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『コリン LOVE OF THE DEAD』はスウィートでロマンティックな人肉がお好きだよ。

コリン

 地震、皆さんご無事でしょうか?
 現地の「惨状」というにはあまりに辛すぎる状況、原発問題、停電、それに併発するもろもろのこと、ちょっとショックでブログなど更新できずじまいでしたが、それでもこういう時こそ暗い気持ちにならないでくだらないこともやった方がいいのかなと思い、いつも通りのくだらないことをしようと思います。
 
 でもこのブログで何か出来ることがあれば、なんなりと使ってやってください。


 今回は低予算で話題のイギリス産ゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』の感想。

 観に行った映画館はヒューマントラストシネマ渋谷。ここは駅からやや遠くて、いつも時間ギリギリに着いてしまいます。そんでもってエレベーターがいつもなかなか来ないので焦るのなんの。しかも予告無しの本編からの上映とな、入ったとたん始まりました。まぁ余裕を持って家を出ない僕が悪いのですが。水曜日の安い日でけっこう混んでいました。客層は若者が多め。


概要:スタッフ・キャストを有志によるボランティアで賄い、製作費をほとんど掛けずに撮り上げた自主製作作品ながら、ゾンビとなった青年を主人公にしたユニークな切り口と完成度の高さが評判となり数々の映画祭で話題を集めた英国産ゾンビ・ホラー。監督・製作・脚本・撮影・編集はマーク・プライスという人。
 死者が蘇り、生きた人間を襲い始めるという異常事態が世界中で発生。ロンドンの街もパニックに陥り、社会機能は完全に麻痺してしまう。ゾンビの襲撃をどうにかかわしてきた青年コリン(アラステア・カートン)も、気がつけば腕に噛まれた跡が。意識が遠のき、確実にゾンビ化が進行し、いつしか他のゾンビと共に生きた人間を食らうコリン。それでもやがて、薄れゆく意識の中でもなお、何かに突き動かされて地獄絵図と化した街をひたすら歩き続けるコリンだったが…。
"allcinema online"より抜粋)


 人間だって動物なわけで「子孫の繁栄」という、全てのアニマルに定められた命題を素直に守ってはいる。もし人間がその本能に従うだけならば、人はそこに愛など感じやしないだろう。セックスはただの生殖行為だし、恋人はただの"つがい"だ。
 人の理性は、特に『アンチクライスト』で描かれたようなキリスト教的な考え方では、人が本能の徒たるアニマルと化すことを拒んで「愛」という概念を作り上げたのだと思う。

 で、そのような「愛」という不確かなものを信じてきた人は、その繁栄の中で、最初は空論であったはずの「愛」を実現化できたのであろうか。
 本作『コリン LOVE OF THE DEAD』はそのような「愛」の実在性を問うロマンティックなゾンビ映画であったと思う。


 脅威の低予算(日本円で5800円だそうな)で作られたともっぱら話題だけれど、低予算っぷりは作品の魅力に直接は現れてはいない。
 ただし如何にお金のない状況で面白い映画を作るかをさんざん考えに考え抜いた挙げ句このようなユニークなゾンビ映画ができたわけだからやはり低予算も本作の魅力のうちか。


 本作でテーマとして描かれるのは、前述のごとく「愛」だと思われる。「愛」はもはや肉体に染み付いた習慣化された本能か、それとも「愛」は人間の複雑な精神が生み出す高度な感情であり空論なのかということをこの作品は問う。


 この映画を楽しむには『ゾンビランド』同様に何よりまずゾンビ映画の基本ルールを知っている必要があるだろう。少なくともジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』『死霊のえじき』の三部作くらいは見ておいたほうがいいかと。

 すなわち、

1.ゾンビに噛まれたらゾンビになる。
2.ゾンビになると理性は一切なくなり、知性もほぼなくなる。
3.ゾンビは人肉を求めるほか、生前の習慣化された行動を繰り返す。
4.ゾンビは脳を破壊すれば死ぬ。

