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『ブルーバレンタイン』は「本当にあった怖い話」だよ。

ブルーバレンタイン

 今回は各所でやたら話題、町山智浩さんなど今年度ベストとまでおっしゃっている『ブルーバレンタイン』の感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズシャンテ。話題作ということでけっこう混んでいました。男女ともに若い一人客もしくは同性同士といった方が多かったですが、内容を知ってか知らずかカップルでやってくる強者も。僕にはちょっと勇気がありません。


概要:2010年のアメリカ映画。監督・脚本はデレク・シアンフランスという人。
 かつてはあんなに愛し合っていた結婚7年目の夫婦、ディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)。かわいい娘フランキー(フェイス・ワディッカ)と一緒に暮らしながらも2人の間の溝は深まるばかり。上昇志向が強く、努力の末に資格を取り、病院で忙しく働くシンディにとって、朝から酒を飲み、まともな仕事に就こうとしないディーンの無気力ぶりが歯がゆくてならない。一方のディーンには、シンディがなんでそんなに多くを求めようとするのかが分からない。お互いに不満と苛立ちばかりが募ってしまう。やがてディーンは、危機に陥った夫婦関係を修復すべく、気分を変えようとシンディをラブホテルへと誘うのだが…。
"allcinema online"より抜粋)


 彼女と付き合いたての頃を思い出すと、何でもかんでもロマンチックでキュートで可笑しかった気がする。オナラをしてもネズミの死体にびびってもデート中下痢でお腹をくだしても、なんだかロマンチックだった。
 逆に時が経てばちょっとしたレストランに行っても、ディズニーランドに行ってもなんとなく生活臭が漂ってロマンチックになりにくい。
 おそらく長年付き合っている夫婦やカップルはどこも如何にしてロマンスを保つかに頭を悩ませているとは思うが、まあ簡単なことではないのだろう。

 本作はそうやって地味に深まっていく年月、生活、ひずみ等そういったものが―――普通の恋愛映画ではその恋愛の終了に決定打とはならないものだが―――現実では決定打となってしまうという事を、真摯に残酷に描いた作品であると思う。


 本作の二人の恋人たちは実は結婚前と結婚後でなんら変化はない。夫ディーンは少しハゲて太ったけれども今でもユーモラスでワイルドで優しくていつでも王子様を演じていられる男性だし、妻シンディはやっぱり少し太ったしシワも増えたけど、知的で面倒見がよくセクシーでチャーミングな女性だ。
 現在の彼らは、かつて彼らが恋をしたお互いと、もう一人愛すべき娘がいるという点以外、ほとんど変わっていないのだ。

 しかしながら、二人の関係は過去とは決定的に異なってしまっている。例えばディーンのロマンチック(子供っぽいともいう)な悪ふざけが過去パートでは恋愛を盛り上げる要素であったのが、現在パートではただシンディの神経を煽るだけだ。また例えばセックス描写、過去ではクンニリングスですらオシャレでロマンチックだったのに、現在ではどんなに雰囲気を盛り上げようと頑張ってもシンディはマグロ状態、下手したらまるでレイプである。女性にあそこまで生理的に嫌悪感を感じられた顔をされると、男性は何もできない。

 現在と過去の違いを描く描写は見事で、例えばよく取り上げられているが、二人の役者は希望にキラキラ光っていた結婚前と、5年後の生活臭でギトギトになった結婚後をうまく演じているし(撮影期間は3週間しか離れていないらしい)、結婚前パートの緩やかな編集や暖かい色調、荒い画素や手持ちカメラは集団リンチのシーンですらノスタルジックなのに、現在パートでは冷たくエッジが効いた色調や編集、カッチリした機械的で画素の細かい映像になっている。そのことで二者の関係の変化がうまく感じられる。
(ライムスター宇多丸氏『シネマハスラー』で言っていた二人の主人公の関係や心境の変化を、立ち位置や構図の変化で表現しているという指摘は見事。気がつきませんでした)

 同じ二人が似たような行為をしているのに、何故こうも違ってしまったのか。


 終盤二人の間の娘フランキーは実はシンディが以前の恋人ボビー(マイク・ヴォーゲル)との間で行った最後のセックスでできた子供であったことが明かされる。
 ディーンはそれを知ったうえでシンディを妻にし、自分の本当の子供ではないフランキーにも限りない愛を注ぐ。
 しかしシンディはそれが重荷だった。自分の勝手な妊娠で、才能豊かな夫の将来を独占してしまったこと、本当の子供ではない娘に対して良き父親であり続けるディーンに。

 一方でディーンも、中卒の自分が大学を出て医者を目指していた妻シンディに適しているのか、中流家庭で育った彼女が下流以下の環境で育った自分に釣り合っているのか、そういったコンプレックスは感じていた。
 またシンディは夫のようにその怒りやイライラを理屈で説明できない性格だし、ディーンは幼稚な理屈を夢想混じりで語る。
 他にも数年の日々は様々な細かい細かい不満を積もらせていく。しかしそんなのは些細な問題にすぎない。それが破局の原因には、少なくとも従来の映画ではなりえない。

 何が悪いというわけではない。だが、その細かい塵の山が二人の間の溝を決定的に開いてしまったのだ。

 他者と他者が家族となって共に生活するという事は映画のように単純なことではないのだろう。それは浮気をしなければ大丈夫だとか、愛があれば大丈夫というわけではない。この映画の最後、カッとなって「離婚よ」というシンディとそれを受けて結婚指輪を茂みに捨ててしまうディーンのシーンがあるが、すぐに狼狽し二人で指輪を探すシーンがある。もしかしたら二人は最後まで愛し合ってさえいたし、何しろ二人には愛娘フランキーがいる、そんな愛をもってしても二人は別れざるを得なかった。
 長年付き合ったカップルが別れたとき、その理由が不明瞭だったりする。愛という言葉の持つ力が重すぎて見失いがちだが、それ以上に日々の生活がつもらせていく不平不満の塵は重い。それは言語化することなど到底困難な不明瞭な塵だ。
 二人の破局はむしろカラッとした苦痛からの解放にすら思えてしまった。運命的にすら思えたあんなロマンチックな出会いだったのに…。

 以上、『ブルーバレンタイン』は見事な演出や構成によって言語化できない他者と他者の関係を紡ぐ不確かな何かがぷつっと千切れる瞬間を描いた名作だと思います。

 冒頭彼女と一緒に観に行けないとか書いたけれど、現実を見据え二人の絆の地盤を盤石にするにはもしかしたら一緒に観に行くといいのかもしれません。

 北乃きいレベル。

 次回はいつぞやの『GANTZ』の続編、『GANTZ:PERFECT ANSWER』の感想です。読んでくだちい。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/04(水) 06:53:40|
  2. 映画ハ行
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  1. 2011/06/01(水) 10:45:52 |
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