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『赤ずきん』はジュブナイル向け『アンチクライスト』だよ。

赤ずきん

 すいません。忙しくて、スーパーやる気ない病にかかっていました。
 今回は大人向けともっぱら評判の『赤ずきん』の感想です。

 観に行った映画館は新宿ピカデリー。夜の回に行ったらけっこう客の入りは良かったです。客層は若い男女がほとんど。となりは高校生3人組で騒がしかったです。


概要:2011年のアメリカ映画。監督は『トワイライト~初恋~』のキャサリン・ハードウィック、脚本は『エスター』のデヴィッド・レスリー・ジョンソン。
 若く美しい女性ヴァレリー(アマンダ・サイフリッド)が暮らす村の周辺には恐ろしい狼がおり、満月の夜には決して出歩いてはならなかった。村人は狼と協定を結び、動物の生け贄を捧げることで村の平和を維持してきた。そんなある日、ヴァレリーに裕福な家の息子ヘンリー(マックス・アイアンズ)との縁談話が持ち上がる。幼なじみで野性的な魅力にあふれたピーター(シャイロー・フェルナンデス)と将来を誓い合う彼女は、ヘンリーとの結婚を決めた両親に反発し、ピーターとの駆け落ちを決意する。ところがその矢先に、ヴァレリーの姉が何者かに殺されてしまう。狼の仕業と復讐に立ち上がる村人たち。ところが村にやって来た高名な人狼ハンターのソロモン神父(ゲイリー・オールドマン)は、狼が人の姿で村人の中に紛れていると言い放つ。互いに疑心暗鬼となり、村はパニックに陥ってしまう。
("allcinema online"より抜粋)


 予告編でも見ていけば良かったのですが、何の前情報もなく本作の「大人向け赤ずきんちゃん」みたいな売り文句から『狼の血族』みたいなグロテスクでエロチックで背徳的なロリータ映画を期待していました。蓋をあけてみたらばエロもなければグロもない、映像はデジタル丸出しで、セットもなんだか小綺麗で臭さがなく、音楽もアメリカのティーンエイジャーが好みそうな今時のロック。
 てなわけで『トワイライト』の監督ということすら知らなかった僕の勘違いで、『赤ずきんちゃん』を、ミステリー要素を加え、ジュブナイル向けラブロマンスに解釈した作品でした。そしてそこには人の意識の深層に潜む「狼」という獣と人との古来からの関わりがほのかに描かれていたと思う。今回はそんな論旨。


(1)まあ予想とは違ったにせよ、面白ければむしろ拾い物でしたが、どうもチープな作品で――例によって感情表現はすべてセリフでまかなっていたり(「なんだか××な気持ち」みたいなセリフがやたら多い)、物語の犯人となるあるキャラクターが2時間ドラマの終盤のごとくグダグダと犯行理由を語っていたり、セット丸出しの舞台も加えて、この手のオカルトファンタジーに重要なミステリアスさを殺してしまっているのだ。

 で、そのミステリアスさを台無しにするチープさって既視感あるなと思ったのですが、かのモンティ・パイソンの名作映画『モンティ・パイソンのホーリー・グレイル』に似ているんだと。

 そう思うと作品全体がモンティ・パイソンにしか思えなくなってきて、特に序盤の展開の『ホーリー・グレイル』への変換されっぷりがひどかったです。
 赤ずきんの住む雪の降りしきる山村(なのに何故かみんな薄着だ!)では、ブスなお姉ちゃんを狼に殺されたとかで、てんやわんやの大騒ぎになっている。「狼なんだから殺しに行けばいいじゃん」と観客は思うわけなんですが、どうもその狼は普通の狼とは違うらしい。先述のごとくミステリアスさがないのでその普通の狼ではないという情報がいまいち伝わりづらいのですが、まあ普通の狼じゃないっぽい怯え方。
 したらば何がパイソンズならジョン・クリーズが演じそうな偏差値低そうなオジサンたち酔った勢いで「狼殺しちゃおうぜ!」って騒ぎ出し、興奮した村人たちは武器を持って狼狩りに向かう。そこでまたもいかにもなセットぽい洞窟に潜り込んで、真っ暗闇のなか狼との対決が始まる。ここら辺も一応ホラー描写っぽく演出しようとするんだけど、なにぶんレイティングの問題で血は見せられないし、それならそれでJホラー的な恐怖演出で恐がらせれば嬉しいのだけど、これが暗いところからワッと狼らしきものが驚かしてくるだけの安っぽいお化け屋敷みたいな演出で子供騙し。
 しかしながら村人たちは何がなんだか死人も出したけど狼を仕留めて勇んで帰宅。どう見てもちっこい普通の狼の生首を持って「仕留めたぞー!祭じゃー!」と大喜びしてお祭をしようとするところに、グレアム・チャップマンが演じそうなインテリな都会者ソロモン神父(口だけでまるで役立たずなところも、突然狂気的なサディズムを発するところもチャップマンぽい)が登場。彼の「お前ら、それ単なる普通の狼じゃねえか、祭なんかやってる暇無いよ!」ってツッコミにも「うるせえ、オラん村のこたあオラたちが一番分かってるんだ」って村人たちは祭を決行、バカ騒ぎしていると狼がやってきて大惨事になってしまうのだが、なんだか間抜けすぎて吹き出してしまう。
 
