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『キッズ・オールライト』を見るべきは母の日だよ。

キッズ・オールライト

 こんにちは。今回はアカデミー賞のノミネートされていたコメディ作品『キッズ・オールライト』の感想です。母の日くらいにアップしようとしていたのでこのタイトルです。

 観に行った映画館は信頼のブランドTOHOシネマズシャンテ
 ゴールデンウィークで公開間もないこともあり、念のため2日前にネット購入したのですが、そこまで混んでませんでした。さすがに休日だけあっていつもよりは混んでいたけれど。客層は中年夫婦が多め。若者や家族連れもちらほら。


概要:2010年のアメリカ作品。監督・脚本は『しあわせの法則』やTVドラマ『Lの世界』などを手がけたリサ・チョロデンコ(変な名前!)、音楽は『かいじゅうたちのいるところ』『シリアスマン』『トゥルー・グリット』のカーター・バーウェル。
 ニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)はレズビアンのカップル。結婚している2人には18歳になる娘ジョニ(ミア・ワシコウスカ)と15歳の息子レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)がおり、郊外の一軒家で仲良く暮らしていた。そんな中、年頃のレイザーは、母親たちに精子を提供した“父親”の存在が気になり始める。そして、母親たちが喜ばないと尻込みするジョニをたきつけて、2人で父親捜しを始めることに。するとやがて、人気レストランのオーナーを務めるポール(マーク・ラファロ)という男性が生物学上の父親であることが判明する。気ままな独身生活を送る気さくなポールにすんなりと打ち解けてゆくジョニとレイザー。一方、子どもたちがポールと会っていることを知ったニックとジュールスは、事態を穏便に終息させようと、ポールを食事会に招くことにするのだが…。
("allcinema online"より抜粋)


 僕はいい歳こいて結婚もしないで実家暮らしを続けるダメ人間なのですが、結婚した友人曰わく「一人立ちしてはじめて親がどういう人間だったか解った」と。すなわち実家でご飯作ってもらっていたころは親は親の役を演じていたと。その手を離れてみてはじめて「親」ではない彼らを見ることができたということだ。それは開放感と寂しさが入り混じった感情なのだろうか。

 本作『キッズ・オールライト』の結末に感じた清涼感と寂しさに似た感覚なのかもしれない。
 本作は複雑で人間臭いドラマを紡ぎながら、"親"というものの大変さ、"家族を作る"ということの偉大さを描いた作品である。そこらへんを解説。


(1)本作に登場するキャラクターたちは映画の教科書のごとく魅力的に描かれ、魅力的に演じられているのだが、彼らの存在を浮き彫りにしていくキャラクター同士の複雑な関係性に注目してみたい。

 例えば主人公一家の関係が複雑である。ニックの娘のジョニと、ジュールスの息子のレイザー、ニックとジュールスはレズビアンカップルで、二人の子供の精子提供者は同一人物である。すなわちジョニとレイザーは異母姉弟ということにもなる。

 また主人公一家は皆それぞれの関係性において"我慢"をしている。
 例えばニックは自分たちがレズビアンの両親だという特異性を引け目に感じていて、子供たちが順当に育ってくれるよう必要以上に厳格に家を守ろうと好きなことを我慢して完璧な家長を目指している。
 また例えばジュールスはそんなニックの厳格な縛りゆえに良き母・良き専業主婦であることを強いられニックが自分の能力を大して認めてくれない不満を我慢している。
 優等生のジョニはニックの厳格な戒めを守り、いつの間にか自分の素直な気持ちを閉じ込めてしまっている。セックスに対して興味ないフリをしているし、酒も飲まない。子供扱いするニックに不平をこぼしつつ自分から子供の皮をかぶっている。

 唯一の男性のレイザーは身の回りに男性を欲しがっている。友人はやたら粗暴なバカだし、あまりに男性に憧れるあまり母親たちがゲイなのかと心配するほど。彼は他の3人と違い一人子供っぽいので、そこまで我慢しない。
 なので精子提供者の生物学上の父親に会いにいってしまう。

 このように主人公の一家はそれぞれの関係性において何かしら「我慢」している。


 彼らと対局に位置するのは精子提供者のポールだ。
 ポールは我慢しない男だ。自由気ままに生活し、それなりに成功している。生活感のない魅力的な男性だ。

 彼は主人公一家との関係において彼らを刺激し彼らを我慢から解放させる。例えばジュールスは、ニックが認めてくれなかった"社会人としての彼女"を認めてくれるポールと肉体関係を持つにいたる。
 またジョニはニックからのがんじがらめから解放されるためには自分から行動すべきとポールから学び、自己の中の性欲を認めるようになる。

 そしてポールの介入はかろうじて立派な家族として成り立っていた主人公一家を崩壊させてしまう危険性があるために、ニックと対立することになる。

 一方で今まで自由気ままに生きていたポールも家族を欲している。しかし彼は家族を持つ勇気がない男だった。
 恋人のタニヤ(ヤヤ・ダコスタ)とは「君との関係は気楽で楽しかったが、僕も家族を持ちたいんだ」と言って別れる。彼女とだって新しい家族を築くことが決して無理なことではなかったはずなのに。

