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『まほろ駅前多田便利軒』は都会の中のぬるいオアシスだよ。

まほろ駅前
 今回は三浦しをん原作で『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の大森立嗣監督作品『まほろ駅前多田便利軒』の感想だい。
 観に行った映画館は吉祥寺バウスシアター。月曜日のメンズデーで1000円で見て参りました。公開間もない割にはほとんどお客さんはいませんでした。男性客が数人と、女性の方が3人ほど。みな20代~30代といったかんじ。


概要:原作は第135回直木賞を受賞した三浦しをんのベストセラー連作短編集。監督・脚本は大森立嗣、音楽はくるりの岸田繁。
 東京のはずれ、まほろ駅前で便利屋を営むしっかり者の青年、多田啓介(瑛太)。ある日、中学時代の同級生、行天春彦(松田龍平)と出会う。見るからに風来坊然とした行天は、いきなり“今晩泊めてくれ”と言い出す。一晩だけと渋々了承した多田だったが、結局そのまま居座られ、奇妙な共同生活が始まってしまう。そんな2人は、まほろに暮らすひとクセもふたクセもある依頼者たちを相手に、飼い主の居なくなったチワワの引受先探しや、生意気な小学生・由良(横山幸汰)の塾の送迎といった仕事を淡々とこなしていくが…。
("allcinema online"より抜粋)


 この映画を見ていたら『傷だらけの天使』『真夜中のカウボーイ』『スケアクロウ』などを思い出した。それらの作品の共通点はどれも、大都会にゴミクズのように扱われている友情ともホモセクシャルともとれない男二人の物語という点である。

 大の男二人がなぜ共に生活するのかというと、彼らは大都会の中で孤独であったからだ。
 本作『まほろ駅前多田便利軒』でいえば、多田は幼い娘を受け入れつつもどこかで大切にできなかった故に亡くし、その罪悪感に苦しみ誰かを愛しそれに感謝されることを望み、また一方で行天は両親からの虐待を受けた過去を引きずり自分は誰からも愛されていないと思い込み孤独に苦しんでいた。人が多い大都会ゆえに人との摩擦が起こしてしまう「孤独」。要は両者ともに誰かに必要とされたいという願望を抱いている。
 冒頭、飼い主に置き去りにされ一生懸命生きようとプルプル震えているチワワに対し多田が過剰に感情移入したのも、親から愛されていない小学生由良公の犯罪をなんとか阻止しようとしたのもそれ故だろう。


 そしてその寂しい傷を舐め合うように多田と行天は同居し、他の孤独な犬、小学生、娼婦を助けていく。
 本作の冒頭でまほろ町からは誰も抜け出せやしないといった類のナレーションが入る。彼らは人口密度の高い都会ゆえに傷ついたのだが、しかしながらその傷は都会で人と触れ合っていなければ癒せない、だからこの町から抜け出せないのであろう。

 誰かに必要とされその人を助けたい多田たちと、自分を愛してくれる誰かに頼りたかった由良公の気持ちがようやく素直に表現された際のセリフ「餃子食べていいですか?」にはぼろぼろ泣いてしまった。


 さて、ここからが少し不満点なのですが、冒頭に例に出した『真夜中のカウボーイ』『傷だらけの天使』は、ゴミクズゆえに結末にて相棒は風邪をひいてボロ雑巾のように死んでしまう。いつまでもヌルい傷の舐め合いをやっているだけでは『ヒーローショー』『冷たい熱帯魚』のように崩壊が訪れてしまうのだ。
 ここにおいて本作の行天は、作中風邪もひくし、終盤死にかけるが、結局生きているし、両者の共同生活も限界が見えるが、結局なあなあでまた共同生活を再開してしまう。

 そもそも本作に登場する主人公たちを傷つけた「他者」はなんかみんなヌルいのだ。娼婦もヤクザも麻薬の売人もちょっとキレた若者も皆が皆結局いい人なのだ。
 本作に"厳しい現実や他者"など実はセリフ以外に描かれていなく、傷を舐め合ってくれる可哀想で優しい俺と他者しか描かれていないのだ。

 同じ大森立嗣監督作品『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の結末で悲壮に自殺しちゃうのはただの現実からの逃げだと文句をつけた当ブログですが、この二人の共同生活再開というぬるま湯への回帰にもなんだか似たような不満を感じてしまった。
 まあ『けいおん!』的な、変わってしまう我々に対しての変わらないし終わりもしないヌルい日常への郷愁ととれば、「まほろ町」というどこか間の抜けたイントネーションを持つ箱庭的かつ幻想的な町が持つ現実とは隔離されたファンタジー空間が活きてくるし、それはそれでまぁ映画らしいかなとも思うのですが、そういうヌルい日常が揺らいでしまった震災以降となっちゃそういったテーマも説得力がないというか、なんかダサい。そこがちょっと不満。

