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『ビー・デビル』を見て郷に従いましょうよ。

ビー・デビル

 今回は監督お得意のエログロど田舎サスペンス『ビー・デビル』の感想です。
 どうでもいいけどタイトルといい、内容といい、公開時期といい、同じ韓国産なことといい『悪魔を見た』と被り過ぎですね。

 観に行った映画館はシアターN渋谷。水曜日の安い日だったので満席でした。客層はいつものシアターNクオリティおばあちゃんの喉元に鎌が刺さった瞬間「おおおっ!」と声を上げる中年男性たちです。


概要:監督はキム・ギドク監督の下で助監督として経験を積み、これが長編デビューとなるチャン・チョルス。脚本は『義兄弟』のチェ・クァンヨン。
 ソウルの銀行に勤める独身女性ヘウォン(チ・ソンウォン)は都会での生活に疲れ、幼い頃に過ごした思い出の島へとやって来る。そこは、住民たった9人だけが暮らす絶海の孤島。笑顔で出迎えてくれたのは幼なじみのキム・ボンナム(ソ・ヨンヒ)。しかし、島から一度も出たことのない彼女は、その笑顔の裏で地獄のような苦しみに耐えていた。やがて、そんなボンナムから助けを求められるヘウォンだったが…。
"allcinema online"より抜粋)


 「郷に入れば郷に従え」という言葉があるが、なかなか難しい行動である。特に、ちょうど春だけれど、新しい環境に放り投げられた時、今まで自分が培ってきたものや習慣を無視する行為など自分のエゴが許さないからだ。

 本作『ビー・デビル』はそのような郷に入っても郷に従わないエゴイズムがどんなに恐ろしい事態を引き起こすかを描いた、「空気を読む」ことが重要視される現代におけるサスペンスホラーである。


(1)本作のキーワードに「掟」がある。島のリーダー的存在の老婆は、都市社会の一般的な倫理観を島に持ち込もうとした主人公に「その場所にはその場所の掟がある」という。

 そんな中本作の主人公ヘウォンは「掟」に対して非常にズルく(しかしとても一般的に)付き合う。
 例えば銀行の仕事では規則(掟)第一で、決して情に流されてルール違反に目をつぶったりはしない。だって仕事など規則というレールに沿って機械的に処理していかないと面倒くさくて仕方がない。
 一方で冒頭で目撃した暴力事件に関しては目をつむる。わざわざ暴行されてる女性を助けたり、規則に従って警察に報告などしたら報復が恐ろしい。

 このように「掟」に対して非常に曖昧でズルい(しかし最も"空気を読んだ")立ち位置をとる。
 しかし都会はあまりに人が多すぎて「空気を読む」という「掟」に捕らわれることに疲れてしまう。

 だからへウォンは"「親切」な人がたくさんいる"田舎の島「無島」に行く。そこならばおそらく空気を読む必要はない。都会者はチヤホヤされるだろうし、子供の頃に会ったきりなのにやたらと信望してくれるボンナムもいる。
 田舎をそんな感じでバカにしているものだから決してそこの「掟」に従おうなんてしない。空気など決して読まない。彼女はそれを"エゴイズム"であるとは気づかない。この映画がもしこのようなテーマでなかったら観客も気がつかないかもしれない。
 キレイなヒラヒラした服を着て、抜群のスタイルでもって彼女の前でヨガをするのがどれだけボンナムの無垢な感情と汚れきった肉体を刺激するかも知らず、遠慮なしに「都会者の私」をエゴイスティックに披露する。
 このように都会においては"掟"に対し非常に敏感に立ち位置を変えていたヘウォンだが、無島ではまるで空気を読もうとしないのだ。


(2)続いて物語は都会と田舎のそれぞれの欲望と「掟」の関係についても描く。
 大都会ソウルは人口やモノが多いゆえに、欲望が拡散される町である。冒頭の暴漢はいきすぎた例であるが、いくらでも外に向かって発散できる。
 それに対して人口がたった9人しかいない無島は欲望を内に発散する他ない。それゆえ性や暴力を身内へと向かわせる。そうやってこの島は保たれてきた。

 そして食・睡眠・性・金・名誉・知識、様々な欲をコントロールしてコミュニティを保つのが「掟」の第一義ではなかっただろうか。

 そのような理由で、「掟」により他の島民の性や暴力のはけ口にされるボンナム。これで無島のコミュニティは保たれてきたが、ボンナムの欲望は発散のしようがなくより内へ内へと向かう。豚のようにバカ食いをする。

 ボンナムには悲惨すぎる生活であり、へウォン視点ではたしかに目を背けたくなるのだが、案外ボンナムはケロリとしている。それが彼女の無島での何気ない日常であったからだ。
 しかし彼女の欲望のダムは、へウォンが無島に到着し、都会の香りを振り撒いたことで崩壊をはじめる。

 都会に憧れたボンナムに訪れるあまりに悲惨な事件。しかしながら悲しみにうち震えながら彼女は我慢する。我慢して我慢してむちゃくちゃに働く。
 それなのに無島の太陽は我慢なんてどこふく風、思うがままに輝いている。だからボンナムは発散したのだ。へウォンが冒頭しつこいお婆さんにキレたのと同様の理由で。欲望を発散するボンナムは恐ろしくも、へウォンがかすむほどの色気がある。

