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『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』は男の一本気がまっすぐ貫かれているよ。

yoyochu

 地味目なドキュメンタリー映画が続きますが、今回は『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』という未だに童貞臭が抜けないぼくにはいささか刺激的な作品でございます。

 観に行った映画館は当ブログでは初登場ですね、UPLINK X。東京の映画館で重要な映画館の一つだと思います。客層はまあ奇妙奇天烈な若者が男女ともに多め。水曜日の安い日で、少ない席数のこともあり、満席近くになっていました。


概要:監督はポルノでも活躍して、かつて代々木忠の助監督もつとめたことのある『TOKYO NOIR トウキョーノワール』の石岡正人。ナレーションは田口トモロヲ。
 80年代初頭のAV黎明期以来、数々のヒット作、問題作を作り続けてきたAV界の巨匠、“ヨヨチュウ”こと代々木忠の波瀾万丈の人生を振り返るドキュメンタリー。その知られざる実像と数々の伝説を、AV業界関係者のみならずAVの枠を越えてその作品を評価する著名人たちのインタビューとともに明らかにしていく。
"allcinema online"より抜粋)


 前々回の『冷たい熱帯魚』の感想を書いていたら、アダルトビデオのなんたるかを知りたくなり、ちょうどいいのがやっていたので見に行ってみました。

 この映画は、代々木忠というアダルトビデオ監督の半生や考え方もしくはその監督作品を通して、他者や現実に自分に「真摯に向き合う」というメッセージを描いていると思う。それが今回の論旨。


 本作は大きく二部構成になっていて、まず代々木忠の半生と、それが如何にアダルトビデオ業界の発足につながっていったかについての前半。続いてバブル期以降の代々木忠のアダルトビデオが如何に独自の路線を歩んで行ったかについてを語る後半。

 で、前半のテンポはとても良い。代々木忠の半生を追っていくうちに、いつの間にかアダルトビデオ業界が如何にして発足したかを理解しているという展開・編集はとても見事だと思います。
 後半、アダルトビデオを撮る意義を追求していく代々木忠の姿を描くパートは多少テンポが落ちてしまいそこは残念。


 代々木忠は常に何事にも真摯に向き合っている。終盤、笑福亭鶴瓶も語っているが、何事も曲げることがない。
 例えば若い頃、後の妻となるピンク女優・真湖道代に恋をしたため、当時世話をしてくれていた愛人三人と別れようとした時も正直にその旨を告げ、愛人たちを恋人に合わせたそうだし、彼の人生を翻弄した喧嘩早い性格もその頑にまっすぐな気性に起因しているのだろう。必ずしも望んで入った業界ではないポルノ業界の仕事も一生懸命に取り組み、あまりに真面目すぎて作品をエロくしすぎ裁判沙汰にまでなり6年も裁判を長引かせた挙句無罪を勝ち取るほど。

 そんな「何事にも真摯に向き合う態度」"エロの追求"に繋がり、劇映画からドキュメンタリーへの変遷、そしてアダルトビデオの発展を招いたのだ。(彼が監督したごく初期のセル用アダルトビデオ『ザ・オナニー』の人気が、VHSがβに勝った要因の一つになったというエピソードもとても興味深い)

 そしてその「真摯に向き合う」という態度は、アダルトビデオを撮る際の「セックスすること」への態度にももちろん反映される。

 代々木忠に言わせれば「世の中は欺瞞に満ち満ちている。人間が生き物の人間として成立するに最も重要であるはずのセックスについてすら、自分をごまかし、照れて、一歩引いて目をそらしている」『渇き』の吸血鬼してしまった牧師や『やぎの冒険』の那覇からきた少年のごとく、世の中の残酷で淫らな真実から目を背けているのだ。


 『冷たい熱帯魚』では主人公・社本が「生きるってのは痛いんだ」と言っていたが、真摯に向き合う行為に痛みはつきものである。

 代々木忠夫人・真湖道代は彼と一緒に生活することが如何に辛かったか、ストレスのあまり第ニ子を流産してしまったことを涙ながらに語る。
 終盤登場する多重人格の女性の面倒を、亡くなった先人に代わって見ていた代々木忠はあまりに彼女たちと真剣に向き合ってしまったため鬱病になってしまう。
 目をそらしたセックスをしていた恋人たちの女性の方の性欲を発展させて、結果別れさしてしまったという作品『恋人』は衝撃的。

 しかしどんな痛い目にあっても代々木忠は、人と仕事とセックスとに真摯に向き合う。照れて白けた人々に、口や手、道具やら催眠やら性感マッサージやら色々使用することで、女性も男性も人の本質的な「性」に目を向けさせる。
 代々木は「エクスタシーは社会からの解放である」とも言うが、彼が監督したセックスのあと女優たちも俳優たちも「羊水に浸っていたようだ」と、まるで憑き物が落ちたような生き生きとした顔をしている。

 代々木忠は最後に「目と目を合わせる」ことの大切さを語る。年頃の自分の娘に「セックスするとき目を見ないやつはダメだ」というくらいだから相当の信条のようだ。
 人が人と愛し合うとき、目と目をあわせて心を通わせなければ、それは『冷たい熱帯魚』で描かれた、下手な心ないアダルトビデオの世界だ。

 かつて水木しげるは『猫楠』という南方熊楠の伝記漫画で「動物には正常位というのはない、顔と顔を合わせてセックスできるのはカミサマが人間にくれた特権だと思う」と言った。


 「下手なアダルトビデオ」ではない「人間らしいセックス」あるいは「人間らしい人との向き合い方」とは単純に目と目を合わせることであり、本作はその「真摯に向き合う」という行為の重要性を代々木忠という人物の半生を描くことで語っているのだと思う。


 不満点としてはまず劇場に流す映画として、映像や音楽に感動があまりないこと。昔のポルノ映画や衝撃的なアダルトビデオを見れたのは良かったけど。もうすこし映画とは「映像を見せる行為」ということに留意して欲しかったかな。

 あと個人的にはもっと突っ込んで、なぜ人を真っ当に性と向き合わせるという行為をアダルトビデオとして撮影して他者に見せるこういうが絡んでくるのか。仕事ではなく個人的にやらない意味はなんなのか。コマーシャリズムと真の愛の追求という行為に乖離があるのではないかってところを描くべきだったと思う。

 あとこの手の映画にしてはちょっと長く感じたかな。

 前回の『平成ジレンマ』やちょっと前の『玄牝 -げんぴん-』など変テコ初老シリーズですね。いまだに童貞臭が消えないあなたにおススメ。

 香里奈レベル

 次回はあのゲッコーが未曾有の大不況のいまついに帰ってきた!
 25年ぶりくらいの続編です『ウォール・ストリート』の感想。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/02/19(土) 01:22:05|
  2. 映画ヤ行
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:0
<<『ウォール・ストリート』は金融セカイ系ストーリーだよ。 | ホーム | 『平成ジレンマ』は体罰を推奨も非難もしないよ。>>

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■映画『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』

私、この作品を観るまで、恥ずかしながら代々木忠という人をまったく知りませんでした。 いや、この年齢でカマトトぶる必要もまったくないんですが、とはいえ、AVを自ら進んで見ることもないし、見る機会があったとしても監督名なんか気にしないし。 いやー、でも、す...
  1. 2011/09/04(日) 03:57:41 |
  2. Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>

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