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『ロスト・アイズ』でむしろよく見えるよ。

ロストアイズ

 今回は、すいませんもうほとんど上映終了してしまいました『ロスト・アイズ』の感想です。

 観に行った映画館はヒューマントラストシネマ渋谷。ファーストデイに行ったのですがレイトショーでの上映だったのでそこまで混んでいませんでした。会社帰りの30~40代のサラリーマンやOLが多めの印象。


概要:2010年のスペイン映画。監督・脚本はギリェム・モラレスという人。音楽はフェルナンド・ベラスケスという人。
 先天的な眼の病気で徐々に視力を失う運命にある女性、フリア(ベレン・ルエダ)。ある日、すでに視力を完全に失い、角膜手術を終えたばかりの双子の姉サラ(ベレン・ルエダ)が自殺したことを知らされショックを受ける。しかし、その死に不審なものを感じたフリアは、独自にサラの周辺を調べ始めることに。次第に明らかとなる驚きの事実。その一方で、フリアの視力はどんどん失われていく。やがてフリアは、自分が姉と同じ道を辿っていることを自覚し、恐怖を増幅させてしまうのだが…。
("allcinema online"より抜粋)


 『ブンミおじさんの森』では朗らかな闇の居心地の良さについて描かれていたし、『リセット』では人の心理を襲う闇の恐怖をホラー的に描いていたが、本作は"目が見えないこと"の恐怖や利点を通し「見る」という行為について深い洞察を描いている。

 新宿駅でも歩けば盲目の人をよく見かけるが、もし僕が急にいま目が見えなくなり、棒をポンと渡されてこれで家まで帰れと言われてもそんなことできないだろう。目が見えなくて恐いのは車や階段だけではない。もし誰かが親切に声をかけてきたとしてその人がどんな人かを判断できない恐ろしさ、人をその人格ですら視覚で判断しかねない我々が、その視覚を奪われたとき、どんな容姿か(『メタルヘッド』のヘッシャーみたいな容姿かもしれない)わからずに、その人を信頼するかどうかを判断せねばならない恐ろしさがある。


(1)まず本作はストレートに「見えないことの恐怖」を描く。

 本作の序盤は、上記のように健常者が突然失明したとき何もできなくなる恐怖が主に描かれるが、そこから物理的な「視力」が見せる"物事の曖昧さ"が導き出される。

 主人公フリアが持つ"ショックなことが起きると目が見えなくなる"という面白そうな設定は残念ながらあまり活かされてはいなかったが、その曖昧な視力が、"自分が見ていたものは本当に現実だったのかどうか"という、『アンノウン』のごとき、自分が信じられなくなる恐怖の描写がゾクゾクくる。特に犯人らしき男が施設の暗い地下室を逃げるシーン、フリアが照明のブレーカーを上げてバシバシ手前から照明が点灯を始めていくが、その照明の点灯のわずか一歩先を犯人が走るので、その姿が見えそうで見えないという演出がヒッチコック風で良かったです。彼は本当に存在するのかどうか、すごく曖昧。
 あまりに誰も「姉を殺した何者か」の存在を信じてくれないあまり、本当に姉を殺した男はそこにいたのか、ただの妄想ではないのかとフリアは自身を疑い出す。
 そう思い出したフリアに、最愛の夫イサク(ルイス・オマール)が姉と不倫関係にあったという情報がもたらされる。「恋は盲目」なんて言うが、今まで自分は何を見ていたのか。視力はあっても何にも見えてはいなかったのではないか。
 そうして自分を見失い自分すら見えなくなってしまった彼女は視力も無くし、盲目となる。

 映画はフリアと一緒に観客も盲目にするのだが、その描写もキャラクターの首から上をことごとく映さないというシンプルかつ実に恐ろしい手法で、観客はフリア同様にすべての目に見えるものを怪しむことになる。


