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『メタルヘッド』はハッピーな地獄だよ。

メタルヘッド

 そんなわけでまだ公開中にちゃんと記事をアップしていこうとおもいます。
 今回は『メタルヘッド』の感想。

 観に行った映画館は俺たちのシアターN渋谷。ファーストデイでもあり満席でした。客層はアイアンメイデンやメタリカやAC/DCのTシャツを着た人がたくさんいました。


概要:2010年のアメリカ映画。監督・脚本・編集はスペンサー・サッサーという人。製作に7人、製作総指揮に12人の名前があるんですが、一体何事ですか? 製作にはナタリー・ポートマンの名前も。
 自動車事故で母を失い、心に深い傷を負った少年TJ(デヴィン・ブロシュー)。一緒に暮らす父親ポール(レイン・ウィルソン)も、未だ悲しみから立ち直れずにいる。そんなある日、長髪に半裸の粗暴な男ヘッシャー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)がTJの家に住みついてしまう。ヘヴィメタを大音響で流し、目的もなく破壊行動を繰り返すヘッシャーに振り回されていくTJだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 ヘヴィメタルなんていうと『アンヴィル』なんて映画が最近流行ったけれど、かつてのメインストリームはどこ吹く風、いまやちょっと酔狂な人に好まれるジャンルとなってしまっている。

 ヘヴィメタルのなかでも特にデスメタルというジャンルは世界を地獄に変えるロックだ。なんとなく脳天気だったがその裏側では暗雲たちこめていた80年代アメリカや日本においてそういったカウンターカルチャーとしてのデストピア思想は新鮮だったかもしれないが、表面だけ見ていても決して明るいニュースが多くない現代においてはメタルはどう映るのだろうか。


(1)まずメタルについて考えてみたい。
 本作を「母を亡くした少年と、妻を亡くした夫と、人生を見失い貧困と孤独に苦しむ女性の理解と再生の物語」なんて書くといかにもシリアスでホロリとくる感動作品にも思えそうだが、そこにメタルの要素が絡んでくることで、物語の要素は一変する(本作を無理にジャンル分けすればコメディか日常SFになるだろうが、家族ドラマと捉えても悪くはないとは思う)。

 例えばデスメタルの代表的なバンド"デス"の歌詞でもいいし中世に描かれた「地獄絵図」でもいいが、それを垣間みれば地獄ほど恐ろしい場所はない。
 メタルの多くは地獄や悪魔を歌う。そこには基本的に夕飯を何にしようか悩み、仕事のミスをずるずると悩み引きずる日常生活よりも悪いことしか起きない。何故ならそこは地獄だから。
 もし地獄からの旅行者がやってきたならこの世は天国にしか見えないだろう。


(2)本作に登場するヘッシャーというキャラクターが何者だったかについて考えたい。

 本作に登場するヘッシャーはメタルを愛するということ以外まるで何者かは語られない。何故TJの家にやってきたのか、冒頭彼はダイナマイトで何をやっていたのか、そういう点は最後までほったらかし、最終的にTJの家から彼が去った後「ヘッシャーは消えた」なんて、まるで『エクソシズム』の「悪魔は消えた」みたいな言い方をされる。
 多分、メタル愛好家の彼は、地獄からの旅行者だったのだ。


(3)ではそんな「メタル愛好家」のヘッシャーは現代社会をどう見ただろうか。そしてヘッシャーの言動が物語にどのような変化をもたらすのか。

 本作のTJとポールの親子は上記のごとく決して幸福とは言えない。しかし地獄から見たらそんなの些細なことでしかない。
 ヘッシャーには彼らは単に不幸ぶってる独善的なナルシストに見えるだろう。

 ヘッシャーの哲学は2つある。
 「a.無いものは無い」「b.あるものはある」の2つだ。地獄で無い物ねだりしても始まらない。しかし地獄に何か――それはどうしようもない価値のものかもしれないが、それがあればそれは大変貴重な財産なのだ。
 ヘッシャーはどうしようもなく下手で下劣な例え話をして登場人物を困惑させるが、全てはこの哲学に従っている。
 例えば女の子4人とセックスしたけど、ヘッシャー一人じゃ女の子全員を満足させられなかった。でも女の子たちは女の子同士で愛撫をはじめたという話。無いものはないけどあるものはあるのだ。
 また片タマがつぶれて絶望したけどもう一個残っていて安心した話。無いものはないけどあるものはある
 飼っていた蛇がエサのネズミに殺され、ネズミは蛇の水槽を占領した話。自分の持っているものを駆使すればどこでだって人並みの生活ができるのだ。

 ヘッシャーの哲学を実践しているキャラクターもいる。お祖母さんのマデリン(パイパー・ローリー)だ(『キャリー』のキリスト教原理主義者のお母さん役やっていた人ですよ!)。
 彼女は「人生は雨の日の散歩、ぬれないように引きこもるのも、濡れて散歩を楽しむのも自由」と言っていた。とんでもない豪雨だって――もしかしたら止まない雨だってあるかもしれない。でも散歩はできる、散歩するチャンスはいつだってあるのだ。
 そしてまた「バアサンじゃなく、お祖母ちゃん」とも言っていた。たくさんの時間を失った「バアサン」ではなく、孫を持っている「お祖母ちゃん」なのだ。

 だからヘッシャーは、なくなったものをいつまでも後悔していたり、ないものねだりを続けていて、今ある物の大切さにはまるで気がついていないTJやポールたちに「お前らはサイテーだ」と言ったのだ。

 そしてヘッシャーに影響を受けたTJたちは少し成長する。あるものをあるがままに受け入れその有り難さを知る。憧れていた正義のヒーローのニコール(ナタリー・ポートマン)は「グズでマヌケでヤリマン」だという今ある現実を受け入れる。

 ラストにてお祖母さんは死ぬ。死んで、もっと優しくしなかったことを後悔するのではなく、そこにまだ彼女の遺体があるのだから遺体と一緒に散歩に行けばいいのだ。


 以上、『メタルヘッド』はメタルの歌う「基本的にこの世は地獄」の精神にのっとり、相対的にたくさんモノがあるこの世界をすばらしい世界に見立てていると思う。
 『シリアスマン』はとりあえず何でも時間が解決してくれるという実に受動的な不幸回避を提示していましたが、本作はもう少し能動的にどんな悲しいことだってなんとかなるものなのだと語る。だって世の中は基本的にデスメタルなのだから。


 メインの俳優がみな素晴らしかったです。ジョセフ・ゴードン=レヴィットのアメリカの田舎のいい歳こいて不良をやめられない兄ちゃんもいいですが、ナタリー・ポートマンのグズでマヌケでヤリマンの野暮ったいレジ打ちも『ブラックスワン』よりエロくて良かったです。

 メタルが聴きたくなることうけあいです。おススメ。

 長澤まさみレベル

 次回はもう公開してないよね…ギレルモ・デル・トロプロデュース作品『ロストアイズ』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/07/22(金) 23:30:50|
  2. 映画マ行
  3. | トラックバック:6
  4. | コメント:1
<<『ロスト・アイズ』でむしろよく見えるよ。 | ホーム | 『エクソシズム』は名無しの映画だよ。>>

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