 そんな日常性のヌルさを演出する日本映画お得意の緩いユーモアは食傷気味ではあるけれど嫌いではありません。松田龍平と瑛太の演技合戦も「ザ・最近の日本映画」てな感じで見飽きたりもしますが嫌いじゃありません。


 以上、『まほろ駅前多田便利軒』は、大都会の中でゴミクズのように他者から愛されず必要ともされない人間同士の傷の舐め合いという旧来的なテーマを描いているが、一方でまほろ町という閉ざされたファンタジー的舐め合い空間から抜け出せないという結末が一方で終わらないヌルい日常という現代的な現実逃避を表現していたと思う。

 あと「多田便利軒」の看板のボロさがとても良かったです。
 くるりファンなので音楽もとても心地良かったです。


 先述の結局ぬるま湯で満足しているという不満点はもしかしたら続編(もしあったら)なんかで解決されるのかもしれませんね。

 岩田さゆりレベル。

 次回は話題作です『ブルーバレンタイン』の感想じゃけんのう。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/03(火) 02:09:26|
  2. 映画マ行
  3. | トラックバック:7
  4. | コメント:6
<<『ブルーバレンタイン』は「本当にあった怖い話」だよ。 | ホーム | 『孫文の義士団』は日常的な大事件だよ。>>

コメント

ヌルさ

面白い映画でした。私は役者の顔ぶれから『アヒルと鴨のコインロッカー』なんか連想してしまいましたが。
ヌルさという点でいうと、エンドクレジットは微妙かもしれませんね。あそこでみんな徹底していい人になっちゃうのですが、もう少し辛辣な方が後を引いて良かったのかも知れません。
  1. 2011/05/03(火) 02:49:30 |
  2. URL |
  3. ナドレック #cxq3sgh.
  4. [ 編集 ]

ナドレック様

 こんにちは。
 原作は未読なのですが、読んだ人いわくヤクザや柄本佑くんが善人に描かれるのもある程度説得力があるそうな。読まれました?
 そういえばあの映画だけじゃヤクザをあそこで絡ませてきた意義がよくわからないです。

 原作は続き物だし、もうちょいハードな展開に今後なっていくのかな?
  1. 2011/05/04(水) 06:35:56 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

一番ぬるくないのは誰か

映画の中で一番ぬるくないのは誰かと言ったら多分、最後まで子供に関心を持ってなさそうなそぶりの塾送迎の親であり、映画には出てこないけど行天の親であり、クローズアップはされないけどチワワを捨てた親である。
この親子断絶の物語の中で自ら子供を愛しきれなかった多田だけが親子関係に幻想を持ち、修復しようとする。その結果の一つの表れが血のつながりのない柄本佑親子であり、血のつながりのない娼婦とチワワだ。だから多田は赤ん坊をおんぶして仕事する弁当屋を信頼する。子供と関係が良好そうである行天の元妻を責める事もない(ハタから見れば行天は利用されてるだけ)という解釈はどうでしょう?
  1. 2011/05/04(水) 13:44:07 |
  2. URL |
  3. ふじき78 #rOBHfPzg
  4. [ 編集 ]

>ふじきさま

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 
 親子関係が全てでは無いにせよ重要な要素になるってのは、その通りなんだと思います。

 その関係性において確かにヌルくない存在はいるのですが、行天の親は出てこないし、チワワの飼い主はまほろ町の外に住む。この二者は結局、映画の外側においやられてしまってるんですね。で、由良公の母親は別にそこまで悪というわけではない。許容範囲。
 結局、まほろ町という世界が他者性を排除しようとしているんですね。優しいだけの場所。で、そこにおいて主人公たちの行ないが、町が、この映画が他者性をあまり認めていない。それがちょっと不気味に思えてしまったんです。
  1. 2011/05/04(水) 18:23:37 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

原作は

原作は読んでいないのですが、すごく面白そうですね。
映画では、エンドクレジットでいきなり由良公と母親が仲良く手を繋いでいたのでガクッと来ましたが、原作ではそこらへんの書き込みもあるのでしょうか。
とりあえず町田が住みやすそうな街であることは判りました:-)
  1. 2011/05/05(木) 03:10:35 |
  2. URL |
  3. ナドレック #cxq3sgh.
  4. [ 編集 ]

>ナドレックさま

 確かにあのエンドクレジットはなんだかいい加減でしたね。
原作はいわゆる「ボーイズラブ」が好きな方々にファンが多いそうで、読めばそういうホモソーシャル的な視点での楽しみ方ができるとか。
ナドレックさんにオススメいただいた『忠臣蔵』の本もまだ読んでいないありさまなので、我が家に大量に積まれた本を片付けたらば原作にもチャレンジしたいと思います。
  1. 2011/05/06(金) 04:47:23 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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