 ポールが主人公一家に入り込むための武器は"セックス"だ。主人公一家は――普通の家族の始まりは両親のセックスなのだが――セックスを始まりとしていない家族である。だからジュールスとのセックスを利用して、例えそれが意図的なものでないにせよ、主人公一家の「父親」に成り代わろうとする。
 彼にとってニックがいかに苦心して父親役を演じてきたかは理解出来ない。なぜなら彼女は父親ではなく"女性"であるから。

 そこで、レズビアンだが一生懸命家族を守ってきた"父親"ニックと、生物学上の親できちんとした男性の"父親"ポールの関係は対立構造となる。

 このように、『キッズ・オールライト』で描かれる様々な人間関係は、これをもしTV雑誌でよくあるキャラクター相関図なんかにしたならば、やたらと複雑である(*)。
(*)しかし理解が困難というわけではない。素晴らしいユーモアとドラマ構成の巧みさやキャラクターの魅力で、ストーリーを追っていればすんなりと理解できる。


(2)ところで――人と人との関係性は"紐"によく例えられる。二人の人間の単純な結びつきは一本のピンと張った"紐"で表現できるが、人数が増えればそれだけ"紐"が増え、『ブルーバレンタイン』のごとくその関係を重ねていけばこんがらがってきて非常に面倒な図になる。
 で、本作で丁寧に描かれてきたキャラクター同士の関係性を"紐"で例えると、それはそれはやたら面倒なものになるだろう。

 だが、群像劇の基本・醍醐味は人と人との絡み合いであり、本作も以上のように複雑に絡み合って物語は推進していく。コメディとしての面白さも複雑性が増すほど螺旋のごとく増していく。


 後半になるにつれ物語の中心はニックとポールの対立に収束していくが、それに終止符を打ち、ニックにジュールスと子供たちを勝ち取らせ、バラバラでドロドロでゴチャゴチャの家族をもう一度再生させたのは「家族って難しい。一緒に暮らしていると傷つけ合ってしまう」「子育てって大変」という、ニックの気持ちを代弁したジュールスのメッセージであった。
 確かに長い共同生活で家族たちを結ぶ"紐"は嫌になるくらいゴチャゴチャに複雑化した。しかしその絡み合う"紐"は絡み合った末に"一本の太いロープ"となっていたのだ。言い換えればニックとジュールスは、彼らがどんなに変則的な親であろうと、計り知れないたいへんな苦労のすえ子供たちを何不自由なく立派に育てあげ、どこに出しても恥ずかしくない誇らしい"家族"を作り上げたのだ。

 一方でポールは家族を作るということに対して何の努力もしてこなかった。彼は細っチョロい"一本の紐"でしかなく、彼がいくら男性で生物学的には正式な「親」であったとしても、18年間紡がれ続けたロープの力強さには勝てるはずがないのだ。

 物語はジョニが一人立ちして終了する。彼女が抜けたことで絡み合ったロープは少しスッキリして細くなった。
 そして今は"一本の紐"になったジョニもまたこれから様々な複雑な関係性を築いていくのだろう。

 二人の親はドロドロに絡み合い、汚れ、嫌われ、苦しんだ。多分『ブルーバレンタイン』のような倦怠も多くあっただろうし、様々な深刻な事態も(コミカルにであるが)描かれている。それでも立派に二人の子供を育ててきた。
 一つの偉業を成し遂げはじめて「子供たちはもう大丈夫(キッズ・オールライト)」と言えたとき、寂しさと共に清々しさがある"親ではない人間の顔"がニックとジュリアから垣間見えた。


 以上、『キッズ・オールライト』は様々な人間同士の複雑な絡み合いを家族の姿として描き、子育てをするということの大変さや困難さ、"親"という人間の偉大さを表現しているのではないかと感じた。



(3)他に良かった点として、『シングルマン』の時も素晴らしかったですが、中年女性の悲哀と持て余す性欲を見事に演じているジュリアン・ムーアが良かったです。太い腕とかソバカスだらけの肌とか。

 不満点としてはポールにもなんらかの救いを与えてあげたかった。彼は彼で、無邪気ないいヤツで、とても愛すべき共感しやすいキャラクターでした。


 『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のような爆笑コメディを期待すると肩透かし食らうかもしれません、そういうコメディではありません。ユーモアたっぷりの人間ドラマ程度に考えていただければ、とてもいい小品だと思います(人間ドラマって変な言葉…)。オススメです。

 中村ゆりレベル。

 次回は『身元不明』からこの時節柄タイトルが変更になりました『アンノウン』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/12(木) 12:44:26|
  2. 映画カ行
  3. | トラックバック:9
  4. | コメント:1
<<『アンノウン』を見たかどうかは定かではないよ。 | ホーム | 『メアリー&マックス』は素晴らしき差別主義の世界だよ。>>

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  1. 2011/12/23(金) 22:56:03 |
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