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『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』ではしっかりとお金を儲けるよ。

exit through

 今回はとても流行っているそうです。『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』というドキュメンタリー映画の感想です。

 観に行った映画館は渋谷のシネマライズ。ここは2年に一度くらいこういうドカンとくるヒット作を上映しますね。火曜日1000円の日で公開間もなかったのもあって、けっこう混み合っていました。劇場内に知り合いが二人もいて驚きました。客層は若者が多め。二人連れが多かったかな。


概要:2010年のアメリカ映画。監督はこれが初映画監督作となるストリートアーティストのバンクシー。ナレーションはリス・エヴァンス。
 誰もその素顔を知らないというミステリアスな素性と、社会風刺に富んだグラフィティ・アートを世界各地でゲリラ的に展開する大胆不敵な活動で世界的に注目集める覆面アーティスト、BANKSY(バンクシー)が自ら監督し、ストリート・アート、そしてアート・ビジネスの世界にユニークな切り口で迫る異色のアート・ドキュメンタリー。LA在住のフランス人アマチュア映像作家ティエリー・グエッタは、危険を顧みず警察の取締りにも怯むことなくグラフィティを描き続けるストリート・アーティストたちの活動を追い続け、やがてバンクシーにもカメラを向け始める。ところが、ティエリーに映像のセンスがないと見抜いたバンクシーはそのカメラを奪い取り、逆にティエリーを撮り始める。そして、このごく平凡なティエリーおじさんをある奇想天外なプロジェクトに巻き込んでしまうのだが…。
"allcinema online"より抜粋)


(1)ストリートアートとかグラフィティアートというのはてんで詳しくはないけれど、いわゆる大衆芸術や教養芸術などと言われるメインカルチャーに対する"カウンターカルチャー"としての側面も持つ。MBW(ミスター・ブレインウォッシュ)ことティエリー・グエッタは本作で「芸術は洗脳」だと言っていたけれど、どちらかと言えばカウンターカルチャーは洗脳を解く――既存の価値観という洗脳を破壊する役目があると思う。
 それ以前にもっと下世話で重要な要素としてメインカルチャーは映画にせよなんにせよ基本的に商売となり得るし、作り出すのにお金がかかる(例えば小説は高額の出版費・宣伝費が必要だ)が、それに対応するカウンターカルチャーは基本的に必然的に儲かるとしても少額だし、それ故に制作費も極小で済むものも多い。

 本作はそのようなカウンターカルチャーというものがどのように盛り上がり衰退していくか、そしてそれを迎え撃つ新たなカウンターの登場を通し、アートの価値とは一体なんなのかということを、ポップなムードと皮肉な笑いを込めて描いた秀作だと思う。


(2)本作は二部構成に分けられる。
 前半は現代のストリートアートについて。ティエリーが従兄弟の"インベイダー"づてにストリートアートに興味を抱き、大御所バンクシーと出会うまでを描く。
 ここらへんの無邪気なアート制作の楽しさが、ティエリーの幼稚なビデオ撮影と相まってすごく楽しいのだが、ここにて明らかにされるのが、ストリートアートとは単にポーズやファッションなだけではないということ。もちろんそれも重要な要素ではあるのだろうが、それを超えて"社会との積極的で挑発的な関わり合い"の上に作られているものであるということ。
 本作に登場するアーティストたちは犯罪スレスレ(もしくはとっくのとうに犯罪)で、ときに命の危険があるところまで出張り表現をする。その内容は街のラクガキのようなごく個人的な自己表現に始まり、政治的なメッセージまで幅広いが、共通するのは何か大きな流れ(政治、風潮、文化、風習)に一石を投じようとする態度とそこに商売っ気は基本的に皆無であるということ(というか、彼らはそれぞれどうやって食べているんだろうか?)。

 彼らのアートに対するパンキッシュな姿勢を表すように本作の演出(というかティエリーの撮影)は『ゴダール・ソシアリスム』のごとく乱雑なデジカメ映像やテレビ番組のモンタージュと、どこか挑発的なBGMで奏でられ、なかなかファンキーで刺激的。


(3)が、そんなストリートアート界に少し変化が訪れるのが後半だ。我が国でもお馴染み村上隆らの作品と共にバンクシーらストリートアーティストたちの作品が高額で売買されはじめる。
 曲がった電話ボックスは何気ない街角にどかんとイタズラっぽく置かれていたことに意味があったはずなのに、オークション会場を経由し、どこかの大金持ちの家に高尚な芸術作品(それらもかつては挑発的なカウンターカルチャーであったのだろうが)と共に飾られる。

 そして汚い街角の日陰に描かれていた彼らの作品がメインカルチャーになっていく。

 それを体現・象徴するのがティエリーが芸術家に扮したミスター・ブレインウォッシュだ。アートに対してそれまでのような受け手ではなく、バンクシーのように作り手として栄光に授かりたいと考えだした彼は、バンクシーの勧めもあって自分もアート活動を始める。
 何かを表現したいという欲求よりもアーティストというものになりたい欲求が強かった彼は、古着屋経営で鍛えた元来の天才的な商売センスを駆使し、有名になるべくバンクシーらが築いた既存の価値観に前習えし、バンクシーの名前を利用しまくることで成功を収め、最終的にはなんとマドンナのCDジャケットを手がけるほどにまで成長する。
 ここにおいてストリートアートはその作り手たちが挑戦すべき商売っ気たっぷりのメインカルチャーへとなったのだ。


