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『ゴダール・ソシアリスム』は気楽に見ようよ。

ソシアリスム

 今回は問題の映画『ゴダール・ソシアリスム』の感想です。「映画館で観た新作映画は全部感想書く」という自分で課したルールにいつになく苦しめられております。

 観に行った映画館はTOHOシネマズシャンテ。火曜日1300円の日に行きました。年末という事もありわりと混んでいました。30~50代くらいの男性一人客が多め。


概要:監督は泣く子も黙るジャン・リュック・ゴダール。『アワー・ミュージック』以来6年ぶりの新作長編。
 第1楽章<こんな事ども>、第2楽章<どこへ行く、ヨーロッパ>、第3楽章<われら人類>の3つの章で構成され、それぞれにゴダールならではの難解かつ哲学的な物語が膨大な引用と美しい映像で綴られてゆく。
("allcinema online"より抜粋)


 いつにも増して「概要」のコーナーが意味をなしてませんね。
 映画少年の正当なる道をまっしぐらに歩いていた10代の僕にとってJ.L.ゴダールはご多分にもれずアイドル的な存在でした。『勝手にしやがれ』『女は女である』などは何度見たかわからないほど。しかしながら最近のコラージュ的な作風のポエトリックなゴダールは趣味ではなく、というか「難解」のものを「難解」と思うのは観客が悪いんだってゴダールの態度がイヤで、あまり真面目には見ていません。
 で、ゴダールの久しぶりの新作である本作を鑑賞する際に、あまり意識しすぎて頭こんがらがってしまわないように、以下の3つを心がけて鑑賞いたしました。

(1)ゴダール監督作品という肩書きにビビらない。
 変に気負うことも見下すこともせず、できる限りのニュートラルな気持ちで、例えば『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』を見るくらいのつもりでリラックスして見ました。

(2)考えずに見る。
 『特攻野郎Aチーム』を見ている際に、「このギャグはテーマに照らしあわせるとどんな意味があるのか?」とか、「何故入口から普通に入らないでジープで壁に突っ込んでいくのだろうか」とか考えないで見ていましたが、どうせ意味不明のモンタージュと引用が錯乱するのだろうから、一つ一つのショットに対する思考は早々に諦めて、無数のショットと音の流れから感じるものを掴めればと思います。

(3)眠ければ寝る。
 無理して考えないで流れを感じようということは、眠くなるのも「感情」の一つ、まあ寝てても起きてても意味不明なのは一緒なわけで、眠いときに寝るのも一つの鑑賞方法かなと。

 そんな感じで出来るだけ気楽に楽しく本作を鑑賞してまいりました。


 本作はゴダールの長編としては初めての全編デジタルビデオ撮影ですが、「ゴダールとデジタルの関係」を論旨に考えてみたいと思います。

 チラシには「映像美」なんて書いてあったけれど、一昔前の携帯電話のカメラで撮影したかのごとき画素が荒れた映像や、ひび割れた音、効果音とは言えないノイズ、ぶつ切りにされた編集によって、「映像美」とははなはだ遠い、『鉄男 THE BALLET MAN』もびっくりの不快なアンサンブルを奏でる。

 かつては「映像」とは、音楽や絵画と違い、ある程度経済的に限られた人々のみが産み出せるものであったが、今や映像とは誰もが携帯電話を開けば生み出すことが可能、しかもネットに乗せれば世界中の誰しもが観覧可能という、最も気軽に参加できる娯楽アートである。
 本作のごみごみした美しいとは言い難い"YouTube"的インスタントな映像の羅列はそんなデジタル時代に対する『トロン:レガシー』とは正反対のアプローチであろう。

 ではこのデジタル時代を象徴した映像群によってゴダールが表現していきたいものは何か。

 上記の「不快なる映像群」によって、第一章では「自由経済の醜さ」を、第二章では「民主政治の矛盾」を、第三章では「かつて栄えた民主国家の歴史」をコラージュ表現し、それによって「民主主義の破滅」というメッセージが浮かび上がらせてくる。もっとダイレクトに作中では「お金の発明により人は目を合わす必要が無くなった」と言い、また「民主主義は悲劇と共に生まれた」ともいう、けっして分かりづらくはない範囲でこのテーマはきちんと表現されている。

