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「少年ジャンプ」と水木しげると映画とおもちゃと特撮を愛します。

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『ゲンスブールと女たち』はオシャレ『まんが道』だよ。

ゲンスブール

 今回は『ゲンスブールと女たち』の感想です。日本だと「ゲン"ズ"ブール」表記が一般的になっているけれど、本作は「ゲン"ス"ブール」ですね。まぁどちらでもいいのですがwikipediaにそこらへんが「69 année érotique(『69年はエロな年』)、Ballade de Johnny-Janeなどで聞ける本人の発音は「ゲンズブール」に近い。フランス語の発音規則に従えばここは「ス」なのだが(規則どおりなら「ゲァンスブール」と読まれるのが自然である)フランス語では有声化と呼ばれる現象が強く、後の[b]に影響されて[s]が[z]に近く発音されると考えられるので揺らいでいる文字の発音は「有声化によって『ズ』に近くなった『ス』」という記述がもっとも適当だろう」なんて書いてありました。勉強になりますね。

 観に行った映画館は当ブログではなんと初登場です。Bunkamura ル・シネマ。ここは銀座テアトルシネマ新宿武蔵野館以上にご老人でごった返す映画館。がんばらないとすぐ席が埋まってしまいます。ちなみに僕が行った日は火曜1000円の日だったのですが、火曜じゃなくとも1000円で見れそうな方々ばかりで満席でした。前の席のお婆ちゃんが肩が凝っているらしく、ずーっと首を左右に揺らしていて気になってしょうがありませんでしたが、そんなことすら注意出来ないチキンです。


概要:2010年のフランス映画。監督は漫画家で本作がデビューとなるジョアン・スファール。原作・脚本も彼が手がける。音楽はオリヴィエ・ダヴィオーという人。
 1928年、フランスのパリでロシア系ユダヤ人の家庭に生まれたセルジュ・ゲンスブール(エリック・エルモスニーノ)。幼い頃から容姿にコンプレックスを持ち、画家を目指すも挫折、やがてキャバレーでピアニストとして働き始める。そして、自ら作詞作曲し歌手デビューを果たすや評判を呼び、ついにはエディット・ピアフやアンナ・カリーナといった人気スターに楽曲を提供するまでに。そんなトップ・スターとなったゲンスブールは、やがてブリジット・バルドー(レティシア・カスタ)と出会い、恋に落ちるのだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 セルジュ・ゲンスブールは童貞の頃の僕のヒーローだった。
 美男子ではないけど、くらくらするほど匂う父性、幼児性、タバコ臭さ、つまるところダンディズム。めぐるめくフランスのスーパースターたちを抱いて抱いて抱きつくしたエロオヤジっぷり、それでいてオシャレな雰囲気を失わないというまさに"童貞が自慢されたい汚い大人像"。僕もビッグになったらオッサンになるまで若い綺麗な女優を抱いて自分色に調教して、死んだら交通渋滞がおこるほどの大それた葬式をやってもらうんだと、実に童貞らしい夢を抱いていた。


 ところでセルジュ・ゲンスブールという人物は、なんというか実在感がない。チャップリンやキムタクやシュワちゃんやブルース・リーや渥美清やイチローやジョン・レノンなどスーパースターによくある漫画のキャラクターのような、ドラえもんやバットマンと大差ない存在だ。
 そんな理由で、やがて大人になった僕のなかではいつの間にかセルジュ・ゲンスブールはとても好きな存在ではあるが、憧れの存在ではなくなっていた。

 本作はそのようなセルジュ・ゲンスブールの持つ漫画っぽさを描き、それ故の楽しさや魅力、そしてそれ故の悲しさや苦悩を描いた映画だと思う。


(1)本作のジョアン・スファール監督は漫画家だという。漫画と言ってもいわゆる「バンドシネ」、ルーブルに飾られてしまうようなやつで、「少年ジャンプ」とはちょっと違うタイプの漫画であるが、それでも漫画は漫画。彼が漫画だけでなく映画で本作を表現した意味はなんだろうか。
 それは音楽を流すためだと思われる。なぜなら音楽家を主人公にした物語であるから音楽を流したかったのだろう。漫画は音は出せるかもしれないが特定のメロディーを奏でるのは困難だ。
 この物語はそんなことを思ってしまうほど漫画っぽい

 それもそのはず、この物語は、本作の冒頭、不細工だからと女の子にフられた冷めた少年が煙草を吸いながら、そのあと2時間ずっと夢想しているだけという読み方もできるからだ。
 少年はスネてタバコを吸う。するとまるで少年の漫画のような妄想を具現化するように、タバコの煙はフリピュス伯爵へと変化し漫画で描かれたパリの街を徘徊する。フリピュス伯爵とはセルジュ・ゲンスブールの分身、彼のつもりつもったコンプレックス(不細工なユダヤ人であること)が破裂してその反動でうまれた音楽とタバコと美女を愛し破壊する怪人、彼の漫画っぽい人格のアイコンだ。この作品全体を見渡すと、この冒頭数分を、もう一度丁寧に焼き直しているにすぎない。
 なので序盤は丹念にセルジュ・ゲンスブールの少年時代を描き、大人になっても要所要所で少年時代の彼が出てくる。
 つまりこの映画は不細工なユダヤ人少年の「怪人と化して世界と世界中の女を見返して」やるんだという妄想の物語なのだ。
 だから漫画っぽいし、漫画家が撮ることに意味があるのだ。


