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『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』は8bitで愛を描くよ。

pilgrim

 こんにちは。今回は公開されるかどうか危険だった話題作『スコット・ピルグリムvs邪悪な元カレ軍団』の感想です。話題作の割にはアメリカ・イギリスじゃコケたそうですが。

 観に行った映画館はシネマライズ。火曜1000円の日でしたが思ったほど混んではいなく。客層は男女ともに若者が多め。


概要:2010年のアメリカ映画。ブライアン・リー・オマリーによる漫画を『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のエドガー・ライトが製作・監督・脚本を手がけ実写映画化。
 アマチュア・ロック・バンド“セックス・ボブオム”のベーシスト、スコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は、年下の高校生ナイブス(エレン・ウォン)という彼女がいながら、ミステリアスな女の子ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)にひと目ぼれしてしまう。すっかりラモーナに夢中のスコット・ピルグリムだったが、そんな彼の前に突然、謎の男が現われ、戦いを挑んできた。男の正体はラモーナの最初の彼氏、マシュー・バテル(サティヤ・バーバー)。なんと、ラモーナのハートを射止めるためには、次々と現われる7人の元カレたちを全員倒さなければならなかったのだが…。
"allcinema online"より抜粋)


 本作『スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団』はビデオゲームをはじめとする様々なサブカル的要素で溢れかえっている。今回はその中で最も目立つゲーム的な要素に焦点を絞りその意味を考えたい。


(1)いつの世代だって"現実逃避"は虐げられてきた。僕の少し前の世代は漫画を、もう少し前だと映画を――それどころか物語自体すらいかがわしいものとされた時代もあった。
 僕らの世代でそれにあたるのは"ゲーム"だろう。「ゲームは一日一時間」だの"ゲーム脳"だのと言われ続けて、いつだってゲームは虐げられてきた。

 しかしゲームだって何かしら得るものはあるはずだ。そうでなければゲームで育ちゲームで学んできた我々は報われない。
 そんな声を意識してかどうかは知らないが、90年代末あたりから徐々にファッションや音楽で"ゲーム的センス"は取り入れられてきた(ファッションに関してはまあ80年代リバイバルの一環でゲームの本質を描いてはいないのではと思うこともあるけれど詳しくないのであまり語れませんが)。
 まあそこら辺はもはやブームは去っていて、いまさら『スーパーマリオ』『ソニック』はもちろん『メトロイド』『ディグダグ』『MOTHER』『ゼビウス』のサンプリング曲を「どうだ!?」と出されてもあまり喜ぶ人はいない。(ところでゲーム音をサンプリングした曲の走りみたいなスチャダラパー『ゲームボーイズ』は今聴いても素晴らしい名曲だと思います)



(2)さて、そのようななか映画はゲームに対してどのような態度をとってきただろうか。
 例えば『ザ・ビーチ』『ゾンビランド』のようにゲーム的な記号表現を手段として使用した作品は星の数ほどあったし、『スーパーマリオ・ブラザーズ』『バイオハザード』『モータル・コンバット』などゲームを原作に映画的な文法で描いたものは多かったと思うけど、本作のように僕らの"ゲーム的思考"を作品全体の主題とし、映画的な物語をゲーム的な文法に置き換えた作品は無かったと思う。


 本作はコンプレックスだらけの主人公スコットが、過去に7人ものイケてる恋人と付き合ってきたエキセントリックな女の子ラモーナと付き合うことになり、彼女と釣り合う存在になるためコンプレックスを克服しようと過去の彼氏に会う巡礼("pilgrim")を行なうという物語であり、エドガー・ライト監督が「任天堂版『アニーホール』」と言われて喜んでいたが、もしウディ・アレンならインディロックをジャズに置き換えて洒落た感じで撮りそうな、等身大の(もしくは地味な)物語である。

 しかしその物語の描写は冒頭の"UNIVERSAL"のロゴから最後の"CONTINUE ? 9…8…7…6…"("THE END"ではない)にいたるまで全てがゲーム的な意匠にて描かれている。それは例えば『ストリート・ファイター2』『スーパーマリオブラザーズ』『ゼルダの伝説』『テトリス』『MOTHER2』『モータル・コンバット』『パックマン』『ドンキーコング』『ファイナルファンタジー』『鉄拳』『ダンスダンスレボリューション』『マーヴル・ヒーローズ』、あとは日本人が知らない多くの洋ゲー…はたまた間接的にゲーム的な意匠を採用しているものとして『ドラゴンボール』CORNELIUSなどなど、80年代末から90年代(スーパーファミコン~PlayStation世代)を経験した若者なら誰でも知っている大ヒットゲームの趣向をもってして"地味な物語"を彩っている。



