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『アンノウン』を見たかどうかは定かではないよ。

アンノウン

 今回は『身元不明』というタイトルで宣伝されていましたが、震災の影響でそのタイトルでは差し障りがあると、急遽原題の『アンノウン』というタイトルにされたサスペンスアクションの感想です。

 観に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ
 俳優も題材も地味めなこの手の映画にしては入りはそこそこでした。仕事帰りでしたが、一人客のサラリーマン
が多め。


概要:2011年のアメリカ映画。監督は『エスター』『蝋人形の館』『GOAL!2』のジャウマ・コレット=セラ。
 学会に出席するため、妻エリザベス(ジャニュアリー・ジョーンズ)とベルリンに降り立った植物学者のマーティン・ハリス博士(リーアム・ニーソン)。ホテルへ着いたところで忘れ物に気付いた彼は妻を残し、タクシーで空港へと引き返すことに。だがその道中、事故に見舞われ、4日間もの昏睡状態に陥ってしまう。目を覚ました病院で本来の目的を思い出し、学会が開かれるホテルへ急ぐマーティン。しかし、彼を待っていたはずの妻はマーティンを“知らない人”と言い放ち、彼女の傍らにはマーティンを名乗る見ず知らずの男(エイダン・クイン)がいた。妻との新婚旅行の写真まで持つこの男に対し、所持品が携帯電話と一冊の本だけで警察にも身分を証明できず混乱と焦燥を募らせるマーティン。しかし、何者かに命を狙われたことから、この一件にうごめく陰謀の存在を確信する。タクシー運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)と元秘密警察の男ユルゲン(ブルーノ・ガンツ)という2人の協力者を得て謎の解明に奔走するマーティンだが…。
"allcinema online"より抜粋)


 まぁ今更言うこともないのですが、例によってネタバレだらけの感想です。
 ネタバレくらいで面白さが不安定になることなどないとは思いますが、本作はあまりにその肝心の結末がキモになっているので要注意してください。


 量子力学やらシュレーディンガーの猫やら京極夏彦の『姑獲鳥の夏』やら近々当ブログで扱う予定の『ミスター・ノーバディ』やら、哲学やSFでよくある話だけれど、いま自分が知っている記憶や今自分が見ている景色、もしくは自分自身の存在ですら脳が勝手にでっち上げたもので世界の真実はまるで違うものかもしれない。
 また、歴史やニュースを振り返ればわかるけれど、人の記憶はあてにならない。人が作った記録もあてにならない。記憶も記録も「今」が作りだすものだ。過去を振り返る時点で、記憶や記録は多かれ少なかれ人為的な何かが関与している。
 過去をねつ造するから民族間の報復の繰り返しによる紛争は絶えないし、歴史上の人物は様々なイメージが日々刷新されていく。

 『アンノウン』はそんな人の記憶や過去や存在の曖昧さを描き観客を怯えさせる作品だ。


(1)うたた寝や気絶している間に周囲が全員口裏を合わせたように自分の記憶を否定する――そんな物語はヒッチコックの『バルカン超特急』からはじまり、最近では『フォーガットン』『フライトプラン』なんて映画や、『古畑任三郎』の松村達雄が犯人役だった時のエピソードもあったけれど、サスペンスものでは一つの定石的な展開となっている。『アンノウン』もその手の映画の流れにある。

 これらの作品の主人公たちは、周囲に自分の過去をあまりに否定され続けることで、やがて自分の記憶どころか自分の存在自体すら夢が幻なのではないかと疑いはじめる。
 観客だって気が気ではない。「あれ? 私が冒頭で見ていた映像って勘違いだったっけ?」なんて具合に気になり映画の中の主人公どころかスクリーンの外側にいる自分自身すら疑いはじめてひどい不安に襲われる。

 人の存在なんてちっぽけなもので役所なり知人なりなんらかの他者が親切に保証してくれなければ、夢か幻のように不確かなものになってしまう。
 人は過去を積み立てることによって自分を構築していくのだ。過去とは基盤。基盤がなければ不安定なことこの上ない。

