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『シリアスマン』はしばらくしたら納得するか忘れるか落ち着くよ。

シリアスマン

 地震、みな進んで助け合うのがすげえなと思いました。やればできるじゃん世界!
 ぼくはちょうど休みでずっと被害の少ない東京の自宅にいましたが、ネットも町も、状況がよくわからないのもあって16時すぎくらいまでは大地震ではあるけれど、なんとかなるみたいな雰囲気で余裕もあって、ある程度余震が収まったら町も日常を取り戻しつつあったのですが、それがマジでヤバい状況だと分かるとまた非日常的な雰囲気に戻るという、その想像力のタイムラグが妙に不気味でした。
 その後のパニックとか、デマの散乱とか、そういうのに対応するべく、常に想像力をフルに活かしていかないといけないんだなと、そういう「大人の想像力」の大切さを身にしみて感じました。


 今回はコーエン兄弟の新作ーーーというか、去年のアカデミー賞候補ですよ、しかも下手したら日本じゃビデオスルーだったそうじゃないですか、どうなってるんでしょうかでおなじみ『シリアスマン』の感想。

 観に行った映画館は前回同様ヒューマントラストシネマ渋谷。水曜日の1000円の日だったのでけっこう混んでいました。前方以外は満席。たしかシアター2番というところ、かなり変わった形をしていて、スクリーンの位置が相当高いので前すぎるとかなり見づらい。前の方が好きなぼくはなかなか席選びが難しいシアターであります。客層は若い男女が多め。場所柄的に20~30代の若い人がおおいですね。
 映画館の受付が知り合いの女の子でビビりました。


概要:『ファーゴ』『ノーカントリー』『オー!ブラザー』『ビッグリボウスキ』などなどのコーエン兄弟の09年の監督・製作・脚本・編集作品。音楽はカーター・バーウェル。
 1967年、アメリカ中西部ミネソタ州の郊外。平凡な人生を歩んできたユダヤ人の大学教授ラリー・ゴプニック(マイケル・スタールバーグ)。心配事といえば、大学が終身雇用を受入れてくれるかどうかと、13歳の息子ダニー(アーロン・ウルフ)が2週間後に行うユダヤ教の成人の儀式のことぐらい。しかし実際には、ラリーの知らぬところで家族はそれぞれに秘密や問題を抱えていた。そしてついには、ラリー自身にも思いも寄らぬ災難が立て続けにやって来た。落第点をつけた学生からは強引にワイロを押しつけられ、隣人は敷地の境界線を侵食し始め、挙げ句の果てに妻(サリ・レニック)からは唐突に離婚を切り出され、すっかり混乱してしまうラリーだったが…。
(”allcinema online”より抜粋)


 『3年B組金八先生』が最終回だとかで今1979年の第1シリーズを再放送していて、シリーズのファンである僕はビデオを撮って見ているわけだけど、このシリーズでは大きく受験戦争が取り扱われている。今は「受験戦争」とかあまり騒がなくなったなーなんて思うわけですが、かといって別に現状が変化したわけではない。ただ受験の大変さがある程度定着し、皆「そういうものだ」と受け入れてしまっているだけだ。
 『シリアスマン』はそんな「時が経って受け入れてしまう」という実に映画らしくなくドラマチックになりがたいテーマをコーエン兄弟独特のブラックなタッチで描いた作品である。

 本作は「え。あれはなんだったの?」という唐突な展開に対する当惑にあふれている。その当惑は最終的に「この映画って何だったの」って疑問につながる。しかし本作で描こうとしていたのはそのような当惑にあふれ、当惑だけで物事は過ぎ去っていくといったリアリティなんだと思う。


 物語というものは基本的に主人公のアクションによって進行していく。シナリオの教科書なんかを読めばだいたいそう書いてあるし、実際ほとんどの物語はそうできている。
 しかしあのひねくれ者のコーエン兄弟がそんな鉄則に素直に従うものだろうか。今までの作品だって十分怪しいものであったけれど、本作にいたってはまったくもって活躍させる気などさらさらないご様子、冒頭にある引用文で提示されるように、本作は何もしない男が何もしないままあるがままを受け入れるまでの物語なのだ。
 しかし現実世界はまさにその通り、今回の大地震でも痛感したことだけど、自分が何にもしなくても勝手に理不尽に不幸は降り注ぐし、因果応報なんてどこ吹く風、まるでコーエン兄弟の映画のような世界なのだ。


 映画は最初、亭主が連れてきた善良そうなユダヤ教のラビを、悪霊に違いないと勝手に憶測し、一方的にナイフを刺した行動力がありすぎる妻と、ただそのいきさつをオロオロしながら見ているだけの亭主、結局本当に悪霊なのかどうなのか分からずのまま痛がって帰ってしまうラビという昔話から始まる。
 これ、誰もが「前フリ」だと思う。例えばこのラビが本当に悪霊でそのこの夫婦の子孫に災いがふりかかるとか、まごまごし続ける主人公ラリーが最終的にはこの妻のようにガツンと行動力を示すとか…。
 だけどこれは本筋と何にも関係がないのだ。

 なんにも関係ないと言えば、物語中盤ラビがラリーに語って聞かせる、歯医者の物語。あるアメリカ人の患者の歯の裏に何故か彫ってあったヘブライ語の啓示の意味に歯医者が散々悩んだ挙げ句、特に解答が得られず、いつの間にか気にならなくなって普通の生活に戻ったという「だから何?」ってラリーも観客も皆が首を傾げてしまうヤマもオチも意味もない話。

