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『イップマン 序章』は小さい方のマトリューシュカ人形だよ。

イップマン 序章2


 今回はついに公開だよ『イップマン 序章』の感想です。
 見に行った映画館は前回に引き続き新宿武蔵野館。ファーストデイで、やはり立見が出るほど混雑しておりました。こちらは座れましたが。客層としてはやはり年配の方が多めでしたが、その中でも比較的男性が多かったり。


概要:『イップマン 葉問』の2年前2008年に制作されたシリーズ第一弾。監督は『イップマン 葉問』と同様にウィルソン・イップ。こちらには登場しないがサモハン・キンポーがアクション監督を務める。
 1930年代の中国広東省佛山。家族と共に平穏な日々を送る詠春拳の達人、イップ・マン(ドニー・イェン)。その実力と人格で人々の尊敬を集める一方、彼を倒して名を挙げようとする武術家たちも多く、心ならずも手合わせをしては、いずれも一ひねりにしてしまうのだった。ところが折しも日中戦争が勃発、佛山を占領した日本軍によって家屋を奪われ、窮乏を強いられる。やがて空手の名手でもある日本軍将校・三浦(池内博之)がイップ・マンの実力に目を付け、日本兵たちに中国武術を教えるよう迫るのだが…。
"allcinema online"より抜粋)
 

 日本での公開は前後してしまいましたが、本国中国での公開は『イップマン 葉問』よりこちらが2年先。

 やっぱり、パート2見てからパート1見るってのは見方としておかしかったかなって思うのです。だってどちらが映画として面白いかはおいといて、パート2の方が順当な続編としてあからさまにスケールアップしているわけで、先にパート2見てしまうとパート1がちょっと地味に見えてしまう。例えば本作の敵・日本陸軍の空手家である三浦もパート2のイギリス人ボクサーツイスターの下衆っぷりに比べちゃ誇り高き格闘家でむしろちょっといいヤツに見えるし、中ボスのカム・サンチャウ(ルイス・ファン)もパート2のサモハン・キンポーに比べちゃ萌え度がまるで及ばない

 例えるなら入れ子構造のマトリューシュカ人形の最大サイズであるパート2を先に見て、その後小さなサイズを見たような迫力がスケールダウンしたガッカリ感。この手のエンターテイメントアクションは螺旋状に面白さが増幅していかなければならないのに…っていう。

 というわけで『イップマン 序章』とてもいい作品ではあるのですがパート2ほどの興奮は伝わりませんでした。
 もちろんスケールが小さいからこちらの方がつまらないというわけではなく、こちらの方が作品としての質は高いとは思います。正当な順番で見たならばもしかしたらパート2よりも好きだったかもしれないのに…。


 本作は続編にてイップマンが、あのような武術をしながら殴らないし戦いもしないという境地に立つまでの経緯、「非暴力的な格闘技」が誕生するまでが描かれていると思う。


 本作の冒頭におけるイップマンは武術を愛してやまないブルジョワだ。召し使いに世話をさせて武術の研究をしながら働きもしないで家族と共に悠々自適に暮らしている。
 他の道場主が歯が立たないほどの腕前を持つ道場破りのカムも赤子同然の扱いでのしてしまうイップマンは、最強であり人格者でもあり、町民たちに信頼もされている。彼は武術の盛んなこの佛山においてはヒーローであり紳士であり権力者であり、道の真ん中を皆に笑顔で挨拶されながら堂々と歩いていた。


 しかし戦争が始まり日本軍が佛山を占領してからイップマンは自身の無力さを痛いほど知ることとなる。武術では銃に立ち向かえないし、武術では政治を変えられないし、武術では人を守れない。イップマンの愛した武術はまったくもって無力であった。
 例えば、あの優しいイップマンがブチキレて、鬼のような形相で日本人の空手家をギッタバッタと10人まとめて始末するそのアクションシーンの凄まじさとその後にくるむなしさ、そして、廃墟のようになってしまった町の道の隅をとぼとぼと歩くと、銃を持った兵士がたくさん乗っている日本陸軍のジープが道の真ん中を横柄な態度で走り去っていくシーンが印象的である。


