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「少年ジャンプ」と水木しげると映画とおもちゃと特撮を愛します。

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『月に囚われた男』はSF版『逆噴射家族』だよ。

月に囚われた男

 『ドラゴンクエスト』みたいなやり込み要素が強いゲームを永遠とやっていると、ふと自分の後ろに自分が立っていて、そのもう一人の自分が「自分、何やってんだろ…」って目で見つめてきたりします。
 夜中、明日朝早いのに、特撮ヒーローのフィギュアを持ち出して『けいおん』見ながらガチャガチャ遊んでいたりして、するともう一人の自分が、「自分、何やってんだろ…」って。
 あとこのブログで「少年ジャンプ」をつぶさに端から端まで読んで、その全ての感想を書いてたり、見た映画をことごとく長々と感想書いたりして「自分、なにやってんだろ…」って。
 あとNintendoが世に送り出してきた数々の羞恥プレイアイテムで遊んでいる時とか。

 そういう行為に実りってあるんだろうか。まぁでも実りなんてない事の方が多いよね。何事にも実りを期待してしまうのは幼稚なんだろうか。


 てなわけで、『月に囚われた男』の感想。
 観に行った映画館は恵比寿ガーデンシネマ。前回の『9<ナイン>』と一緒に水曜日の1000円サービスデイを利用して見てまいりました。
 客層は様々。会社帰りと思われる男女が多く、大高生っぽい人は少なめ。サービスデイという事もあって満席でした。


概要:デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズの長編監督デビュー作。制作費は500万ドル。イギリス作品、原題は"moon"。
 月の裏側にある「ヘリウム3」というエネルギー採掘のために、宇宙飛行士のサム・ベル(サム・ロックウェル)は、3年の間たった一人で宇宙船にて月面上での生活を余儀なくされている。唯一の楽しみである妻や娘との通信も通信機器の故障のため途絶えてしまい、話し相手は宇宙船に備え付けられているロボットのガーティ(声:ケビン・スペイシー)のみ。ある日、サムは孤独に絶えかね、不注意からとある事故を起こしてしまう。彼が、目覚めると、宇宙船内には自分とそっくりのもう一人の自分がいた。相棒のガーティも何やら怪しい動きを見せており、彼を雇っていたルナ産業が非人道的にも自分のクローン人間を作っているのではないかと疑い出したサムだが…。



 まず、この映画の持つ雰囲気がとてもいいこと。
 SFブームを知らない僕みたいな世代にとって、今作の持つ70年代風のSF的な、レトロフューチャーとも超未来的とも言えない、何とも地に足の着いたSFの匂いはノスタルジックでありオシャレでありとてもわくわくさせてくれる。
 例えばそれは月面移動用の車やガーティのデザインのようなSF装置や、あとストーリー展開も。
 低予算ってこともあり複数の俳優が出せず、このようにクローン人間の設定が出来たりしたそうですが、無理に予算をかけず知恵と工夫でなんとかするところすら、宇宙船の故障でありものを利用することでなんとか帰還したアポロ13号みたいで良SFくさい。


 で、今回の論旨である、本作が「密室」をうまく活用していることについて。
 本作は低予算SFならではの密室劇なのですが、最近の日本映画に多い舞台芝居原作とかのダメ密室劇のせいで、密室劇ってあんまり映画に合わないんじゃないのなんて思っちゃってましたが、要は見せ方の問題なんですよね。『十二人の怒れる男』とか『エイリアン』とか『ダイヤルMを回せ』とか『狼たちの午後』とか『天国と地獄』の前半とか…こう並べると密室劇すげーな。
 これらの作品は、当たり前の事かも知れないけれど、まず密室ありき、ではなくて、物語を面白く描く際に密室である必要性があるから密室劇を採用している作品なんだと思われる。「密室劇を書きたい」という動機から作られてはいない。

 で、今作も「密室」という装置をうまーく使って、物語の面白さを高めていると思う。
 今作で語りたいテーマは「家族」なのではないかと読みましたが、それを描くのに「密室」が重要であると。

 今作でまず目につくのはこれ以上ないほどの「孤独」。物語はサディスティックなまでにサムを絶望的な孤独に追いやっていく。
 「孤独」を癒すのは何か、それはもちろん他者である。サムは物語冒頭から狂おしいほどに他者をとにかく求めている。なので、3年間孤独だった彼の心の支えは彼の家族の存在であった。「家族」が恐ろしい孤独からかろうじて彼を彼足らしめてた。
 なので、その家族の経験を共有するもう一人のサムは、彼にとって決して許す事が出来ない存在である。あれだけ求めていてようやく出会えた他者が、最も存在を許しがたい者であった皮肉。

 だが、物語のある展開によってサムはその家族の存在すら失ってしまう。そんな絶望から芽生えてくる「もう一人のサム」との人間関係の発展。それはまるで新たな家族の誕生の第一歩のように見える。例えば冷徹な牽制をしあっていただけの二人のサムの喧嘩は次第に兄弟喧嘩のようになってくるし、愛する人間を共有するという点で、ある意味二人は兄弟だったりする。そして愛する人間を共有している事を、ある衝撃的な事実を境に認めた時に、二人は運命共同体として結託する必要性に迫られ、絆を高めていく。
 そして忘れてはならない、どうせ「HAL」だろって思っていた、温和かつ冷徹な声で淡々と語るロボットガーティの持つ意外性もそんな家族誕生の物語に加わる。あぁネタバレしたい。
 そもそも「家族」とは決して「愛」だけでは成り立たない。今作で描かれる、二人のサムとガーティの関係のように、いがみ合いや、生活のための必要性、義務、情などから成り立つ。上辺だけになった家族愛が、家族同士の殺し合いによって再生していく様子を描いた『逆噴射家族』に似ている。
 そして「家族」には「家」も必要である。
 宇宙船、そして月という「密室」が作り出した孤独ゆえに、彼らは「家族」へとなり、やがてその「密室」は彼らにとって単なる生活空間"house"から、"home"になる。また、まさに乗組員の揺りかごから墓場までを担うこの宇宙船の役割もまさに”home”と言えよう。

 以上のように、本作は絶望的な孤独から芽生える「家族」の誕生を描いている映画だと読めるが、それを描くにあたって「密室」という装置がきわめて有効であったと考えられる。


 不満点は、クールに語るのはいいんだけど、音楽や映像がサッパリしすぎてケレン味がなく、全体的に恐怖心や絶望感が薄味すぎたのが残念でした。でもそれってもしかして監督がデヴィッド・ボウイの息子って言うんでこっちが勝手にデヴィッド・ボウイ的なモノに対する期待をしてしまったせいにもあるんじゃないかと。
 あと、いちばん最後のシーンは正直蛇足だったかな。余韻をぶちこわしちゃっている。

 パフュームののっちレベル。 

 次回は何故か観に行った『矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~』の感想を書きますね。
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『月に囚われた男』

Moon@恵比寿ガーデンシネマ、ダンカン・ジョーンズ監督(2009年イギリス) このミッションは、何か、おかしい。 近未来─。 クリーンなエネルギー資源を採掘するため月の裏側にたった一人派遣された男、サム(サム・ロックウェル)。 派遣元のルナ産業との契約期間は3年?...
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