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『イリュージョニスト』は新しい1950年代だよ。

イリュージョニスト

 今回はシルヴァン・ショメ監督の『ベルヴィル・ランデヴー』以来8年ぶりの長編アニメ作品『イリュージョニスト』の感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ
 客層は老若男女さまざまといった調子でしたが、一人客が多かった気がします。割と混みあっておりまして、まぁ上映館が限られて100人程度しか入らないシアターでの上映だったってのもあるんですが。


概要:監督・脚色・キャラクターデザイン・編集・音楽はシルヴァン・ショメ。そもそもの「オリジナル脚本」というクレジットで『僕の伯父さん』シリーズや『のんき大将』『プレイタイム』のジャック・タチ。
 1950年代のパリ。かつての人気も今は昔、初老の手品師タチシェフ(声:ジャン=クロード・ドンダ)は、寂れた劇場や場末のバーを巡るドサ回りの日々。そんなある日、スコットランドの離島を訪れたタチシェフは、ひとりの貧しい少女アリス(エイリー・ランキン)と出会う。手品師を何でも叶えてくれる“魔法使い”と信じ、島を離れる彼に付いてきてしまうアリス。やがて、言葉も通じないながらも一緒に暮らし始めた2人。落ちぶれた自分を尊敬の眼差しで慕うアリスに、いつしか生き別れた娘の面影を重ね、彼女を喜ばせるべく魔法の呪文とともにプレゼントを贈り続けるタチシェフだったが…。
"allcinema online"より抜粋)


 本作はフランスの"クラシック"なコメディアンにして映画監督であったジャック・タチの遺した脚本を原作にしている。
 ジャック・タチ作品といえば、パントマイムはもちろんのこと、当時としては未来的なデザインの建築やガジェットの数々が印象的である。それは本作の途中で挿入される『ぼくの伯父さんの休暇』の1シーン(当時としては珍しかったであろう民家にある自動扉)でも確認できる。
 しかし当時は斬新であったであろうジャック・タチは今やもうレトロなコメディとして楽しまれている。そして古典名作と銘打たれてしまった結果、当時とはまるで違う印象を与え、ジャック・タチの思惑とはまるで違う感想を抱かれながら、しかしながら当時と同等かそれ以上の評価を得て残っていくのであろう。

 そして古典名作と銘打たれなかったこの世にあるほぼ全てのものはそのうち廃れて消え去っていく。

 『イリュージョニスト』はそのような廃れていく古きものへの惜しみない愛と哀愁と、一方で古きものに対する我々の態度への厳しい視点を描いたアニメーション映画である。


 舞台は1950年代末。手品師の主人公タチシェフ(ジャック・タチの本名)は"イリュージョニスト"と紹介はされるが、その手品は全てどこかで見たようなものであり、新鮮な刺激を欲するショーの世界ではこれっぽっちも受けやしない。もはや完全に消費されつくした芸なのである。

 で、タチシェフはさびれたスコットランドの漁村に営業に渡る。そこで手品も見慣れない村民たちに「新鮮なもの」として拍手喝采される。
 そこで登場するのがもう一人の主人公の少女アリス。タチシェフは彼女に生き別れになった娘の面影を見る。
 タチシェフのドサ回りについていくアリスは彼が憐れんで買ってあげた赤い靴をもらった喜びから、彼を無からなんでも出してくれる魔法使いのようなスゴ腕手品師と勘違いして、次から次へと新しいものを欲しがるようになってしまう。副職までしながらアリスの要求に応えていくタチシェフ。やがて新しいものを次々と追い続けるあまりかつて買ってもらった赤い靴など忘れてしまう。

 本作ではこの赤い靴やタチシェフに始まり、新たな時代についていけなくなったものがたくさん登場する。自殺しようとするピエロ、食べる事すらままならない腹話術師、そして質屋のショーウィンドにぽつんと座る腹話術の人形、野に放たれたタチシェフの商売道具のウサギ。

 古いものを振り返らず、ただ新しいものを要求し、消費し続けるアリスが、手品に見慣れてしまい感動を覚えなくなったとき、タチシェフは自分がもうこの時代に適した者ではないことと、自分がアリスに行なってきた事の過ちを知る。
 そしてエディンバラを去っていく列車の中で短い鉛筆を落とした少女に対し、「その鉛筆を拾ってあげると長い鉛筆に変わっていた」という手品を見せてあげることができたのにそれを行わずチビた鉛筆をただ拾って返す。タチシェフの手品はもう欲されていないし、なんでも新しいものがいいわけではない。
 我々はチビた鉛筆であっても絵や字は書けるし、古びたジャック・タチの映画でもきちんと楽しめることができるのだ。


 同じような過剰消費とモノへの愛着の対立は『トイ・ストーリー』シリーズでも描かれていたが、どんなに愛着があろうと形あろうと無かろうと万物はいつかは滅びる。新鮮な気持ちもどんどん色褪せていく。
 その中で人はどれだけ古びていくモノに新鮮な感動を持ち続けていられるのか。チビた鉛筆をいつまで大切にしていられるのか。

 その点において本作はどこぞの日本映画のようにただ古きものを良きものと懐かしんで消費するだけの映画ではない。

 タチシェフが去っていく際にアリスに残したメッセージは「魔法使いなんていない」である。
 ただ新しいものを欲しがるだけのアリスに対する老婆心ながらの忠告と、魔法使いでいようと手品の腕を磨きアリスに欲しいものを与えてきた自分のキャリアに対するピリオドととれるが、それに加え、「魔法使いなんていないんだから自分の頭を使っていこうぜ」といったようにも読めはしないだろうか。
 いい加えれば、万物は滅びていくけど、人の欲望は限りなく、しかしながら新しいモノには限りがある。ここにおいてただ受け身で消費していくだけではなく、モノに対し積極的に"自分で"考えて働きかけていくことが必要だと。
 つまりチビた鉛筆だってきちんと使えることを、使い古された手品だって見せ方次第ではまだ人に驚きを与えられるということを描く。

 そしてこの『イリュージョニスト』は、"クラシック"として楽しまれているかつての"イリュージョニスト"ジャック・タチ作品をただ懐かしむのではなく、思考と創造をもってして現代の世に新鮮な作品として作り上げた。

 もちろん、新しいものを否定しているわけではない。物語の終盤新しい二人が紡ぎ出した新鮮な恋はそれだけで美しい。その新鮮味がいつまで続くかは彼らの創造性次第なのであろう。


 以上『イリュージョニスト』は消費されつくされ、時代についていけず滅び去っていく古きものに対する哀愁と愛情をもってして、一方でそれが思考と創造次第では新鮮な輝きを放ち続けられるということを描いているのではないかと感じた。


 短い時間でサラリと見れるアニメーション映画でしたが描かれているテーマ性は深遠な思考を促します。よい映画でした。

 チャットモンチーのボーカルレベル。

 次回はもちろん初日に観に行ったぜ『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』の感想です。レッツゴー!

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/04/05(火) 00:21:22|
  2. 映画ア行
  3. | トラックバック:3
  4. | コメント:2
<<『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』は比類なき王道路線だよ。 | ホーム | 『ファンタスティックMr.FOX』は俺の野獣性がキバを剥くよ。>>

コメント

「自分の頭をつかっていこうぜ」のくだり前までは泣くかと思うくらい心に響きました。褒めてます
  1. 2011/04/06(水) 20:20:06 |
  2. URL |
  3. かみやま #-
  4. [ 編集 ]

お。おう。ありがとうよ。
  1. 2011/04/07(木) 15:15:31 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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