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『BIUTIFUL ビューティフル』はカミサマ不在の宗教映画だよ。

biutiful

 今回は、ブヒャー!"BIUTIFUL"だってバカじゃねーの!?お前の偏差値カブトムシ程度なんじゃねーの!?でおなじみ『BIUTIFUL ビューティフル』の感想です。

 観に行った映画館は信頼のブランドTOHOシネマズシャンテ。火曜会員1300円の日に加えて最近のvitで予約すると100円引きというキャンペーンの合わせ技で1200円で見ることが出来ました。わーい。
 公開してけっこう経っていたのでわりと空いていました。会社帰りのOLやサラリーマンが多め。


概要:2010年のスペイン・メキシコ映画。製作・監督・原案・脚本は『アモーレ・ペレス』『21g』『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。音楽はグスターボ・サンタオラヤ。
 スペイン、バルセロナ。この大都会の片隅で、移民や不法滞在者を相手に、時には違法なことにも手を染めて日々の糧を得ている男、ウスバル(ハビエル・バルデム)。麻薬に溺れ荒んだ生活を送る妻マランブラ(マリセル・アルバレス)と別れ、愛する2人の子どもたちを男手ひとつで懸命に育てていた。ところがある日、彼は末期ガンと診断され、余命はわずか2ヵ月と告げられる。死の恐怖にも増して、何よりも遺される子どもたちの今後が、苦しみとして重くのしかかってくるウスバルだったが…。
("allcinema online"より抜粋)


 "宗教"とはそのほとんどが本質的なテーマとして「死」をどのように扱うかということについて考えている。何が恐ろしいって人は死ぬことが何より恐ろしいからだ。

 死から逃れるために生命活動は本能的に気持ちいいものなのだろう。セックスも食事も排泄も睡眠も気持ちいいものだ。
 ところで水木しげる先生曰く「死」の瞬間も気持ちいいらしい。貧血で倒れたことがある人は分かると思うけれど、苦しみからふわっと解放されるあの感覚が死の瞬間となるとより増すわけで、気持ちよくないはずはないと推測する。
 その「快感」は生命活動の苦しみから解放されたことによる快感なのだろうか、それとも死の瞬間に自身の生命を最大級に感じることで得られる最終最後の生命活動の快感なのだろうか。


(1)まずこの作品が"海”"砂漠"を描いていることについて考えたい。
 世界は「死」に溢れている。この世は死体だらけの世界だ。地球の表面の7割を覆う海は生物の死骸のスープだ。この世界は死が普通で生はむしろ異常だといってたのは『新世紀エヴァンゲリオン』だっただろうか。
 『BIUTIFUL ビューティフル』の主人公ウスバルはそのような"海"を恐れている。死のスープが奏でる波の音は死の誘いだからだ。

 一方で本作においてこの世界で生きることは「砂漠」に例えられている。
 本作が描くスペインの町は寒々しく埃っぽく汚れきって、社会問題も環境問題も数えきれないほど渦巻いており、見ているだけで疲れてしまう息苦しさがある。
 ウスバルは死を宣告されたことで『生きる』の志村喬のごとく自分が生きた証を残そうと奮闘するが、そんな一朝一夕じゃ移民問題も格差社会も別れた妻マランブラの躁鬱病もワーキングプア問題も解決するはずがない。
 結局この物語で彼は誰一人として救うことができない。物語序盤で示された本作の葛藤に何一つ打ち勝つことはできない。黒人女性イへ(ディアリァトゥ・ダフ)にもお金や住む場所を提供したことで逆に彼女を縛り付け、主人の待つエクアドルに帰りたいという希望をなし崩しにしてしまっているし、もっと悲惨なのは彼が斡旋した中国人労働者たちの労働環境が少しでもよくなるようにと買ってきた暖房装置が起こした悲劇だ。
 ウスバルは死を前にもがき苦しむだけだ。それこそまさに"砂漠"のようである。


(2)続いて本作において"死"はどのような意味をもつのか、もう一度考えたい。
 本作は『シックス・センス』のごときホラーサスペンス要素がある。前知識無しに見たのでけっこう困惑してしまったのであるが、ウスバルは『ヒアアフター』のように死者の声が聞こえる。
 遺されたものは死者に対して劇的な思い出と別れを求めるが、死者たちが遺す言葉は大体しょうもない。『怪談新耳袋』ようなおぞましい姿になって盗んだ時計の話などをする。
 ウスバルの会ったこともない父親はかつてスペインを脱走してメキシコに向かうがようやく到着した2週後に若くして死んでしまった。父親のみすぼらしい腐った遺体を見つめるウスバルは父が生前何を遺せたか、自分が何を遺せるかを考える。父親は本物かどうか怪しいダイヤモンドの指輪を遺したくらいだった。
 そしてウスバルも父親や幽霊たちと同様に何にもできない。人並みに子供を育てることすらできない。ここにおいて彼は何も遺せず、誰にもほとんど記憶されず、みすぼらしく醜く死んでいくだけなのである。なぜならこの世の中で"死"はむしろ普通なのだから、映画のような特別でドラマチックなことなど起きやしないのだ。