 「自由は高くつく。しかし自由はお金や血で買われるものではなく、卑劣さ、売春、裏切りによって買われるものである」と本作第三部で言うが、ゴダール映画史上最も「自由」な映像の羅列は、映画を従来の映画たらしめることすら否定し、映画が持つ文法をとことん破壊していく。
 それでいてこれがかろうじて「映画」であると認識できるのはゴダールが作ったというネームバリュー故か、映画館で流れている映像だからか、美しい女優が出ているからか。もしくはゴダールはかつて「ひと組の男女と車が一台あれば映画は成り立つのだ」とか言っていたけれど、本作は最低限それだけは抑えているからだろうか。しかしながらそんな美しい女優アリッサ役のアガタ・クーチュールも映画の最後で卑劣に崩壊させられてしまう。
 そして映画は"FIN"ではなく”NO COMENT”で終わる。これも"YouTube"的、いや『2ちゃんねる』的な垂れ流しだろうか、映像の羅列による結論をゴダールは提示してくれない。「映画はきちんと終わる」という概念すら、これで破壊されてしまう。

 このようにして、チープな映像の羅列による「映画の概念の破壊」のコラージュが、「民主主義」の崩壊を観客に強くイメージさせる。

 以上、ゴダールは、21世紀に誕生したデジタルの自由な映画概念が古い映画の概念を葬りさる様を、民主主義が産み出した自由がやがて民主主義を滅ぼすこととリンクさせて描こうとしたのではないだろうかと感じた。それが「YouTube時代」におけるゴダールの「映画」における回答なのではないだろうかと考える。


 他に良かった点はアリッサ役の女の子が可愛かったこと。おっぱいと金貨の首飾りがエロティックで良かったこと。『勝手にしやがれ』のプロデューサーの孫だそうです。
 あと予告編の相変わらずのセンスの良さ。今回は全編を高速再生してみせてしまうという、こちらも実に「デジタル」的な表現。

 不満点はメッセージ性にかつてのような強力なパワーが無かったこと。『中国女』『右側に気をつけろ』が持っていたようなキャッチーな魅力が足りない。
 


 まあ面白い映画ではありません。が、やはり20世紀最大の映画監督の新作ですから、経験として見ておいて損はないと思います。肩の力は張らずに気楽に。なんだかもう一度見たくなる妙な魅力に溢れてはいます。次見る時はきちんと頭を使って見ようかなと、そうしたら全く違う感想がうまれてくるだろう。

 水樹奈々レベル。

 次回はこちらも重要作品、もちろん観に行きました。『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』の感想でございます。

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(2002/07/20)
アンヌ・ヴィアゼムスキー、ジャン=ピエール・レオー 他

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ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・ペリエ 他

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/12/31(金) 00:14:27|
  2. 映画カ行
  3. | トラックバック:3
  4. | コメント:2
<<『仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE』は東映版『恐怖劇場アンバランス』だよ。 | ホーム | 『シュレック フォーエバー』はシリーズを「汚く」まとめたよ。>>

コメント

お詫びとお願い

お早うございます。
いつもはTBだけで済ませてしまっているところ、はじめてコメント欄に書き込みをさせていただきます。
というのも、事前の断りなしに、「かろブッチ」さんの『ゴダール・ソシアリスム』に関する記事を、クマネズミのブログ記事の本文に引用してしまったので、お許しをいただきたいと思いました。
いつも「かろブッチ」さんのブログ記事は大変勉強になるところ、今回はその依存度がいつもに増して高くなってしまいましたので、それならいっそのことありのままを隠さずに本文に書いた方が良いのではないかと考えた次第です。
気分を悪くされるかもしれませんが、どうかご容赦下さるようお願いいたします。
なお、長々と駄文を書き連ねましたが、実際の内容は取るに足らないものですから、様々の問題点があるでしょう。ご面倒とは思いますが、ご指摘いただければ大変有り難いと思っております。
  1. 2011/04/03(日) 07:12:58 |
  2. URL |
  3. クマネズミ #-
  4. [ 編集 ]

Re: お詫びとお願い

クマネズミさま。

 こんばんは。
 コメントありがとうございます。こちらもこっそりといつも読ませて頂いております。

 というわけで、「映画的・絵画的・音楽的」の方に、長文でコメントを書かせて頂きました。ご迷惑でなければ読んで下さい。

 また遊びに来て下さいね。
  1. 2011/04/04(月) 02:31:33 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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ゴダール・ソシアリスム

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