(2)続いて描かれる恐怖は逆に「見えてしまう恐怖」

 見えないことは恐ろしい。だが見えないことは何よりの現実逃避手段にもなる。

 後半フリアは視力が回復し、全てが見えるようになるが、わけあって盲目のふりをせざるを得ない状況に追い込まれる。
 介護士のイバン(パブロ・デルキ)をはじめ、視力でほとんどのことを判断する人間は、相手が盲目と分かると気を抜いてその化けの皮を進んで脱ぐ。そのとき普段見えない人間の本性が主人公には見えてしまうのだ。
 主人公を盲目と思って彼女に優しく振る舞う"犯人"の部屋は少女の惨たらしい刺殺体があったり犯人の身体は血だらけといった、まさに人間の裏側にある普段は見えないし見る必要もない悪夢のような心象風景だ。
 本作のキービジュアルにもなっているバッチリ開いた瞳に包丁の先端を突きつけるシーン(犯人はフリアは盲目だと信じているので、包丁を目に突きつけても怯えるはずはないのです)がもうとにかく恐ろしかった。

 このように後半ではこんなの見せられるなら目が見えない方がマシだと感じさせる悪夢的光景が広がる(実際本当に目が見えないままだったならば、フリアは殺人鬼の手厚い介護のもと幸せに暮らせたかもしれないというのが面白い)。


(3)本作のラストでフリアは再度視力を失う。しかしその表情は希望に満ち溢れていた。そこを考えたい。

 日本は自由な国とも言われている。ある程度好き勝手やっても平気で生活していける。
 ただしその自由は"見た目"によって制限されている。女の子は基本的に見た目のいい娘を好きになるし、見た目がダサい服なんて着たくない。
 逆に見た目がよければちょっと性格が難ありでも好きになるし、その服の見た目がよければ機能性もそこまで考えない。
 また序文に戻ると人は視力によってその人を信じるべきか否かを考えてしまう。しかしフリアや観客が信用できると思った人々(イバンや隣人の老婆)ほどおぞましい心の闇を抱えていた。

 我々は「見た目・外面」によって真実を目くらましされている『マトリックス』みたいな空間に生きているのかもしれない。
 フリアは前半、目が見えているからこそ、人の悪意を読み取れずに翻弄されてしまうし、失明したからこそ視力だけでは見れない人の裏側を知ることができた。
 最後の"犯人"との攻防戦、フリアが犯人に勝利し得たのは彼女が目に見えるものだけを信じなかったからだし、"犯人"は依然として目に見えるものしか信じなかったから(フリアが盲目か否かも見た目で判断していた)だ(
「目が見えない世界なら慣れっこ」と盲目を逆手にとって暗闇で犯人と戦うシーンがナイス)


 またフリアは結末にて、目が見えていた時には感じられなかった亡き夫の本当の愛を、視力を失うことで感じることができた。彼女は視力を失い、また回復し…を繰り返すことで、健常な瞳があれば決して見えない人間の悪意を知った。しかしまた一方で目が見えているだけだったら決して見えなかった愛も強さも知ったため微笑むことができたのだ。


 以上『ロスト・アイズ』は普段生活のうえで視力に頼りがちな我々を「ロスト・アイズ(失明)」させ、もう一度その瞳に映っているものが本当に全てなのかを問いかけ現実認識を変えてしまう作品だと感じた。


 ホラー描写もサスペンス描写も品とアイデアがありそれでいてワクワクし、物語も二転三転と飽きさせずに突き進み、まさにヒッチコックを彷彿とさせる作品でした。

 麻生久美子レベル。

 次回は『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の続編、『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/07/25(月) 23:11:32|
  2. 映画ラ行
  3. | トラックバック:5
  4. | コメント:2
<<『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』は僕らの友達だよ。 | ホーム | 『メタルヘッド』はハッピーな地獄だよ。>>

コメント

見た目で選んでたら麻生久美子は今の旦那とくっついてないってこと⁉ww
  1. 2011/07/28(木) 00:42:24 |
  2. URL |
  3. 男爵改めJAZZ•パチーノ #-
  4. [ 編集 ]

>男爵改めJAZZ•パチーノさま

 毎回なるべく取り扱う映画作品から連想しづらいアイドルを選んでいるのですが、あぁあ、そんな深読みができたか!!
 また遊びに来てください。
  1. 2011/07/28(木) 01:12:39 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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  1. 2011/08/17(水) 07:12:44 |
  2. soramove

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  2. いやいやえん

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  1. 2011/12/05(月) 00:22:45 |
  2. だらだら無気力ブログ!

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