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「少年ジャンプ」と水木しげると映画とおもちゃと特撮を愛します。

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『ゲゲゲの女房』は別時間軸を持つ映画だよ。

ゲゲゲの女房

 最近、邦画が多いですね。今回も日本映画『ゲゲゲの女房』の感想です。
 ここでも何度も言っていますが、ぼくは幼少時より水木しげる信者だったりして、水木先生のたまにやる気がなくてものすごくつまらない漫画を描くところも、たまに胡散臭い老人に見えるところも引っ括めて、まるで水木しげる教といった宗教の教祖のように崇拝しております。
 そんなわけで、ハナから客観的に書けるかどうかは定かではございません。
 
 観に行った映画館は、この映画を観に行くのならば、ここしかないだろうということでパルコ調布キネマ。フィルムは使い回した古いもので、席数も少ないけれど、なんか好きですこの映画館。近所の割にはあんまり使う事ないんだけれど。お客さんはレイトショーだった事もあり少なめ。30代以上くらいのカップルだか夫婦だかが4組ほど。


概要:水木しげるの妻・武良布枝の自伝エッセイを原作に、『私は猫ストーカー』の鈴木卓爾が映画化。音楽はムーンライダーズの鈴木慶一。
 昭和36年、出雲の安来。大家族の中で育った布枝(吹石一恵)は、東京に住む貸本漫画家の茂(宮藤官九郎)とお見合いをし、その5日後には結婚、慌ただしく上京することに。そんな布枝を待っていたのは、大都会・東京での甘い新婚生活にはほど遠い、想像を絶する貧乏暮らしと、ひたすら妖怪漫画ばかりを描き続けるぶっきらぼうな夫とのぎこちない生活の日々だった。戦争で左腕を失ったことと貸本漫画というものを描いているということ以外、茂のことを何も知らず、最初は困惑ばかりが募っていく布枝だったが…。
"allcinema online"より抜粋)


 本作のテーマは、周囲に流されない「自分の時間軸で生きる」ということ。それについて考えたい。

 水木しげるという人物は、周りを気にせず我が道を淡々と行ける人である。例えば「動」への方向を目指す当時の漫画業界で、一人「静」を目指した作風とか、当時の多くの漫画家が影響を多大に受けたディズニーではなくアメリカのホラーコミックに影響を受けた画風とか、「ポークショ」とか「なぷーん」とか「もがーっ!」に代表される独特のユーモラスな言語感覚とか、そこには彼独特の世界があり、そこに彼のダンディズムがあり、小心者で周囲の視線ばかり気にしてしまう僕は憧れているのだが、布枝夫人の書いた自伝『ゲゲゲの女房』を劇映画化した本作は、そのような「我が道を行く」水木しげるの妻として、如何に過ごしてきたかを描く。
 その答えとして本作は「自分の時間軸で生きる」という考え方を提示するが、そこを解説していきたい。

 原作にて布枝夫人は、水木との結婚を「愛だの恋だの言えなかった時代の結婚」と言っているが、お見合いで出会って5日目で式、話に聞いていたのとはまるで違う想像を絶する貧乏ぐらし、夫は折り紙つきの奇人と、まあ並の女性だったら即刻実家に帰ってしまうであろう結婚であった。坂井真紀演じる彼女の姉もその結婚に眉を潜め別居をすすめたりする。
 しかし彼女は出て行ったりはしない。ずっと黙って側にいつづける。それがこの時代の結婚であったのか。これを見て「女性が自立していない」と見る事も可能であろう。しかしぼくはこれを強烈な自立と読めた。なぜなら彼女もまた「我が道を行く人」だからである。

 例えば彼女は茂同様に妖怪を見る。冒頭、あまりに当たり前にたたずんでいるから、その長い後頭部が見えてくるまで、その家のおじいさんかなんかだと思っていたぬらりひょん(徳井優)、往年の日本の怪談映画を彷彿とさせるような登場をした吹き消し婆(石垣光代)、常に川にたたずんでいる小豆洗い(伊藤麻実子)と川男(宇野祥平/吉岡睦男)など、TVドラマ版ではアニメーションとの合成で表現された妖怪達だが、こちらでは生身の人間にて実在感を持たせて登場させている。そのひょうひょうとしたたたずまいが恐くもありユーモラスでキュートでもあるが、実在感をもたせることにより、茂や布枝が実際に「妖怪」と触れあっている感じが強まっている。
 彼女はそういった存在に囲まれている。特に可愛らしいのは出雲のカラサデさん(竹石研二)と布枝が出会うシーン。急激に近代都市と姿を変え、妖怪が見えなくなっていく日本の真ん中で、世の中のうねりに流されず、ただひたすら妖怪を描き続けた茂と、ただひたすら側にいつづけた布枝だからこそ妖怪が見えたのであろう。

