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『神々と男たち』で汝、隣人を愛せるかもしれないよ。

神々と男たち

 今回は2010年のカンヌ国際映画祭で次席にあたるグランプリを受賞した『神々と男たち』という映画の感想です。

 観に行った映画館はシネスイッチ銀座。映画の日だったこともありほぼ満席でした。公開してから結構経っているのでちょっと意外でした。会社帰りの30代以上の方が多めでした。


概要:監督・脚本は俳優としても活躍するグザヴィエ・ボーヴォワ(『ポネット』のお父さん役だそうです)。 
 1990年代。イスラム教圏の国、アルジェリア。山あいの小さな村に立つ修道院では、カトリック修道士たちが厳しい戒律を守りながら質素にして穏やかな共同生活を送っていた。彼らはイスラム教徒の地元民とも良好な関係を築き、医師でもあるリュックのもとには診察を希望する多くの住民が日々訪れていた。そんな中、内戦が激しさを増し、彼らの周辺でもイスラム過激派グループのテロによる犠牲者が出始める。修道士たちの間でも、避難すべきか村にとどまるべきかで意見が分かれ、修道院長のクリスチャン(ランベール・ウィルソン)にもすぐには結論が出せない。そしてついに、フランス政府から修道士たちへの帰国命令が出されるが…。
"allcinema online"より抜粋)


 僕はキリスト教でもましてやイスラームでもないし、ちょっとこの映画には縁遠いかななんて思っていたけれど、かと言って無神論者というわけではなく、仏壇を粗末にもできないし、お釈迦様やキリスト様の絵が描いてある絵葉書なんかは無造作には捨てられない。初詣には毎年行く。まあ日本人的宗教観の典型といったところであり、そういう中途半端に漠然と宗教観を抱いている我々に「宗教(特に一神教)とは何か」を考えさせるに本作はうってつけなのかもしれない。


 本作で宗教は様々な側面を見せてくる。

 例えば宗教は強い。
 印象的なシーンで、イスラーム過激派のテロリストたちが修道院に押し入って医者と薬を要求した際に、クリスチャンがキリスト教徒とイスラームが"隣人同士"であることを説き、暴力でしかものを語らないかに見えた彼らを理解させ引き上げさせるシーンがある。
 宗教は言葉だけで相互理解を促せるほど強力なのだ。
 ※イスラームの聖典『コーラン』にはキリスト教徒とユダヤ教徒は隣人と書かれている。本作でも冒頭でクリスチャンがコーランの研究をしている。


 一方で宗教は弱い。
 "非暴力"を貫く修道士たちは、宗教を理解しない人々(テロリストやアルジェリアの軍隊)の一方的な暴力にただ讃美歌を歌うくらいしか立ち向かうすべを持っていない。
 頑なに立ち退こうとも修道院内に警護の軍隊を入れようともしない修道士たちに、軍隊がヘリコプターで脅すシーンがあるが、悲壮なまでに無力である。


 また宗教は優しい。
 修道士たちはずっと物語の舞台となる山村でイスラームの村民たちと宗教の垣根を越えて触れ合いを続け、そこののどかで静かで健康的な生活の基盤とまでなっていた。
 それどころか彼らは次第に彼らの命を奪いかねないテロリストすら"隣人"として愛し診断したりする。


 しかしながら宗教は恐ろしい。
 終わりの見えない宗教戦争による犠牲者は何もアルジェリアやパレスチナに始まったことではない。キリスト教もイスラームも一神教であるがゆえに教えの異なる様々な宗教や様々な解釈を排斥し続けてきた。それによって命を落とした者が有史以来何人いることだろうか。
 本作でも前髪を出していただけで刺殺された少女や、自由恋愛をうたっただけで虐殺された女教師など痛ましいエピソードが多く登場する。


 そしてまた宗教はやはり強い。
 クリスチャンは命の危険にさらされながらそれでもその地に留まり続けることで、信仰とは日々の生活であることを見いだした。何気ない日々の生活を黙々と繰り返し、生きて死んでまた生きて死んでを繰り返すことが神をこの地に迎える唯一の手段であると。

 ここで少し脱線して宗教の原始的な成り立ちについて考えてみたい。
 古のベストセラー『ものぐさ精神分析』で岸田秀氏は、「人はいつか死ぬがそれを間に受けると気が狂ってしまう。それをごまかすために宗教やそれに代替するものが現れた」みたいなことを言っていた。前回の『わたしを離さないで』で臓器提供用クローン人間たちが嘘臭い噂を盲目的に信じようとしたのと同じである。信じなければどうにかなってしまう。
 宗教を武器にしているのは少々そういった原始的な形とは乖離してしまっているが、そもそもは宗教とは生活の手段であり、日常生活なくして宗教は成り立たない。しかしながら一方で日常生活を守っているのは宗教である。
 しこうして宗教は強い。