 そもそも中国武術は儒教の教えから来ているもの。儒教の教えとは、自分と他者を同等に扱う「仁」の意思、イップマンの扱う詠春拳はとりわけ、人を叩きのめすためにあるのではなく、人と人を繋ぐためにあるものなのだ。

 パート2の、無用な戦いは極力避けてきたイップマンとは違い、本作の彼は敵と見なしたものに対しては、いささか暴力的である。先ほどの10人組み手のシーンや、憎き日本軍人・佐藤(渋谷天馬)がイップマン夫人に色目を使った瞬間有無を言わせず意識を根絶させるシーンなど、状況が状況故に仕方ないのもあるが、やはり暴力的である。それはまだ中国武術の精神が身についていなかったからか。

 しかし若きイップマンは、しぶしぶ製糸工場の従業員たちに教えた武術によって彼らががつながっていったのを見て、中国武術のあるべき形を知る。
 彼は他者をねじふせるだけの暴力に従鱗され続ける町の人々を繋ぎ、更に勇気を与えるべく、日本陸軍に異種格闘技戦を申し込むに至る。


 このようにしてパート2の清廉潔白な精神の持ち主にて無類の実力者であるイップマンは誕生したのである。

 そしてついに始まる三浦(空手)VSイップマン(詠春拳)の対決。
 三浦の立ちふさがるもの全て破壊するがごときの、スピーディーだが重々しい暴力性は、観客にずしんとショッキングなほどの心理的なダメージを与える。一方でそれに対抗する少ないモーションと手数の早さを滑らかな動きでつないでいくイップマンの詠春拳は、凄まじい迫力とともに美しさを感じる。

 そしてその美しい立ち回りによってイップマンは苦しめられる佛山の人々をつないでいく。更にこのつながりはパート2で香港に伝わり、そして世界に伝わっていく。


 以上、やっていることは実はパート2となんら変わらない気がしますが、パート2以上に暴力の恐ろしさと無力さ、それに対抗する中国武術の素晴らしさがきちんと描かれていて、それでいて最強の人イップマンの成り立ち・成長が描かれていて良かったと思います。あとパート2よりも鬼のイップマンが見れるのでそこも良かったです。
 あと日本人が見ると少し気まずいです。でも池内博之はなかなかカッコ良かったです。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の時とはその迫力が違います。

 あと対三浦戦もいいですが、どちらかというとコメディ的なノリの対カム・サンチュウ戦もかなり熱いです。リズム感よく、途中でちびっ子が割り込んで来たり、奥さんが怒ったりといった気の利いたギャグを忘れなく、棒術まで披露するというサービスっぷり。

 不満点はパート2同様に悪役たちにも同情の余地が欲しかったところ。三浦は決して許しがたい悪ではなく誇り高い武道家として描かれていた分、イップマンに倒されたあとどう変わっていったかというドラマを見せて欲しかったです。


 面白さは保証いたします。が、しつこいようですが、パート2を未見ならパート1→2という順当な順番で普通に見ることをオススメします。というか順当な順番で見たら2作とももっと楽しかったんだろうなあと思うと悔やまれます。ブルース・リー役の若手俳優を入れてパート3やらないかなーと願っております。

 黒川芽以レベル

 次回は、みんなービョンさまが出るよー!!ビョンさまが大変な目に遭うよー!!チェ・ミンシクも出るよー!!!でおなじみ話題の残酷映画『悪魔を見た』の感想です。
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  1. 2011/03/05(土) 02:53:23|
  2. 映画ア行
  3. | トラックバック:11
  4. | コメント:0
<<『悪魔を見た』は観客参加型のゲス野郎オリンピックだよ。 | ホーム | 『アンチクライスト』は背徳的で凄惨で独りよがりだけど、愛だよ。>>

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