 また、驚いた方も多いと思うが、昭和30年代が舞台なはずなのに、東京駅周辺や調布駅周辺などが現代のものをそのまま使用している点。調布パルコの前を携帯電話を持った人々が闊歩しているのだ。これは予算の都合で大掛かりなセットが組めなかったということもあるのであろうが、布枝たちの生活と当時の一般的な生活にかなりの差があるということを誇張して表現しているととれる。
 村上淳演じる金内氏は「たまに時代に急激に置いて行かれている気がする」と嘆くが、武良夫妻は世の中と生活や価値観が食い違ってもまるで気にしない。貸本漫画という誰の目に見ても衰退していく定めの文化にすがりながら、たくましくもひょうひょうと生きて、たまに入ったお金でコーヒーやチキンカレーを楽しむ。

 他にも、何度も布枝がゼンマイ時計をいじるシーンが出てくるが、これも彼女が「自分の時間軸で生きる」ということを表しているし、ムーンライダーズと小島真由美が歌うテーマソング『ゲゲゲの女房のうた』(名曲!)で「女房」が、我が道を行く事で有名な「亭主」と同列に挙げられているのもヒントになるだろうか。


 布枝が「自分の時間軸で生きる」ことが出来たのは、夫の個性的な人物像と同時に、その超個性的な漫画を見たからであろう。彼女が夫の漫画をはじめて見た時、その独自性と素晴らしさへの驚きのあまり漫画が生き生きと動き出す。水木しげるの作風を尊重したそのアニメーションは見ていてとても楽しかったです。


 以上、よく自立した女性なんて評される方が多い現代であるけれど、他人や時代に流されず、毅然とした態度で我が道を歩み続け、「生きてるうちから妖怪」と称される稀代の変人の側にただ居続け愛し続けた布枝夫人は『ミレニアム』シリーズに登場するリスベットレベルで自立した女性であると思う。


 他に良かった点としては、宮藤官九郎がオナラくさくて良かったです。向井理くんじゃかっこいいだけで、妖怪くささはまるでない。水木しげるはもっとオナラの臭いがしていないと。「…屁です…」とか、知人が死んで爆笑したりとか。
 あとこれもTV版との比較ですが、時代描写が良かったです。NHKのアレは、アレで面白かったけれど、かなり漂白されてしまって、貧乏の苦しさ、暗さ、汚さとかまるで出ていなかったし、布枝のストレスとかもまるで表現されていなかったし。


 十分個性は出ている映画ではあるけれど、もっともっと個性的だったならば、ストーリーと共に、その映画全体(内容だけでなく、作品が表す全て)が「自分の時間」というテーマを表現する事になり、作品に説得力と深みが増してよかったのになぁとは思います。そこらへん「映画全体」でもって「妖怪」を表していた『堀川中立売』はやはりすごかったなと思う。

 あと江本祐くんと徳井優さんのW(ダブル・ユー)と平岩紙ちゃんなど、TVドラマ版と数人役者が被っているところに、日本の俳優陣の層の薄さを感じました。

 石原さとみレベル。

 次回はリドリー・スコットのお出ましだ。『ロビン・フッド』の感想を書きます。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/12/15(水) 20:08:36|
  2. 映画カ行
  3. | トラックバック:2
  4. | コメント:2
<<『ロビン・フッド』は近代的英雄譚だよ。 | ホーム | 『白いリボン』はスマートでエレガントな残虐ファイトだよ。>>

コメント

コーヒーみたいな例え

テレビは薄かったけどミルクをいっぱい入れて甘くて飲みやすかった。
映画はとても濃いブラックで、塩とか味噌とか入ってる感じだった。
  1. 2010/12/18(土) 10:13:01 |
  2. URL |
  3. ふじき78 #rOBHfPzg
  4. [ 編集 ]

>ふじき78さま
 こんにちは。返事遅れてもうしわけありません。
 いい例えですね。オナラくさいコーヒーでしたね。
 TV版はあまりに平穏すぎて、こんな水木先生じゃ『悪魔くん』は生み出せないだろうってな雰囲気でした。
 まぁ今回の映画版に関しても、吹石一恵が貧乏の割には健康的に美しすぎて、貧乏は感じられませんしたが。
 まぁぼく水木信者なので、水木関連はなんでも肯定いたしますが。コミックボンボンで連載していた、水木先生じゃない人が描いた、やたら等親の高いポップな絵柄の鬼太郎も、この前までやっていた萌え猫娘がでるアニメも肯定いたします。
  1. 2010/12/19(日) 12:41:23 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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ゲゲゲの女房

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