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『NINE』の感想その(2)だよ。

 ナイン2

 前回の『NINE』の感想ですが、個人的に思うところがあって、もうちょっと深く考えた方がいいんじゃないかって。義務的に感想書いて、それで終わりで、そんなんじゃ趣味でこんなことやってる意味もないわけで、もうちょっと気合い入れて深く考えた方がいいんじゃないかなーってことで、前回のリベンジっていうか捕足です。

 今回はネタバレありかつ、両作品見ていないとなんだかよくわからないかもしれませんので、ご注意。
 まぁ二つともネタバレってほどたいそれたものがある作品でもないんだけれどね、実はグイドが幽霊だった!とか、実はフェリーニはオカマだった!とか。


 『NINE』と『フェリーニの81/2』の比較を主に、『NINE』が『8 1/2』をミュージカル化したわけ、タイトルを変えたワケを考えたい。そこにどんな意味があるのか。

 二つの映画の違いには原作と今作の「映画」に対する考え方の違いが感じられる。
 映画とはそもそも多かれ少なかれ「嘘」を語るものである。劇映画はもちろん、ドキュメンタリー映画にしたって、製作陣の様々な意思を通した上での作品である限り、それは真実ではない。いかに上手く面白く嘘をつくかが映画制作者には求められている。
 しかしながら、一方で映画には、いかに「真実」を語るかっていう命題も存在する。作品に真実性がなければ、説得力や娯楽性どころか、物語性も何も生まれない。
 「映画」とはこのように、「嘘」と「真実」という矛盾した二つの要素を同時に求めなければならないパラドックスを内包している。

 『8 1/2』と『NINE』とに共通する問題意識はそこである。
 主人公グイドは映画監督であり、嘘をつく商売である。彼は映画に素直な真実性を求めるが、映画を撮れば撮るほどにただ嘘を積み重ねるのみで、真実には到達出来ない。また彼の回りには嘘くさい希薄な人間関係があふれており、彼らとの交遊にもやはり現実味がわかない。以前は確かに存在していたはずの妻ルイザとの関係も、いつのまにか曖昧なものになってしまっている。そういった人間関係にも確固たるものを求めるグイドだが、関係を重ねれば重ねるほど、「嘘」は積み重ねられていく。つまり彼は映画作品と、人間関係という二つの点で「真実」を求めながら逆に「嘘」をつきつづけているのだ。
 
 ただしこの二作品に共通する「嘘と真実」という考え方に関して、結末で意見が分かれる。
 『8 1/2』の結末は希薄な人間関係、真実が無い薄っぺらい映画に嫌気がさし、映画を投げ出すグイドが、開き直るかのように、嘘と空想で構築された人間関係を、これもひとつの現実であるという解釈方法を得て、そういう虚構や欺瞞に満ちた解釈の中でポジティブに生きていこうとする。
 一方で『NINE』の結末は、複数の女性との希薄な人間関係という嘘でぬりかためられた人間関係でも、それでもその結果としていまの自分が存在する限り、一つの立派な真実はあるっていう解釈。最後に幻影として彼にまつわる女たちが出てくるが、『8 1/2』のように虚構の中で生きようとはせずに、現実にいる映画監督の立場で虚構を虚構ときちん認識して、それに向き合いながら真実を追い求めようとする姿勢をとる。
 ここに二作品の嘘と真実に対する微妙な考え方の違いがある。どちらも「嘘」を肯定している点は同じだが、『8 1/2』は真実の否定、『NINE』は真実の肯定をしている。

 で、ここで重要なのが、『8 1/2』の「嘘」を象徴するシーンはグイドの妄想の数々であるけれど、これは現実か妄想かよくわからないまま、結末では「妄想も真実も曖昧でいいじゃん」みたいな終り方をするわけだけど、『NINE』ではこの「嘘」や「妄想」のシーンがミュージカルになっている。これはもう完全に作中の現実の描写と切り離されている。つまりより虚構性が高くなっているのだ。
 嘘の仕事、嘘の人間関係、そして嘘だらけのこの二つの映画、虚構と現実との繋がりをある意味断ち切ることで、映画の持つ虚構性を「人生は祭だし、嘘でも楽しければいいじゃん」って肯定した『8 1/2』に対し、『NINE』はミュージカルという虚構性の高いパーツを繋ぎ合わせながらも一つの真実に到達できるっていう「映画」に対する考え方を提示している。
 『8 1/2』というタイトルはフェリーニの監督作品9作目だけれど、それは(作中では)未完の作品だよって意味で「8作と半分」なんだけれども、それを「9」に変えたその0.5の違いが、その「映画と真実」に対する考え方の違いにあると思われる。

 てなわけで、前回の感想ではコンセプトの解説しか出来なかったので、今回はもうちょっと内容面に踏み込んでみました。でも、いくらリメイク作品と言えど、今回みたいに他作品と比較することで評価するのはちょっとタブーにしたいんですけどね、ついしちゃう。

 そんなわけで次回こそ『シャーロック・ホームズ』の感想を書きますね。

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(2009/03/01)
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/04/01(木) 02:28:45|
  2. 映画ナ行
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<『シャーロック・ホームズ』は腐った視点が必要かもよ。 | ホーム | 『NINE』は親離れして見るべしだよ。>>

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