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『NINE』は親離れして見るべしだよ。

NINE

 マクラはとくにございません!!
 今回はようやく『NINE』の感想を書くよ。
 なんかうだうだしていてごめんなさい。

 見に行った映画館はTOHOシネマズ六本木ヒルズ。金曜の昼間でそこそこいる感じ。客層は女性がほとんど。一番大きなスクリーンの劇場でちょっと前めで見たのが正解だったようで、迫力ある映像が楽しめました。


ストーリー:1964年、イタリアの著名な映画監督グイド(ダニエル・デイ=ルイス)は、スランプに落ち入り、新作脚本『ITALIA』のアイディアに煮詰まっていた。マスコミやプロデューサーから逃げ出したグイドは、妻ルイザ(マリオン・コティヤール)、母(ソフィア・ローレン)、不倫相手カルラ(ペネロペ・クルス)、年少期の性の目覚めの対象だった狂女サラギーナ(ファーギー)、愛人であり彼の映画に多数主演する女優クラウディア(ニコール・キッドマン)ら、彼にまつわる様々な女性との会合や妄想を経て、やがて嘘で固められた空っぽの自分自身、嘘で固められた映画制作や結婚生活に嫌気がさし、クランクイン前日、ある決断をするが…。


 ストーリー書きにくい映画だなこりゃ。
 この作品、あんまりそこ宣伝しないから知らない人もいるかも知れないけれど、『フェリーニの8 1/2』という1964年のフェデリコ・フェリーニの名作映画のミュージカル化作品なんです。リメイク映画って9割型オリジナル作品との比較によってあんまり幸せな評価をもらっていない作品が多い中、この映画はミュージカル化というジャンルを超越したリメイク方法でオリジナルとの比較をある程度軽減して、ある程度、比較ではない正当な評価を得ることに成功していると思うんですよ、ある程度。もちろん比較の上で文句言っている人も多いけれど、でもあれだけの名作映画のリメイクにしては少ない方。このリメイク方法を他の映画で例えるならば『男はつらいよ』をスプラッタホラーにリメイクみたいな。いや、それは言い過ぎだけれど。今回はそんなこの映画特有のリメイク方法に留意して感想を書きたいなって。
 
 『フェリーニの8 1/2』は背伸びするのが好きだった10代のころ割とマイベスト映画だったりしましたが、童貞真っ只中の10代の僕にあんな複雑な人情の機微なんてわかるはずなく、あの映画が放つイタリア特有のなんとも言えない知的で下品でオシャレでエロティックな雰囲気が好きだったんですね。フェリーニ論はおそれ多くて書けませんが。

 で、今回の『NINE』。140分もあるオリジナル映画をミュージカル描写込みで2時間弱にまとめられるのかって言うと土台無理な話で、10代のころの僕が愛していたような『8 1/2』のオシャレな表面をなぞるかのような作品でございました。でも、それは確信犯的なところがあって、自分の映画の中身の薄っぺらさに落胆するグイドのシーンや、それに続くステファニー(ケイト・ハドソン)の歌う、彼の映画のオシャレさをどこか自虐的に誉めたたえる歌などに現れている。グイドの「何事も包み紙より中身の方が重要である」っていうセリフも怪しい。

 で、そういった思い切った判断は英断だったと思います。難解な人間ドラマは深く触れないでおいて、とにかく絢爛豪華でセクシーなミュージカルを楽しもうぜっていう。『8 1/2』はその美しい表面だけで十分傑作レベルだし、その表面だけを借りて本当にゴージャスな俳優陣が色気たっぷりに歌うっていう、それだけでも、上手く作ればつまらない作品になるはずはないのだ。

 で、この作品は絢爛豪華なキャストと衣装と美術を駆使し、頭から離れないすばらしい曲を用意することで、上手につくることに成功している。例えばペネロペ・クルスのエロさは相変わらずだし、老いてなお美しいソフィア・ローレンの神々しさとか、ジュディ・デンチのかっこよさとか、ケイト・ハドソンのダイナミックさとか、ファーギーの狂気的な野獣っぽさとか、ダニエル・デイ=ルイスの知的で怪しくて人間くさい色気も。それが全員集合するオープニングシーンの楽しさったら! また映像表現もフェリーニを意識したかのような、コントラストの強いモノクロ映像や、『8 1/2』から継承した、夢か現実か曖昧な物語構成も、素直にかっこよい。


 じゃあこの作品が外見だけの薄っぺらい作品かと言われれば、それだけとは限らない。オリジナルでも主張されていた、映画という作品が得てして持っていて増長させてきた虚構性に対する問題意識を、原作とはまた違う方法できちんと描いていると思う。例えばミュージカル描写なんて虚構の極地だし、例えばエンディングの描写は、オリジナルのラストを拝借した方がミュージカル的に楽しい感じになって良かったのにとか思ったんだけれど、ミュージカル調を受け入れるようで逆に拒絶するかのような今作のああいった形での終らせ方により、現実とミュージカルの橋渡しをしているのかなって考えれば、これはこれでありだと思います。


 ただまあリメイク作品ゆえの宿命というべきか、「比較」はもちろん少なからず感じる。一つのシークエンスに一つのミュージカルシーンがあるって感じでテンポ良く映画は進んでいくけれども、物語性を希薄にしてしまったために、それぞれのシークエンス同士に有機的な絡み合いが感じにくくて、なんだかミュージッククリップを連続で見ているような錯覚を覚える。「ここ、オリジナルならもうちょっと何かを感じさせてくれるのに」なんてたまに顔を出してくる「比較」の誘い。
 こちらとしても意識的にオリジナルの記憶は閉め出すのが、楽しむためには一番なんだろうけれど(これは『かいじゅうたちのいるところ』の原作問題で学びました)まぁ難しいよね。『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメと原作漫画みたいにまったく別物として楽しめればいいんだろうけれども…。