 ラストショット、横になるへウォンのシルエットが無島に重なる。登場人物たちの世間話から察するに本作に登場する老女たちもまた若い頃男たちに虐げられていたそうだ。無島と主人公のシルエットが重なる意味は、現代的な視点では許し難く考えられないことではあるが、しかし女性がそうやって虐げられて我慢することでこの無島は保たれていたということであろう。ある意味女性に守られている島。それが無島の掟だ。
 しかしたった一人の若い女性(ボンナム)が我慢できなくなってしまった。掟を破ってしまった。このことが直に村の崩壊に繋がってしまったのだ。


(3)事件はへウォンが掟を破ったことから始まり、ボンナムの掟破りで終わる。
 始まりの掟破りとは、へウォンが幼い頃ボンナムを都会に連れて行くという約束(掟)を破っていたこと。更に20年にも渡る彼女の手紙を読まずに捨て続けたこと。
 そして娘を亡くしたボンナムと娘を殺した島民たちどちらに付くか尋ねられた時、ここに来て"空気を読んで"多勢を選んでしまった。
 そして前述の通り彼女にエゴイスティックに都会を見せびらかした。
 確かにデビルになったのはボンナムだが、ボンナムの許し難い悪意はへウォンの「郷に入っても郷に従わない」という無意識的で邪悪なエゴイズムに当てられたものである。

 そしてボンナムに文明への憧れの萌芽を芽生えさせたのは、かつてへウォンが忘れていったリコーダー(文明)であり、無島最後の生き残り彼女にとどめをさしたのも文明の象徴リコーダーであった。


 以上、本作『ビー・デビル』は郷に入ったら郷の掟に従うこと、その掟を見誤らないこと、それを間違うと恐ろしいデビルを生み出し、一つの文明を滅ぼしてしまう。そのようなことを描いていたんだと思う。
 しかし案外これは映画の世界に限った話ではありませんね。つまんないエゴなんか意固地になっててもロクなことない気がします。


(4)不満点はカメラワークがちょっとダサかったかなって。低予算が丸出し。まあそれが野暮ったい無島を描く味にもなっているのかな。
 わざわざ比べるのもアレですが、『悪魔を見た』に対して物語性は重厚でしたが、ゴア描写はそこまででした。

 「欲望と小規模コミュニティ」を描いた似たような韓国映画『黒く濁る村』の村人たち同様、汚く汗臭く野暮ったく生々しい俳優さんたちがとても良かったです。

 前田敦子レベル。

 次回は神聖かまってちゃんと『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督というものすごい組み合わせの、なんだかヘンテコな映画です。『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』の感想。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/04/13(水) 01:42:22|
  2. 映画ハ行
  3. | トラックバック:6
  4. | コメント:0
<<『劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ』は「クソ」な応援ソングだよ。 | ホーム | 『ザ・ファイター』は俺たちがヒーローだよ。>>

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ビー・デビル/??? ?? ??? ??

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  1. 2011/04/13(水) 01:49:16 |
  2. LOVE Cinemas 調布

『ビー・デビル』

(英題:Bedevilled) またまた、ゾンビものっぽいタイトルだけど、 えっ、これって韓国映画ニャの? 「そうなんだ。 それもはやりの残酷バイオレンスね。 今回は、ソウルの銀行に勤める独身女性へウォンが トラブル続きの都会生活から逃れるように、 子供のころに暮らし...
  1. 2011/04/14(木) 11:41:38 |
  2. ラムの大通り

ビー・デビル・・・・・評価額1700円

またまた韓国映画界から、鮮烈な才能がデビューした。 絶海の孤島で起こった、凄惨な大量殺人事件。 犯人は島で生まれ育った一人の女性、キム・ボンナム。 一体、犯行の動機は何なのか、ボンナムはなぜ“悪...
  1. 2011/04/14(木) 13:51:02 |
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映画「ビー・デビル」のどかな小島の鮮血ドバッ!の惨劇

「ビー・デビル 」★★★ ソ・ヨンヒ、チ・ソンウォン 出演 チャン・チョルス監督、 115分、2011年3月26日公開 2010,韓国,キングレコード (原作:原題:Bedevilled )                     →  ★映画のブログ★              ...
  1. 2011/05/27(金) 00:24:41 |
  2. soramove

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BEDEVILLED/10年/韓国/115分/サスペンス/R18+/劇場公開 監督:チャン・チョルス 出演:ソ・ヨンヒ、チ・ソンウォン、パク・チョンハク <ストーリー> 美しい孤島を舞台に、ひとりの若い女性に日常的に行われていた虐待と、それをきっかけに起こる虐殺事件を...
  1. 2011/11/13(日) 01:35:48 |
  2. 銀幕大帝α

ビー・デビル

いやぁ、ようやく観れました^;観れるようになる経緯がまた大変でした。 「チェイサー」で悲惨な末路を遂げる役柄だったソ・ヨンヒさんが、一転、田舎の泥臭い女性を演じています。このソ・ヨンヒさんがまたとんでもない演技をみせてくれました。 このボンナムは、村の...
  1. 2012/02/10(金) 08:40:29 |
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