(4)この(2)(3)の流れで描かれていることは大きく以下の二点である。

 まず「繰り返されるアートの攻防」。例えばプレスリーだってビートルズだってルネッサンスだってそもそもはメインカルチャーに対抗するカウンターカルチャーであったはずだが、今やこれ以上ないほどメインストリームのド真ん中を闊歩している。当時相当パンキッシュな作品としての評価を与えられていた『俺たちに明日はない』やダスティン・ホフマンの『卒業』もいまや一見しただけではどこらへんが反体制なのかわかりづらくなってしまっている。
 同様にバンクシーらストリートアートの作品は経済的価値が付与し、MBWのような経済活動を念頭においたアーティストが登場することで、ポップなメインカルチャーへと変貌する。

 もう一点は「アートの価値は商売・宣伝の仕方によって変動する」ということ。
 終盤MBWの個展のシーンで彼の作品がいいのか悪いのか分からなかった人は多いはずだ。僕などはアート通っぽい来場者の「彼は素晴らしい」という意見に「やっぱりこれいいんだ」と思い、逆に「ゴミクズだね」みたいな意見に「やっぱりこれ駄目なんだ」なんて左右されたりした。
 中盤に登場するMBWが編集した映像もバンクシーがバカにするまでは「なんだか難解だけどこれがアートなんだろうな」なんて思ってしまった。
 更にそこにお金が絡むコマーシャルの奮闘が加わればその価値はかなり変動する。なんだかよくわからないものでもオークションで高額で取引されていればなんかいいものの感じがする。
 そうこうしているうちにしまいにはバンクシーの作品ですら「それは本当にいい作品なのか?」と価値観をぐらつかされる。
 バンクシーは自分も巻き込まれた(というより中心にいた)この一連の騒動を、客観化し、MBWを主役に映画化することによりアートの価値と経済や宣伝の癒着という大きな流れを、ユーモアと皮肉たっぷりに描いて、「本当にお前の思っている作品は素晴らしいのか、俺の作品は皆がいいって言うほどいいものなのか?」とアート業界に一石を投じているのだ。


 この二点をまとめると、アートと経済や宣伝の密接な関係が導きだされる。アートに一般的な価値を付与しメインストリームを歩かせるには、経済活動・コマーシャル活動が重要である。
 タイトルの『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP(お出口はグッズ売り場を通り抜けたところ)』を考えると、大きめの美術館や博物館は必ず出口にお土産コーナーがあるが、それが示すように、いくらアート側が拒否しようとアートと経済・コマーシャル活動は切っても切り離せない関係にあり(グッズが売れないと美術館は赤字らしい)、それは作品の価値すら左右するようになっているのだ。


 以上、『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』は、アートというものの価値がどのように成り立っているのか、そこに経済や政治がいかに関わっていて、我々を「これはいいものだ」と"洗脳"(やっぱりMBWが言うようにアートは洗脳だ)しているか、ということを描き、アートに対してもう一度考えさせられる作品であったと思う。
 噂に違わぬ面白さです。既存の芸術の価値観をぐらつかせ、様々な洞察の手がかりを投げかけるところなど、さすがといった具合。アートに対して懐疑的になる一方で、また非常に興味を抱かせる作品です。過剰宣伝に泳がされ気味な僕のようなアナタにオススメ。

 岸本セシルレベル

 次回はすげー今更です。アレッサンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの新作『BIUTIFUL ビューティフル』の感想。綴りのミスは(原文ママ)ですよ。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/08/10(水) 13:59:14|
  2. 映画ア行
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2
<<『BIUTIFUL ビューティフル』はカミサマ不在の宗教映画だよ。 | ホーム | 『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』は賢者の石を使えばいいよ。>>

コメント

いやー、本当に面白いドキュメンタリーの一つなんじゃないでしょーかあれは!
うちらを含めて、アーティストじゃない人達はいかにコマーシャリズムに踊らされているのか!
マドンナごとdisっちゃうのもサイッコー笑
  1. 2011/08/10(水) 17:10:04 |
  2. URL |
  3. 男爵改めJAZZパチーノ #-
  4. [ 編集 ]

>男爵改めJAZZパチーノさん

 アーティストも多分踊らされていますよね。マドンナとか。
 でもMBWの作品、悪くないと言われれば悪くないし…バンクシーの作品をそこらへんの誰かが作ったと言われそれを著名な誰かがディスりまくったらなんか悪い作品に思えてしまうし…。
 『映画秘宝』で誰かがMBWとバンクシー同一人物説をとなえていました。
  1. 2011/08/11(木) 03:18:01 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』 (2010) / アメリカ・イギリス

原題: EXIT THROUGH THE GIFT SHOP 監督: バンクシー 出演: ティエリー・グエッタ 、スペース・インベーダー 、シェパード・フェイリー 、バンクシー 鑑賞劇場: シネマライズ 第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネート。 公式サイトはこち...
  1. 2011/09/12(月) 18:20:34 |
  2. Nice One!! @goo

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