 あとは、必ずゾンビ狩りを楽しむ人間が出てくるとか、本当に恐ろしいのはゾンビでなく人間とか、そういう定番パターンも知ればより良いかと。

 で、本作は"ゾンビ視点"という珍しいゾンビ映画なのだが、セリフなどはゾンビだからほぼゼロの展開である。そのなかでゾンビになってしまったコリンは、その肉体の渇きを人肉を喰らって癒やしつつ、胸の奥に残る切ない感情を(人肉を喰らいながら)探っていき、それを「愛」と突き止めていくというなかなかロマンティックで切ない物語となっている。

 もし本能の徒であるゾンビに愛があるとするならば、それは肉体に残る習慣であり、「愛」は人の本能であると言える。
 しかしもしゾンビに愛がなければ、「愛」とは思考と理性と想像の上にある高等な感情(空論になりかねないもの)であると言える。

 ゾンビになったコリンは人肉を求める中で、音楽と、美女と、家族を見てそれらに興味を抱く。何やら懐かしい感覚がするのだ。
 しかしゾンビである彼はその感覚を大切にはしない。その感情に戸惑いながらも、どんな美女であろうが実の姉(デイジー・エイトケンス)であろうが喰ってしまおうとする。
 同じような"ゾンビと愛"を描いた映画だと、ゾンビになりゆく少女の切ない恋を描いたシリーズ3作目『バタリアン・リターンズ』や、ゾンビ同士のセックスや出産まで描いたホラーコメディ『ブレインデッド』などがあるが、セリフもギャグもストイックに抑え真摯な態度でそれを描く本作ほど真面目には語っていなかった気がする。


 「愛」を失ったのはゾンビだけではない。ゾンビに怯える人間たちも、数多のゾンビ映画よろしく、自分勝手な生存本能をあらわにして、その欲望が複雑な分、ゾンビよりも醜く争いを繰り広げる。「愛」など余裕のある時分にのみ唱われる欺瞞に満ち満ちた言葉遊びなのかもしれない。

 そして観客は、やはりゾンビには「愛」はなく、「愛」とは人が思考と理性と想像の上に作り上げた高度に複雑な感情であり、人の根底には「愛」など根付いていないのかもしれない、やはり人は本来的に種の繁栄を求めるだけのアニマルなのかもしれないと、ニヒルな感情に覆われる。


 しかしながらコリンは当てもなくさまよっていたのではないことが終盤解る。それはすでにゾンビになってコリンの手によって涙ながらに殺されていった恋人の自宅。コリンはそこでかつて恋人と愛し合い、恋人への愛故にゾンビと化してしまったことを思い出し、恋人の死体とともに果てる。
 映画はそこで終わるためコリンの身体に愛が残っていたのかどうか、人の本質に愛が備わっているかどうかは明示されない。だが、コリンのその旅路にはほんのかすかだがロマンティックな匂いが漂っていたと思う。


 以上、恋愛を語らずして何を語るといった現代の「愛」の存在を信じて疑わない恋愛至上主義時代において、「ゾンビ」という最も愛とかけ離れたクリーチャーを主役に、一度突き放してもう一度「愛」の存在を確認する、そのような知性とロマンス、いい意味での意地と趣味の悪さを感じさせる小品でございました。


 他に良かった点として、誰かの自宅の中で、無数のゾンビたちがみっしりたった4人の生存者を喰らう為に押し入っている阿鼻叫喚のシーンの絶望感。
 あと暴徒化した市民自警団、ロメロ並の狂気を感じました。特にゾンビウィルスチェッカーの描写が良かったです。

 不満点としては、これを描くのに長編である必要性がそこまで感じられなかったこと。
 これならもっと簡潔な形でまとめられるし、そのほうが据わりがいい気がする。


 これが5800円なんて信じられません。5800円でこれが撮れるのならば、2000000000円かけて作られた『SPACE BATTLESHIP ヤマト』はこの35万倍素晴らしく作れるはずなんですが、まぁそんなことはありませんね。低予算だからってけして貧乏くささなどは感じません。きちんとプロ意識のあるゾンビ映画です。
 
 松井玲奈レベル。

 次回は、ええコーエン兄弟なのに宣伝地味すぎやしないか?でおなじみ、ようやく公開の『シリアスマン』の感想です。

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