(2)セルジュ・ゲンスブールの漫画のような人生は楽しくキュートでゴージャスで、哀しいまでに孤独だ。

 彼はほとんど漫画の中の登場人物みたいなものだからヒーローにもなれるし何しろモテる。
 例えば何も努力せずともどんどん名曲は生まれるし、向こうから勝手に有名女優や歌手が裸になってくれる。まるで『SOMEWHERE』の主人公、いやいや『マチェーテ』のようだ。裸のブリジット・バルドーと共に歌う『 コミック・ストリップ - "Comic Strip"』の可愛らしさ、ゴージャスさ、エロさはとても印象的。

 しかしながら漫画のキャラクターゆえに彼は誰からも理解されない。
 美女をとっかえひっかえ、生活感など皆無で、やることなすこと破壊的で妙にセクシー、そのような地に足がつかない彼の性格は、恋人にも理解されず、彼もまた他者を理解できない。父親の死よりも、彼を無邪気に信頼してくれた飼い犬の死で号泣してしまうほどだ。
 もちろんセルジュ・ゲンスブールだって人の子だ。『ソーシャル・ネットワーク』の超天才ハッカーだって、『スプライス』に登場する化け物ですらそうだったように、孤独は寂しいし怖いものだ。

 それゆえ彼もジェーン・バーキン(ルーシー・ゴードン)との出会いによって、子供をあやし、妻とアラン・ドロンの共演に焼き餅を妬くような地に足がついた生活を送ることになり、彼の漫画的な人格の象徴を具現化したキャラクターのフリピュス伯爵とも縁を切る。

 しかし、そのような伝説的な夫婦生活すら長くは続かず、彼は何かに急かされるように結局フリピュス伯爵と和解、彼と一緒にまた空中をふわふわと浮いてしまう。それはまるで『マイ・バック・ページ』の地に足のついてない感じに似ている。
 そしてまた誰からも理解されない孤独な旅がはじまる。ジェーン・バーキンとは別れ、61歳の時アジア系の21歳の美女バンブー(ナチス将校の子孫でもある)と交際をはじめ、フランス国家をレゲエ調で歌うような挑発的な曲作りを再開する。そして他者をはねのけていく。

 "彼を急かす何か"とは、やはり子供の頃からずーっと抱いていた不細工であったりユダヤ人であったりとしてのコンプレックスからくる反骨精神・復讐心・エンターティナー精神なのだろう。何にせよ子供っぽく童貞っぽく漫画っぽい感情だった。
 生涯子供のような漫画っぽい想像のなかで生き、生涯漫画のキャラクターであった彼に、平安や幸福はあったのだろうか。作品は観客にそう問いかけているようだ。


(3)まとめ
 童貞の頃僕がセルジュ・ゲンスブールに憧れてたのは、コンプレックスを逆手にとってオシャレにモテまくる彼がまるで漫画のヒーローのようであったからであり、しかし僕が彼に憧れなくなったのも彼があまりに現実離れした漫画っぽいキャラクターであったからであった。
 彼がフランス中の美女を抱き、国民的なポップソングを作り、そして一方で死ぬまで誰にも理解してもらえなかったのも彼がコンプレックスだらけの子供が夢想した漫画のようなキャラクターであったからだった。

 このように、『ゲンスブールと女たち』はヒーローの持つ漫画っぽい栄光と、それゆえにそれに表裏一体のように付随する"孤独"を描いた作品であると感じた。



 不満点はジェーン・バーキンはちょっと貧相で貧乏くさいところとか、フランスギャルは野暮ったいところが似ていたけど、それこそ漫画っぽい美しさが欠けていたところ、むりに実在の人物に似せなくてもいいんじゃないかなって。まあ作品の主題をはっきりさせるため彼女たちの漫画っぽさは敢えて省いたともとれますが。セルジュの漫画っぽい恋愛事情を描くためにバルドーやグレコは漫画っぽかったし。バーキンのパンチラしながら振り返るシーンがステキでした。この女優さん(ルーシー・ゴードン)、この撮影後すぐ30歳の若さで亡くなってしまわれたそうですね。
 あとセルジュ・ゲンスブールのどん引きするくらいの変態性が描かれてなかったところとか。

 バンドシネっぽい漫画チックな世界観や手法がとても好きで、手元においておきたい作品ではあります。
 綾波レイレベル。

 次回はドニー・イェン師匠がマッチョに処刑するぜ『処刑剣 14 BLADES』の感想。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/06/10(金) 02:37:32|
  2. 映画カ行
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  1. 2011/06/25(土) 12:21:55 |
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