(3)シンプルな物語をオタク的な要素をこれでもかと盛り込んで必要以上に派手に演出するというと、先に感想を書いた『エンジェル・ウォーズ』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い出すけれど、あれは性的虐待やロボトミー手術、貧困や差別など過酷すぎる現実があって、それに目を背けて耐えるための"空想"として「派手な演出」があった。
 しかし本作は違う。目の前にある全ての日常が否応なくゲームに見えるのだ。言い換えればゲーム的な世界こそリアルな世界なのだ。例えばオシッコするときですら右上に"オシッコゲージ"が表れ、その溜まっている量をあらわすほどの日常性。

 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『エンジェル・ウォーズ』で描かれた空想世界は現実から逃避する手段であり必ずしもポジティブなものであるとはされなかった。いつかは目を合わせなければならない"空想"の対局にある"厳しい現実"があった。
 しかし本作はゲーム的な思考をけっしてポジティブともとらないがネガティブなものとしても描かない。ただひたすら”日常的”なものとして描く。厳しい現実を見ようが見まいが目の前にあるのは"ゲーム的視覚の日常"なのだ。
 そして本作はそれを否定しない。
 スコットやスコットの元恋人の女子高生ナイヴスの脳内では自分の左上に常にライフゲージが浮かんでいて自分の力量を知っているし、人を傷つけたらダメージカウンターが表れ人の痛みを知る。自分の力量じゃかなわない相手にはレベルをあげて挑戦するし、挫折したってくじけずコンティニューして再挑戦する。そして彼らはそうやって大人に成長していく。

 "ゲーム的思考"をもってしても厳しい現実をきちんと見据えることはできるし、厳しい現実を克服していくことも可能である。僕らの前の世代が、物語や映画や漫画やロックに大切なことを教えられてきたように、"現実逃避"と言われながらもゲームを愛し、ゲームに育てられてきた我々の世代は"ゲーム的な思考"をもってきちんと現実と向き合ってきたのだ。


 以上、本作は現実逃避だのなんだのと未だ非難を浴びせ続けられるゲーム(や様々なサブカル)に育てられた世代やゲーム的な思考にまみれた日常を否定せず、それも一つの現実との向き合い方であると描いていると思う。



(4)不満点は、それがけっこう致命的なんだけれど、ゲーム的映像が大して面白くない、迫力がない、同じような繰り返しで単調という点。最初はヘンテコで良くても次第に見飽きてしまう。この手の映画でそれは致命的かなと。
 あと女の子をもっと可愛く描いて欲しかったです。現実的ってならいいんだけど、現実的でもなければゲーム的な萌え要素もない。

 逆に良かった点はさすがマイケル・セラのダメ男っぷり。二股かけているくせにラモーナにやたら一途で、ナイヴスに冷たすぎるし、元カノには敵意すら抱いている。なんかリアル童貞臭。
 そんなアジア系女子高生ナイヴスのスコットの冷たいあしらいにもめげずに戦うキャラクターも良かったです。

 最近『キック・アス』『エンジェル・ウォーズ』などサブカルファンタジーと痛いリアルの融合という作品が多いですが、そういう作品群の中ではそれらの点で少しパンチが弱いかなとは思います。本作が話題の割には低評価なのはそのせいなのではないかと。
 が、ゲーム好きでゲームの世間的な偏見に不満なあなたならオススメできると思います。

 鈴木愛理レベル。

 次回は前回感想を書くといいましたね。『トト・ザ・ヒーロー』『八日目』のジャコ・ ヴァン・ドルマル監督のSF映画。『ミスター・ノーバディ』の感想です。


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  1. 2011/05/13(金) 01:49:12|
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<<『ミスター・ノーバディ』は優しい屁理屈だよ。 | ホーム | 『アンノウン』を見たかどうかは定かではないよ。>>

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