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『メアリー&マックス』は素晴らしき差別主義の世界だよ。

メアリー&マックス

 今回は評判のオーストラリア産クレイアニメーション『メアリー&マックス』の感想です。

 観に行った映画館は新宿武蔵野館。1000円の映画の日に行ったら30分前でしたが、案の定満席。また立見だよ…。最近武蔵野館は最前列か立見ばかり。もうちょいサービスデイ増やしてほしいです。客層は若者が多め。ゴールデンウィークということもあり、友達連れカップル連れが多かったです。


概要:2008年のオーストラリア映画。監督・脚本・プロダクションデザインは『ハーヴィー・クランペット』のアダム・エリオット。
 オーストラリアのメルボルンに住む8歳の少女メアリー(声:トニ・コレット)。友だちのいない彼女は、アメリカの見知らぬ誰かに手紙を書こうと思い立ち、分厚い電話帳から変わった名前のマックス・ホロウィッツさん(声:フィリップ・シーモア・ホフマン)を選び出す。当のマックスは大都会ニューヨークに暮らす肥満体の中年男。他人とのコミュニケーションが苦手で孤独な日々を送っていた。そんなある日、オーストラリアの少女メアリーが出した手紙が届く。これに対しマックスはタイプライターで丁寧な返信を綴る。こうして、2人の20年以上も続く文通による交流が幕を開けるのだが…。
("allcinema online"より抜粋)


 多分特別なことではないんだろうけれど、新しくピカピカ光った清潔感バッチリの喫茶店やラーメン屋より、置物にちょっと埃がかっていて、ギャバンの胡椒の缶は油でギトギトなお店の方が落ち着いたりするし、キレイでハイテクな六本木ヒルズの映画館より薄汚れて雑多でなんでもアリの新宿歌舞伎町の映画館の方が好きだったりする。
 性格も顔も良く仕事もできてもちろん人気もある人よりも、なんだか欠陥のある人の方が好感もてるし仲良くできる。
 もっと言えば普段仕事ができる人がミスをすればイラッとするが、普段からミスしている人がミスしても別段イラつきもしない。


(1)『メアリー&マックス』は、誤解を恐れずにいうとずいぶんと「差別的」なアニメである。『ダーティー・ハリー』でイーストウッドが「イギリス系もアイルランド系もアフリカ系もメキシコ系も男も女もみんな差別している」とプエルトリコ系の相棒につげ「特にプエルトリコ系は大嫌いだ」とウィンクを飛ばすシーンがある。本作に関しても、一人や二人を差別するなら誰しもあることだが、全人類いや全生物いやいや全宇宙を差別しているあまりに差別しすぎてまるで誰も差別していないように見えてしまってる。そして本作で描かれる全ての要素はことごとく汚いのだ。
 それは『シュレック』シリーズの不潔さがギャグで、『塔の上のラプンツェル』の汚さがオシャレであったと認識させられる。

 本編の半分はオーストラリアが舞台だが、常にハエはたかるしコアラは不細工、老人たちからは変な臭いがするし、セピア調と言えばオシャレだがこの映画調に言うと「うんち色」、何しろ主役の一人メアリーの目はどぶ水の色だし、額には「うんちの色」の痣がある。
 マックスの住むニューヨークも同様にひどい。モノクロ映像はカサついているし、出てくる登場人物は自由の女神像もふくめてえらく不細工で下品。マックスの飼うペットたちもことごとく汚いしハエは常にたかっている。そもそもマックスが過食症で肥満症の巨漢でオナラばかり。――そして彼はアスペスガー症候群癇癪持ちでもあった。

 キレイではないと言えば、二人の主人公が交わす文通もメアリーのそれは論理性が一切ないし、マックスのそれは病的な理屈っぽさで、そろって無茶苦茶な内容だし、一つ一つのギャグも荒唐無稽だ。
 そしてモデルアニメーションで作られた本作だが、その動きの中途半端なぎこちなさも彼らの何事もうまくいかないスマートではない世界観をうまく表している。
ついでにいうと彼らが終始むさぼり食っているチョコレートも「うんち色」だ。

 二人の歩む人生もまたそれはそれは悲惨である。コミカルなジョークとかわいらしいモデルアニメーションで彩らなければ目を覆いたくなるほど暗い物語となっていたであろう。
 メアリーは劣悪(と本人は思ってなさそうだが)な家庭環境で育ち、その容姿と暗い性格からいじめられ、友達ももちろんいなく、両親ははやくに死去、せっかく実った恋もズタズタに破られていく。
 マックスも同様。友達は空想の中。仕事はクビだらけ。人とコミュニケーションもとれず、四十過ぎて多分童貞、醜く太り、殺人罪に問われ病院おくり、そのあともタバコのポイ捨てにカッとなってホームレスのお婆さんを絞め殺そうとする。宝くじに当たったりたまにいいこともあるけど、フィギュアをコンプリートするくらいしか使い道がなく、結局悪用されて終わる。ろくな人生ではない。



(2)しかし先述の通り本作で描かれる世界はキャラクターも含めて平等に醜いため、主人公たちの不格好な容姿や性格や人生ーーそして病気が決して「特別なもの」とはされない。

 描かれる世界はメアリーとマックスを含め平等に醜く、人間は平等にバカで、完璧なものなど何ひとつないはずなのだと本作は語る。

 物語は終盤二人の主人公の文通に決裂を起こすが、その決裂は彼らが"完璧でない"ため生じたものであった。人は完璧でないから失敗をするし、完璧でないから失敗に怒りを覚える。完璧でなかったから孤独になったし、だから互いを傷つけてしまった。
 だが、それでも二人の関係が修復され、メアリーが絶望的な状況から立ち直り、マックスが最後にもっとも欲しかった"表情"を手に入れられたのは、人が不完全だからであった。人も世界もこの映画が終始描き続けたように皆が平等に"不完全"だから諦めもつくし、コミュニケーションをとることも出来る。マックスのように完全なものを求め続けたら笑いなんておきやしない。全てがうんちにまみれて煙草の吸い殻だらけで変な匂いを発していることを理解することが、幸福な笑いを生み出すのだ。そして不完全だから人は人を許せるし、不完全だから人は人を愛せる。


 以上、『メアリー&マックス』はその全ての要素をタバコの吸い殻や吐き捨てられた痰や犬のフンだらけの世界観にて描き、人も世界も不完全で臭くて頭が悪いからこそ愛おしいということを描いた、素晴らしき差別的な映画であると思う。
 人類はみな臭いのだ。だから人は人を許し愛せるのであろう。そしてそれ故にこの映画は下品で汚いけれども愛らしい映画なのだろう。



(3)不満点ってほどではないのですが、『イリュージョニスト』を見たあとだとちょっとセリフに頼りすぎな気がします。だけど淡々と真面目に語るくだらない話はある種のリズムを生み出し、それはまあアリなのですが。


 けっこうえげつない下ネタがあったり案外ファミリー向けでなかったりしますが、意地悪ながらも美しく愛おしい映画だと思います。オススメ。

 多部未華子レベル。

 次回はこれまた話題作。今年のアカデミー賞候補作でした『キッズ・オールライト』の感想です。よろしく。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/09(月) 02:09:48|
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