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『ザ・ファイター』は俺たちがヒーローだよ。

the fighter

 今回は世のボンクラ男子に圧倒的支持を得ているのではないかと勝手に推測している『ザ・ファイター』の感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ
 アカデミー賞にノミネートされていたほどの話題作に関わらず、まるで客の入りはありませんでした。男性の一人客が多め。ここの映画館といえば外国のお客さんですが、やっぱり震災以降あまり見かけませんね。


概要:実在のアイルランド系ボクサー、ミッキー・ウォードとその兄のディッキー・エクランド波瀾のボクシング人生を映画化した伝記ドラマ。監督は『スリー・キングス』や『ハッカビーズ』のデヴィッド・O・ラッセル、製作は主演も務めるマーク・ウォールバーグ(この役のための肉体改造っぷりがすごい)。この作品で、クリスチャン・ベイル(この役のため歯と髪の毛を抜いたそうな)とメリッサ・レオがアカデミー助演男優&女優賞を受賞。
 アメリカ、マサチューセッツ州。低所得者の労働者階級が暮らす寂れた街、ローウェル。兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)は、一度は天才ボクサーとしてスポットライトを浴びたもののドラッグで身を持ち崩してしまい、今ではあのシュガー・レイ・レナードからダウンを奪ったというかつての栄光にしがみつくだけの荒んだ日々を送っていた。一方、対照的な性格の弟ミッキー(マーク・ウォールバーグ)もボクサーとして活躍するが、自分勝手な兄とマネージャーでありながらマッチメイクに無頓着な母アリス(メリッサ・レオ)に振り回され連敗続き。ミッキーの新たな恋人シャーリーン(エイミー・アダムス)は、悪影響ばかりの家族から離れるべきだとミッキーを説得するが…。
("allcinema online"より抜粋)


 基本的にスポーツ中継はあまり見ないのだけれど、ボクシング中継はたまに見ます。もちろん他のスポーツだってそうなんだろうけれど、スポーツ素人の僕にわかりやすい範囲で、極限までストイックに絞り込まれた肉体と精神をもって拳だけで優劣を競うそのシンプルさがとても好き。シンプルゆえに選手たちのドラマや葛藤も浮き彫りにされて、見応えがある。多分実に映画的なんだと思う。
 それ故にボクシング映画には傑作も多い。僕が例に何本かあげずとも何本も頭の中で想起されることだろう。
個人的にオススメボクシング映画は、ドキュメンタリーだけれども『モハメド・アリ かけがえのない日々』

 で、本作もそのようなボクシング映画クラシックに入れられていくのだろう。


 この作品のタイトル"THE FIGHTER"は誰を指しているのだろうか。もちろん主人公のミッキーは指している。かつて英雄だったが今はジャンキーに堕ちてしまったディッキーも指しているだろう。
 ぼくは多分口うるさい母親アリスや恋人シャーリーン、穏健になだめるだけの父親ジョージ(ジャック・マクギー)、何の役にもたたない伯母さんたちも"ザ・ファイター"なんだと思う。そこら辺を考えていきたい。

 本作は客観的な視点が多用されている。
 例えば冒頭、ディッキーの記録映画撮影のシーン。地味なミッキーに対してやたらと前にしゃしゃり出てくるディッキーや母親のせいでこの物語の誰が主役かよくわからない。
 また例えば伯母さんたちがうだうだとテレビを見ているシーンや家庭の不満を述べあっているシーンなどがやたら多くて、何についての映画かよくわからなくなる。
 また例えば視点がふらふらすることで、物語とは一切関係のない犬の散歩中のオジサンや、試合中そっぽを向いている女の子をフレーム内に取り入れてしまうカメラワークや、先走り気味の展開や編集は、観客が映像内に主観性を抱いてのめり込むことを拒否しようとする。
 また視点キャラクターとして用意したミッキーの恋人シャーリーンから見たミッキーの家族の胡散臭さ。

 ボクシングの試合もまた客観的描写が素晴らしいのだがそれは後述。

 これらの演出により本作は観客に強い客観性をあたえる。


 少し、話は飛ぶが、本作を語る上でのキーワードとして「家族」がある。
 シャーリーンの視点をはじめ、客観性を重要視した映像は、ちょっとゾッとするほどの家族の生々しさを描写する。例えるならば、『天才バカボン』のバカボン一家と、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス一家。
 バカボンのパパ視点で見たらバカボン一家は楽しく仲のいい家族だけれど、よそから見たらバカボン一家はレザーフェイス一家のように狂っていて不気味で恐ろしい。
 で、多分ミッキーの一家はその一員となればありふれた仲のいい家庭なのだろう。(この場合、恋人のシャーリーンや、アリスに仲間はずれにされているトレーナーのオキーフも広義の「家族」と捉えることにする)
 しかし客観的視点を与えたられた観客には彼らはいやに利己的に見える。自分の名誉や夢や家計や愛のため他者をないがしろにしているように見えてしまうのだ。
 彼らが「家族」を愛し「家族」のために行動しているのは伝わる。ディッキーが麻薬をやめたのも、ミッキーが一度はやめたボクシングを再開したのも、シャーリーンやアリスが口うるさくミッキーにこだわるのも全て「家族のため」。だが、一方で上記の理由にてアリスやディッキーの言動がひどく理不尽なことに思えてしまい、観客としては彼らが邪魔でしょうがなく思える。ミッキーの妨げ・敵対者にしか思えない。

 そのような中でずっと文句を言わずディッキーやアリス、恋人シャーリーン、父親ジョージ、トレーナーオキーフなどのメンツを潰さないように、皆の言うことを素直に聞いていたミッキーは、大家族の抗争の中で話題の中心でありながら自己主張をしない存在だった。何故ならば皆好きだし皆が正しいから。