 てなわけで、『NINE』は、『8 1/2』のオシャレでかっこいい表面と最小限のテーマ性だけを抽出し、オリジナルとは全く別のミュージカルと言う演出方法でリメイクしたことで、オリジナルとの比較を避けることにある程度成功し、ある程度比較の無い正当な評価を得た作品なのである。


 あぁこれは余談なんですけれど、そもそも『8 1/2』を見ないか知らないでこの映画を観に行く人が圧倒的だと思われるわけで、原作を知らないとキャラクターの数少ない心理描写を、無意識的に『8 1/2』のパーツを借用することで補完することができず、より中身が薄い映画に見えちゃうかもしんないなんて思うところもあって。別物として見るのもまあ一長一短ではあるんですが、ダニエル・デイ=ルイスの演技が含蓄があって素晴らしいので、むしろ『8 1/2』に縛られないぶん、観客の自由な妄想を誘発させてくれて、心理描写が少ないとは感じないかしら。

 あ、あとサラギーナが気の狂った太ったオバサンじゃなくて、ファーギーだったことは、ちょっと残念だったかな、ファーギーも相当良かったけれど。

 なんにせよ、色気たっぷりで歌唱力も演技力も底抜けの連中が歌い踊るシーンが連続するってだけでもう見ものなので、フェリーニだのなんだのと御託を並べずに、ペネロペ・クルスがエロいってその理由だけで大画面で見に行くのをオススメします。
 クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!レベル


 次回はなんとも感想の書きにくい話題作『シャーロック・ホームズ』の感想を書きます。おたのしみにしなさい。

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 でもね、この感想じゃ論として浅すぎると思うので、「その(2)」を書いてリベンジいたしますね。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/03/31(水) 02:04:56|
  2. 映画ナ行
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<『NINE』の感想その(2)だよ。 | ホーム | 「週刊少年ジャンプ」2010年17号の一言感想>>

コメント

枕無し、なんと読みやすいことか(笑)。

しかし合掌したいくらいまともに素敵な感想文を書いてくださり本当にありがとうございます。
配給の人間ではございませんが、個人的にとても応援していたのにこのコケぶり(と言ってしまえる)に納得できてしまう日本人観客への信頼のなさを持っていた私です。
その観点から言うと、これは非常にウケの悪い要素がふんだんに盛り込まれていて極論をいえば「長所はキャストが豪華なだけ」なんて意見がまかり通ってしまう…というわけで実際ウチの女性陣は皆この映画の楽しさを感じられていませんでした。

結局フェリーニの名を出してしまうと【アート系】に解釈され、一般的に寄り付きが弱くなる…という理由で、【キャスト】【豪華さ】【エンタメ】という要素で宣伝展開され、その内容は「蓋を開けたら…」にして隠されてたと思います。
しかしプレスやプログラムの中身は「フェリーニ」出しまくりで、「プロまで手を出してくれる人にはわかってもらえるだろう」的な製作者側の宣伝に対する気持ちの葛藤がうかがい知れました。

何が言いたいかというと自分でもまとまりきれてませんが(笑)、フェリーニを知らずにこの映画を両手挙げて悦び楽しめるのはちょっと難しく、ミュージカルを知らずに単純なエンタメとして観ることもかなわず、言いたくないけど【観客を選ぶ映画】になってしまっている…しかしコレを単館系にするにはあまりにも勿体無い!という映画を愛する業界人の熱意、そんなものが今回はこの映画をナントカ動かしていたのではないかと、まぁそんな風に思うのです。のわりには、やっぱり弱かったなぁという結論ですが。

同じ施設内にあるTSUTAYAに『81/2』置いてない時点でガックリな気分の映画館スタッフのぼやきでした☆
  1. 2010/03/31(水) 10:46:29 |
  2. URL |
  3. かみ #-
  4. [ 編集 ]

 コメントありがとうございます。

 お客さん、入ってないんですか。むしろ【キャスト】【豪華さ】【エンタメ】という要素のみで、全然見る価値ありの映画だと思うんですけれどね。

 リメイクものとかパート2ものとか、そういうの、オリジナルや前作知らないと楽しめない作品ってたくさんあって、それって映画としてやっぱり欠陥だと思うんですよ。
 例えば『ヱヴァ破』は超絶面白い映画だったとは思いますが『序』はおろか旧TVシリーズも見ていないと理解ができないのは、映画のモラルとしてどうかななんて思ったりして。その点、この作品は全然マシだと思うんです。

 むしろ『8 1/2』はあんな映画ですから、あの映画を見るガイドラインとしてむしろ逆に『NINE』が役立ってたりして、そういった観点で、こういう表層面ではなくて、つかみ所が難しい内容面について、もっと突っ込んだ感想を「その(2)」として書いてみたのでよろしければ、読んでけろ。

 『8 1/2』は、最近ようやくDVD化されて、レンタルはされてるのかな?見かけませんよね。VHSならたまに見かけるけれど。
 あれは僕、持ってますけど、VHSと比べて、とても美しい映像で蘇っているので、購入をお勧めしますよ。
  1. 2010/04/01(木) 02:56:53 |
  2. URL |
  3. かろプッチ #-
  4. [ 編集 ]

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