていた。
 が、『黒く濁る村』のように、人の欲望やエゴといったものはどんなに抑圧しようと、生来的なもののようでいずれにじみ出てきてしまう。その時「白いリボン」は「純潔」という欺瞞に満ちた見てくれを取り繕うだけの飾りと化してしまう。
 例えば牧師(ブルクハルト・クラウスナー)は叱られた復讐に愛鳥を無惨に殺すという許せない罪をおかした娘を世間体のため許し、家令(ヨーゼフ・ビアビヒラー)は自分の息子が男爵の息子の笛を奪ったというだけで殺しかける。男女関係がこじれにこじれて異常な状態になっている医師親子と助産婦(ズザンネ・ロータ)は全てを捨てて行方をくらます。
 男爵がそうであったように、これらの悪意は、本人達には別に「悪」と思ってしない。無意識的な悪意である。
 そして村はこれらの「白いリボン」で飾られた静かな悪意で爆発しそうになる。


 話は少し飛ぶが、『キャタピラー』でも触れられたように、太平洋戦争は陸軍が暴走して起こしたと言われているが、それ以上に当時は国民が戦争を望んでいた気風であったそうだ。あの映画においては戦争を喜ぶ方がノーマルで、「芋虫」となった夫を嫌がり戦争をバカらしく思う主人公の方がアブノーマルであった。これもやはり無意識的な「悪意」。歴史を動かしているのは「政治」ではなく「民衆」の意志なのだ。
 さて『白いリボン』において、静かな悪意に満ち満ちた村は、その鬱屈した閉塞感漂う雰囲気に新鮮な風が吹くことを求めるようになる。その閉塞した前近代的な雰囲気を、生活を、人生を根本的に覆してくれるような何かしら圧倒的な力を求めていた。

 本作で起きたいくつかの残忍な事件は、最終的に解決されないし犯人が誰かも曖昧なままだ。また『ドッグヴィル』続編『マンダレイ』のように村が崩壊するようなカタストロフも起きない。
 積もり積もった悪意はそのままで(なんせ悪意を発している村人は最後までそれが「悪」とは気がつかないのだから)、物語は突然、意外なほど明るく終わる
 彼らに彼らが求めた新しい風が吹いたのだ。ここではじめてこの物語がいつなのか明示される。1919年。ナチスの前身となるドイツ労働者党が成立した年であり、ドイツは第一次世界大戦に突入していく。村人たちは、これから起こる悪夢を知らずに、解放感で無邪気に明るく喜ぶ
 そして「白いリボン」で飾られた悪意のごとく、これから起こる惨劇をまるでハッピーエンドであるかのように明るく華やかな包装した雰囲気で、映画は突然終わる、より巨大で凄惨な「無意識の悪意」の訪れを匂わせながら。一切音楽がならないエンドクレジット、その最中に立つ観客の、座っていたイスがバタッと閉じられる音がいくつも劇場内に響いてひどく不気味だった。


 以上、本作の持つ「恐ろしさ」とは、人の持つ無意識で静かな悪意に、発している当人が気がつけない事、そしてそれは気づかれるまで積もり積もっていくこと、しかしながらそれを悪と気がつかない人々はむしろそれをキレイに飾り立てして見えなくしてしまうことではないだろうか。


 というわけでさすがミヒャエル・ハネケ、エレガントにセンスよく見るもののはらわたを抉り出してくれました。とてつもなく静かで美しく鮮やかで知的でひどくサディスティックな名作だと思います。今年見た映画の中でもトップクラスでゾワーッとビビりました。
 前半、どこに連れていかれるのかわからない分、少し退屈に思えるかもしれませんが、文句無しに傑作だと思います。

 橋本愛レベル。

 次回は、客観視できるのだろうか。思いれがあり過ぎて不安です『ゲゲゲの女房』の感想を書きます。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/12/14(火) 01:32:17|
  2. 映画サ行
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2
<<『ゲゲゲの女房』は別時間軸を持つ映画だよ。 | ホーム | 『ゴースト もういちど抱きしめたい』は多分ふざけているよ。>>

コメント

ガッカリ

近頃まれに見る駄作でした…。
  1. 2011/02/05(土) 16:10:17 |
  2. URL |
  3. 山田 #-
  4. [ 編集 ]

>山田さま
 こんにちは。
 この映画確かにガッカリという人も多いですね。
 できたらどこが駄作なのか理由など添えていただいたら、勉強になるのになぁ…コメント返しづらいなぁ…
  1. 2011/02/06(日) 12:53:46 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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映画『白いリボン』を観て

11-7.白いリボン■原題:DasWeisseBand(TheWhiteRibbon)■製作年・国:2009年、ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア■上映時間:144分■字幕:齋藤敦子■鑑賞日:1月15日、新...
  1. 2011/02/27(日) 21:15:22 |
  2. KINTYRE’SDIARY

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