 本作『アンノウン』もそうやって観客を不安にさせる描写に凝っていて、例えば主人公マーティンを撮る時は背景をぼかして、ゆっくりゆらゆらカメラをかすかに動かすことで彼の基盤が崩れようとしていることを表現している。
 また例えばベルリンの寒々しい空気感や色調は異国での孤独感を増させる公開を持つ。
 そして例えばリーアム・ニーソンの俳優としての雰囲気もそうだ。その解説は以下に続く。



(2)ここで少し話を横にずらしてリーアム・ニーソンという俳優について考えてみたい。
 代表作は『ダークマン』『シンドラーのリスト』『スター・ウォーズ episode1』『96時間』あたりだろうか。演技のうまいタイプではない。『スター・ウォーズ』クワイ=ガン・ジンはそうでも無かったけれども、一見野暮ったいヌゥっとしたオジサンなのだが、その黒目がちな瞳の奥には鬼のような狂気や熱い志が光っている。そんな役が多い。だって『シンドラーのリスト』で世間的にメジャーになった彼が『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のハンニバルを演じるわけだから、彼が激しいアクションをするたびに多少の違和感が感じてしまう。
 本作で彼が演じるマーティンも最初は秀才タイプで愛妻家で文化系代表みたいなリベラルな中年男子である。しかし過去を見失いその存在に揺らぎがかかってくると、彼の人間味は次々と引き剥がされてきて、彼の本質的な「鬼」が首をもたげてくる。
 『96時間』のキレたパパも恐ろしかったが、ラストシーンのあの豹変っぷりの恐ろしさよ!
 そんなわけでその内に秘めた二面性こそが魅力の俳優だと思われる。



(3)物語は(1)で取り扱った「もしかしたら自分がとんでもない勘違いしているんじゃないか」という問題意識から、それが勘違いではないとわかる中盤以降「自分が何者なのか」を探るという問題意識にシフトしていく。

 「平凡な大学教授」の存在を何故大がかりで周到な手間をもってして消しさろうとするのか。本当に私はマーティン・ハリス博士なのか。その謎が解決していくに連れ、過去を持たない"鬼"となったマーティンに、再び新たな人間味(過去)が備わっていく。リーアム・ニーソンの俳優としての個性の真骨頂だ。そこには冒頭の平凡な大学教授とはまるでかけ離れた「何者でもない殺人者の彼」の姿があった。

 もしかしたら平々凡々細々安穏と暮らしているぼくは明日目が覚めたら世界的ミュージシャンになっているかもしれないし、自分の不幸な人生を恨む明日処刑される死刑囚になっているかもしれない。本作で散々自分の過去や記憶を揺り動かされた果てにそんな気すらしてきた。
 人の過去や記憶や存在はそれほどまでに曖昧模糊としているものなのだ。


 ところで本作はそんな存在の危機に対する恐怖をただただネガティブなものとだけはしていない。本作のエンドクレジットは飛行機で大空を駆け巡る映像となっている。『エンジェル・ウォーズ』でも妄想の素晴らしさは描かれていたが、人はどこにだっていけるし何者にだってなれるのだ。


 以上、『アンノウン』は、観客の記憶を不安定にさせ、見終わった後、まるで違う別人になってしまう可能性を感じさせる作品だと感じました。



(4)不満点がいくつかございまして、ダイアン・クルーガーのキャラクターは良かったけれど、別にいなくても物語が進行してしまいそうなところ。もっと深く絡めてあの唐突な恋愛オチに絡めてほしかったです。
 あと記憶喪失が都合良すぎる。記憶喪失自体ちょっと嘘くさいのに、あまりにドラマチックな部分のみ忘れ過ぎ。頭打って思い出すとか、アレだし。
 あと、詳しく書くのは控えますが、オチに反省が一切ないのは…だってアイツはアレだったわけで…。


 以上。サスペンスも面白く、アクションもなかなか(カーチェイスシーンや暗殺シーン、あとダイアン・クルーガーのカーアクションも良かった)、美女も二人も出ている。シンプルで単細胞に楽しめるとても面白い映画でした。

 成海璃子レベル。

 次回は最近こういうサブカルサンプリング映画多いですね『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/05/12(木) 15:08:02|
  2. 映画ア行
  3. | トラックバック:9
  4. | コメント:0
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  2. ブルーレイ&シネマ一直線

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