 このように、本作において、一見、"死"はなんでもない無情なものなのだ。


(3)続いて、そのような無情な世界のなか、ウスバルは残されたわずかな時間をどう扱ったか、物語の結論について考えたい。
 彼は荒れ果てたバルセロナの街に一矢報うことすら出来ず、ただ死んでいくだけだだが、冒頭と結末で示されるように、ウスバルは本作に登場する他の霊と違い、素直にあの世へと旅立つ
 自分の父親が彼にしてあげられなかったこと――すなわち子供たちに父親がいたという思い出をあげること――それは何よりも、本物のダイヤモンドよりも美しいものだった。それ以上に自分が生きた証というものはない。娘との対話でそれに気がついたウスバルは、全てを包み込む"死のスープの海"へと晴れ晴れとした表情で向かうのだ。

 "なんでもない無情な死の世界"において、もしウスバルのように生きた証明、生きた記憶を遺すことができたのならば、やっぱり死は気持ちいいのかもしれない。それは生きる苦しみからの解放であると同時に、自分が生きた証を噛み締める最初で最後の瞬間だからだ。


 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は毎回キリスト教的な視点を大事にする監督であり、本作は珍しくキリスト教を表面に出してこないなと思ったけれども、「死」をどのように受け取るか、死の恐怖に真っ向から立ち向かう辺り、キリスト教的では何にせよ、宗教的ではありました。

 以上『BIUTIFUL ビューティフル』"死"という未知なるものに対してどういう態度をとるべきか、生きるとはどういうことを真っ正面から描き、死の恐怖を緩和させる宗教映画のような作品であると感じた。


 あまりデートコースには向いていませんが、力強さとパワーがある作品です。
 岡本あずさレベル

 次回は小難しい映画が続きますがセミフ・カプランオールのユフス三部作の最終章『蜂蜜』の感想です。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/08/11(木) 03:09:54|
  2. 映画ハ行
  3. | トラックバック:8
  4. | コメント:2
<<『蜂蜜』は"ハチとユフスの神隠し"だよ。 | ホーム | 『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』ではしっかりとお金を儲けるよ。>>

コメント

死と宗教

わざわざTBをいただき、ありがとうございます。
さて、「かろブッチ」さんは、結論的に、この映画は「"死"という未知なるものに対してどういう態度をとるべきか、生きるとはどういうことを真っ正面から描き、死の恐怖を緩和させる宗教映画のような作品」だと述べておられますが、日頃宗教のことなど何も考えないクマネズミには思いもよらない視点であって、実に鋭いご指摘だと思いました。
そして、水木しげる氏の言葉を引用しつつ、「死は気持ちいいのかもしれない。それは生きる苦しみからの解放であると同時に、自分が生きた証を噛み締める最初で最後の瞬間だからだ」とも述べておられます。
とはいえ、(2)において、「本作において"死"はなんでもないのだ」とされつつも、(3)において、「ウスバルは本作に登場する他の霊と違い、素直にあの世へと旅立つ」、「"死のスープの海"へと晴れ晴れとした表情で向かう」と書いておられます。そうだとすると本作においては、「死」について、「なんでもない」場合と、ウスバルのように「気持ちいい」場合との二つのケースがあるように描かれていると、「かろブッチ」さんは考えておられるように思われるところ、そこらあたりに宗教が介在する余地が出てくることにもなるのでしょうか?
「アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は毎回キリスト教的な視点を大事にする監督」だとすると、あるいは神の国に選ばれる人と地獄の業火で焼かれる人とに裁かれる最後の審判にもつながってくるのでしょうか?

なお、つまらないことですが、「かろブッチ」さんが、「死は気持ちいいのかもしれない」と述べておられる点に関しては、今のところクマネズミは、立花隆氏が「死にゆくプロセスというのは、これま考えていたより、はるかに楽な気持ちで通過できるプロセスらしい」と述べていることに与したいなと思っているところです(クマネズミのブログの本年3月5日の記事をご覧になっていただければ幸いです)。
  1. 2011/08/11(木) 06:04:27 |
  2. URL |
  3. クマネズミ #nmxoCd6A
  4. [ 編集 ]

>クマネズミさま

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 
 まず「宗教」云々というのは単純に本作が死に対してどのような態度がとれるかを描いているというだけのことで、深い意味はございません。キリスト教とか書いちゃったのでややこしくなりましたね、申し訳ないです。

 主人公ウスバルは「とりわけ特別なものではない"死"」に対して、如何にドラマチックにそれを受け取ることが出来るかということに挑戦しました。しかしやはり現実はそんな映画のように美しい散り際を用意してはくれない。ただし生きた証を少しでも噛み締めることが出来たら、生きた証を誰かに覚えてもらうことができたら、それは少しだけ「気持ちのいいもの」に変わるかもしれない、みたいなことを上では長々と書いたつもりです。
 その「生きた証を少しでも噛み締めることが出来たら、生きた証を誰かに覚えてもらうことができたら」というところが「死の恐怖の緩和」という点で宗教的だなと。

 立花隆の『臨死体験』は未読でしたが、これを機会に読もうかなと思っております。ありがとうございます。

 ちょっと読みにくかったので書き直しますね。

 また遊びに来てください。
  1. 2011/08/11(木) 08:04:04 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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