 この無関係のエピソードが示す教訓は、「あまり気にしないであるがままを受け入れて行こうぜ」という、本作のテーマに通じるもの。だから冒頭のエピソードも本編とあまり関係なく、観客もいつの間にか映画本編の展開を見ているだけでいつの間にか忘れてしまっている人が多いと思う。


 ラリーは敬虔なユダヤ教徒であり大学講師を営んでいる「まじめな男」『プレシャス』の主人公もびっくりするほど、これでもかってくらい理不尽な不幸不運が彼には訪れるが、それに対して徹底徹尾最初から最後まで何もしない。
 例えば、アジア系の生徒から賄賂を渡されても受け取らず、その親から名誉毀損で訴えると言われてもビビるだけで行動せず、娘サラ(ジェシカ・マクマナス)から居候中の無職の兄アーサー(リチャード・カインド)をなんとかしてくれと言われても何もせず、妻から一方的に離婚を突きつけられても同意書に名前も書かないし、かといってよりを戻そうと努力することもなく、妻の不倫相手のブ男サイ(フレッド・メラメッド)の提案で家を追い出され一人モーテルで文句も言わず生活し、隣人と庭の境界線でトラブルになっても特に動かず、交通事故を起こしても特にそれがその後の展開に関係はなく、頼んでいない高額のレコードの請求をされるが払いもしなければ返品もしないし、無職の兄は賭博と男娼を買った罪で警察に捕まるけど呆れるだけでやっぱり何もしないし…、隣のエロい人妻とマリファナ吸って浮気!---と思えば夢だし、兄の国外逃亡を手伝って命を狙われた---と思えばやはり夢だし…。たった一つのささやかな願いであった大学への終身雇用の決定も最初から最後まで保留のまま。

 結局2時間ほどの本作でラリーがやったことは、大学でつまらない授業を繰り返し、テレビのアンテナ位置を直し、あとは数人のラビに悩みを相談するだけ。

 そのラビたちの回答もなんだか妙に的はずれな食い合わなさが感じられ、そこにコーエン兄弟らしいオフビートな笑いが生じるのだけれど、作品全体を見渡すとラビたちは意外に本作のテーマに即した事を語っていることに気がつく。
 例えば最初の下っ端のラビは「なんの変哲もない駐車場だって見ようによっては素敵に見える(すべては駐車場なんだ!)」という視点の変換によってやり過ごす術を教えているし、また前述のアメリカ人の歯科医の話をしたラビも同様。また最高位のラビは結局最後まで、うたた寝しているだけっぽいのに「忙しいから」とラリーに会わないけれど、会わないことで、どう足掻いても無理なものは無理ということを教えている。


 そうこうしているうちに、いや何もしないうちに、ラリーの周囲に起きた様々な不運はなんとなく去っていく。去っていってはいないのも多いけれど、それはそういうものとしてラリーの中で落ち着いてしまう
 ラストシーン、ラリーの息子ダニーの前には地獄からやってきたような巨大な竜巻が目の前まで迫ってきているし、ラリーには冒頭に受けていた人間ドッグの診断結果として「電話口では言えないこと」という電話がかかってくる。しかしそこで突然映画が終わる。

 唐突に始まるエンドクレジットに、観客は「え、あれはなんだったの」と当惑する。しかしそれはただそれだけ、なんでもないのだ。あの意味深な終劇の仕方や、冒頭の変なエピソードは別に論理的なつながり合いなどなくただそれが起こっているだけなのだ。観客がどう頭を使って意味を持たせようが無駄、時間が経てば観客の当惑も忘れ去られていく。
 本作はそのような映画らしくないリアリティを、映画らしいブラックユーモアをふんだんに使ったオフビートででもリズミカルな演出にて作り上げているのだ。


 以上、本作は「ただ時間が経つことで何もせずともそれに慣れてしまう」という、人間の地味ではあるがある意味たくましい処世術をコーエン兄弟らしいオフビートな笑いの連鎖で紡いでいった作品なのではないかと考える。
 こういった未曾有の大災害時に見ていて良かったと思える彼ららしいポジティブシンキングの表れだと思います。

 そんな映画にしづらい題材をここまで見せる作品に描くコーエン兄弟の手腕はさすがである。ひねくれているように見えて相当頑丈な基礎能力を持っていないとできない芸当だと思います。


 ところでこの作品「ユダヤ人」や「ユダヤ教」がかなり重要なキーワードとなっていたはずだけれど、あまりそういうものに詳しくない僕はそれに絡めて作品を鑑賞出来ませんでした。詳しい方、どなたか教えてください。


 けっこう人を選ぶ作品だし、つまらないという人の気持ちもすごくわかります。『アンチクライスト』よりは分かりやすいけれど、『白いリボン』くらい不親切です。そういう覚悟で臨んでください。個人的にはとてもお気に入りの作品でした。

 安藤裕子レベル。

 次回は久々のリクエスト受けていってきましたシリーズ。『マクロスF』の劇場版の2作目にて完結編、『劇場版マクロスF〈フロンティア〉~サヨナラノツバサ~』の感想きらっ!

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  1. 2011/03/15(火) 13:27:47|
  2. 映画サ行
  3. | トラックバック:7
  4. | コメント:1
<<『劇場版 マクロスF 恋離飛翼~サヨナラノツバサ~』は素晴らしき八百長だよ。 | ホーム | 『コリン LOVE OF THE DEAD』はスウィートでロマンティックな人肉がお好きだよ。>>

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