 最初は帰りたい者、残りたい者バラバラであった彼らも、"日常生活"を続けていくうちに居残るという意見に統一される。
 そして修道士たちは異教徒の人々の"日常生活"を守るため、避難せずその山村の修道院に居座り生活を続けた。
 それを決意した夜の晩餐で、ワインとパンを食しつつ、大音響で流れる『白鳥の湖』の中、笑い、泣き、考える彼らの目のアップ。その映像がおりなす緊張感と迫力はひたすら力強い。その力強さこそ、生活の元となる宗教のパワーではないだろうか。


 今もそこら中で起きている宗教戦争が、どうしてあるのか理解できない日本人も多いであろう。なんせこの国ではマリア様すら八百万の神々の一員にしてしまうのであるから。
 しかしこの映画によっていくらかはイスラームやキリスト教徒が何故に何百年と殺し合うまでにその神や教えにこだわるのか、何故死を目の前にして、それでも神を信じつづけるのか、その一端がもしかしたらわかるかもしれない。
 いや、この映画の原作となった実際にあった事件に様々な謎が残るように、ラストショット、連行されていく修道士たちがホワイトアウトして消えていってしまうように、「他者の信じるもの」など一生理解はできないかもしれないが。テロリストと修道士たちのように、もしかしたら少しだけ分かることができる希望もある。


 以上、本作『神々と男たち』は宗教の様々な側面を見せながら、如何にキリスト教やイスラームが生活と密着した宗教であるかを力強く描き、宗教のもつパワー故の危険性と、その一方で宗教が人々にとってかけがえのない存在である重要性を語り、それによってもしかしたら「他者の信じるもの」の理解に近づけるかもと感じた。


 不満点とは言いにくいのですが、"日常描写"が重要な本作、そのため前半をしっかり描きすぎてドラマが進まないのにちょっとダレてしまいました。


 "お勉強になる映画"という言い方も嫌いじゃないですが、"他者(他宗教)を理解できる映画"という点でオススメしてみたいです。ただ相当生真面目な映画なのでしっかりと気合い入れないと疲れますよ。

 小池里奈レベル。

 次回はソフィア・コッポラの新作映画『SOMEWHERE』の感想です。えええ、あんまりオシャレじゃないの!?


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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/04/11(月) 00:56:14|
  2. 映画カ行
  3. | トラックバック:5
  4. | コメント:2
<<『SOMEWHERE』はセレブの清貧論だよ。 | ホーム | 『わたしを離さないで』は無自覚に卑屈だよ。>>

コメント

あれおかしいな(笑)

4月11日なのにTBできますが・・・笑
まあそのうちできなくなるんでしょう。 とりあえずつけときます。
  1. 2011/04/11(月) 05:15:45 |
  2. URL |
  3. rose_chocolat #ZBcm6ONk
  4. [ 編集 ]

こんにちは。
なんかできちゃいましたね。すいません。
TBいつもありがとうございます。
  1. 2011/04/12(火) 02:09:38 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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『神々と男たち』 「々」の謎

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  1. 2011/04/11(月) 01:03:35 |
  2. 映画のブログ

神々と男たち

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  1. 2011/04/11(月) 01:52:37 |
  2. LOVE Cinemas 調布

【TIFF2010】『神々と男たち』(2010)/フランス

原題:OfGodsandMen/DESHOMMESETDESDIEUX監督:グザヴィエ・ボーヴォワ出演:ランベール・ウィルソンマイケル・ロンズデールオリヴィエ・ラブルダンフィリップ・ロダンバックジャック・エルラ...
  1. 2011/04/11(月) 05:14:15 |
  2. NiceOne!!

映画「神々と男たち」それでも神は沈黙を守るのか

「神々と男たち」★★★☆ ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、 オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ出演 グザヴィエ・ボーヴォワ監督、 101分 、2011年3月5日公開 2010,フランス,マジックアワー、IMJエンタテインメント (原作:原題:DE...
  1. 2011/04/16(土) 02:51:22 |
  2. soramove

『神々と男たち』

神に仕えし身にあらば、彼らはみな神々である。 しかしながら死する時は、人として死ぬであろう。 白鳥の湖の昂ぶる旋律にいざなわれし、神々の晩餐に。 『神々と男たち』 DES HOMMES ET DES DIEUX 2010年/フランス/120min 監督:グザビエ・ヴォーヴォワ ...
  1. 2011/04/20(水) 16:16:28 |
  2. シネマな時間に考察を。

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