 そんなミッキーだったが、シャーリーンと付き合うことで"客観的視点"を得て家族に不満を感じ出し、後半になって「これは自分のボクシングなのだ」と、「自分が主人公なのだ」と不満を爆発させてしまう。
 アリスは息子を愛する反面、どこかで家族の名声や金のために重荷を背負わせていたことを反省する。
 兄ディッキーも、弟のため弟のためと言いながら、弟に自分を重ねて弟の気持ちをどこかでないがしろにしていた自分を反省する。
 そして当のミッキーも弟のためにシャーリーンやオキーフにプライドを捨て頭を下げてまわる兄を見て、それが「自分の試合」ではないと悟る。家族皆でここまでやってきて、皆のために戦い、皆と一緒に勝つ試合。もう一度家族愛を大切にしようとする。(シャーリーンと抱き合っている中、オキーフへの謝罪のため、遠くの方へと小さくなっていく兄を見ているシーンが印象的)

 言い換えれば、観客が様々な視点を体験し、登場人物たちもそれぞれの気持ちを理解すると、家族がそれぞれの家族のためにアクションをとる。
 すると今まで客観的な視点を重視していた映像が、急に主観的に見えてくる。なぜならば、観客は物語を見ていく中で登場人物の気持ちを理解し、ミッキーのように彼らを愛し始めたからだ。

 そしてディッキーの活躍でついに家族が一致団結した時、物語は今までになかった盛り上がりを見せ強烈なエネルギーでクライマックスに向かう。(クライマックスの世界戦にてミッキーの入場曲として流れるのはホワイトスネイクの“Here I Go Again”だ!燃える!!)


 ここで先述した"ボクシングの試合描写の客観性"について解説したい。
 本作のボクシング描写は誤解をおそれずに言うならばまあ盛り上がらない。

 例えば「ウォーリアーVS(対戦相手)」とテロップが出るシーンの映像。対戦相手が変わって焦るミッキーに対してヘラヘラと笑うアリスのショットをバックにしていたり、シャーリーンの家に襲撃をかけた親戚軍団が"F"から始まる四文字言葉を叫びながら車にすし詰めになって帰るショットや、ミッキーが試合前でトレーニングをしているのを尻目に寝間着で寝転んで雑誌を読むシャーリーンのショットをバックにしてテロップが現れる。
 またせっかく再起を臨んだ試合なのに控え室から出てリングに向かう途中で相手ボクサーに出くわしてしまい、気まずく「幸運を」なんて言ったり、先に書いた試合中そっぽを向いたりすっころんだりする女の子のショットがあったり、いきなり4Rの途中で見せて一瞬で試合を終わらせてしまったり…。
 まるで観客が盛り上がることを拒絶しているような描写である。


 しかし家族がようやく一致団結した世界戦だけは違う。

 結局はボクシングの才能に恵まれなかったディッキーや、マネジメントなどまるで出来ていなかったアリス、偉そうな口をたたく割には何も成し遂げていないシャーリーン、ただミッキーについているだけだったジョージやオキーフのように、表舞台に立てるものと立てないものがいる。
 ボクシングという競技はひたすら殴るのではなくチェスのような高度な駆け引きと、肉体を極限まで酷使して全身を用いて戦うためのメンタルのタフネスが必要である。もちろん他の競技もそうなのだろうが、ボクシングは前述の理由にてそういった面がわかりやすく感じられる。
 その点でボクシングだってチームワークと言え、ミッキーが皆の生活と夢とを支え、周りの「家族」がミッキーを精神的にも肉体的にも支えるとき、ミッキーの強さはボルテージマックス最大級のパワーを得る。
 冒頭に書いた理由によりただでさえボクシング映画って面白いのに(※)、そもそもはバラバラにいがみ合っていた皆の力を結集して倒すなんて少年マンガ的王道展開を見せられては感動せずにいられるものだろうか。

 家族全員で勝ち取った世界戦。その点において本作のタイトル『ザ・ファイター』は家族全員を指しているのではないかと考えるのだ。
※そして本作のボクシングシーンは、テレビ中継のようなスピーディーでドキュメンタリータッチな描写(これも一緒の客観的視点か)と、歌舞伎のようなスローモーションを多用したケレン味のあるキメのショットを交互に描くことで緊張感と臨場感を備えた素晴らしい演出になっている。


 ラス・メイヤーの映画のような強烈で安っぽく俗っぽく中年女性の生々しさを演じたお母さんや親戚軍団が素晴らしい。と思ったらミリッサ・レオは『フローズン・リバー』のあのお母さんですね。いい加減俳優の名前覚えないと。
 あと『ダークナイト』でジョーカーに華を奪われ、『3時10分、決断のとき』でも敵役のラッセル・クロウに華を奪われたクリスチャン・ベール、今回は敢えて脇役で弟に華を譲る役に徹したら今度は主役の華を奪ってしまうという現象になんだか感慨深いものがございます。

 『ファンタスティックMr.FOX』でも語られていた人間の根源的な集合体「家族」を基本に、デヴィッド・O・ラッセルらしくいい子ちゃんにならずにエキサイティングなボクシングを描いた素晴らしい映画だと思います。

 森田涼花レベル。

 次回はまた韓国がこんな楽しそうなの撮ってるよ『ビー・デビル』の感想。

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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/04/12(火) 16:30:53|
  2. 映画ハ行
  3. | トラックバック:8
  4. | コメント:0
<<『ビー・デビル』を見て郷に従いましょうよ。 | ホーム | 『SOMEWHERE』はセレブの清貧論だよ。>>

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