 この一連の『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の魔女狩りシーンを彷彿とさせるズッコケシークエンスから本作の出来はさして知るべきってな具合でもあるんですが、まあ良かった点もあります。次項。


(2)続いて良かった点をあげると、例えば後半、「この中に人狼がいる」って神父の発言から村じゅうが疑惑の影に覆われて、欺瞞がどんどん暴かれて次第に悪意にそまりながら村が崩壊していく物語とか、けっこう好きで、欲を言えばもっとミヒャエル・ハネケ的なインテリサディスティックな視点でキリキリと登場人物や観客を追い詰めていってくれたら良かったなと。
 あと単純にミステリーっぽい犯人(人狼)探しはワクワクしながら楽しめました。

 このように、全体的なチープな作りは否めないけれど、これはこれで楽しめる映画にはなっていると思います。


(3)以上、映画の作り以上に楽しめた点が、キリスト教文化圏と「狼」という獣についての関わりが、おそらく意図的ではないにせよ、描かれていた点。

 『もののけ姫』なんかでも描かれていたけれど、稲作文化の我が国にとってシカやウサギを食べてくれる益獣である狼は、その語源「オオカミ(大神)」が表すように、カミサマである(『もののけ姫』は山犬だけれど)。
 Wikipediaで調べたところ、"『日本書紀』には狼のことを「かしこき神(貴神)にしてあらわざをこのむ」と記述されている。山の神として山岳信仰とも結びついており、近世において狼信仰の中心となった武蔵御嶽神社や秩父三峯神社の狛犬はオオカミである。"なんて具体例も。

 一方でグリム童話『赤ずきんちゃん』を始めとするヨーロッパの民話では、家畜を食べてしまう狼は悪とされているが、一概に悪でばかりはないそうだ
 例によって現代人のカンニングツールWikipediaを見ると、"アリストテレスの『動物誌』によると、ギリシア神話にてアポロンとアルテミスの双子を産んだレトは牝狼であるとしている。また、古代ローマの建国神話では、双子の建国者であるロムルスとレムスは牝狼に育てられたとされる。牝狼の乳房を吸う双子を描いたローマ時代の像がカピトリーノ博物館に所蔵されている。"なんて書いてあったりする。

 そもそもはその畏れから悪魔にも神にもされていた狼が一神教であるキリスト教の支配によってその悪魔性ばかりが強調されてしまったらしい。


 で、本作で描かれる"狼"を見てみたい。この人狼は、一般的な物語上の狼への認識通り、荒々しく、禍々しく、ずるがしこく、また色欲が強い。まさに『アンチクライスト』的な混沌たる存在である。
 が、一方でその漆黒の毛並みと、知性、破壊性、そして大きさが持つ美しさはそれこそ『ヘヴンズストーリー』で感じられたような"カミサマ"を感じやしないだろうか。(CGがやすっぽいのが難点ですが…)
 それは無意識下かもしれないが、欧米文化の底にこびりつくように、狼の中にいまだのこる神性が本作に登場する人狼からは滲み出ているのだ。

 キリスト教的権威の象徴たるソロモン神父一派と対立し、村の外に住み、森と共生し、最終的には人狼と恋人関係になる赤ずきんはまるで"魔女"だ。
 だが、魔女とはかつての民間宗教者、いわば巫女さんであり、信じる宗教の違いが彼女たちを魔の者にしたのだ。そして彼女たちが信仰していた神々は、キリスト教によって"悪魔"とされた者たち(例えば"狼")である。
 そしてこの物語は魔女となった赤ずきんがアンチクライストな場所で魔物と契りをかわすことでハッピーエンドとなる。そこに背徳性はなく、ただロマンチックである。

 グリム兄弟はキリスト教文化に支配されることで失われつつあった、自らのルーツである祖国の民間伝承を保存するため『赤ずきん』をはじめとする『グリム童話』を収集・執筆した。
 キリスト教の矛盾点や欺瞞性が政治経済文化に様々な問題を生じさせているアメリカ(アメリカはキリスト教原理主義国家ともいわれている)において、こういったジュブナイル向けの映画が無意識的にも自らのルーツとなるような異教文化の物語を描いたのはなんだかとても興味深いと思う。

 てなわけで、どうしてもチープな作品ではあったけれど、モンスター好きには考察を挟まざるを得ない作品でした。

 大塚愛レベル

 次回は『13/ザメッティ』のハリウッドでのセルフリメイク作品『ロシアン・ルーレット』の感想ニチョフ。


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