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『鉄男 THE BULLET MAN』は表層的かつ即物的かつ狂気的だよ。

鉄男

 特に前置きはなく『鉄男 THE BULLET MAN』の感想でございます。
 観に行った映画館は立川シネマシティ(シネマツー)塚本監督と音響でその名を馳せている井出祐昭氏がわざわざ音響を調節したという爆音&すばらしい音質、音圧を楽しみにはるばる行ってまいりました。確かにロックライブのような爆音で劇場が震えまくってましたが、僕、どうも耳が悪いらしく、皆様が絶賛されるほどには、そのすばらしさを感じられませんでした。もうちょい、耳を鍛えないといけないなーって。
 金曜夜のレイトショー割引で見てきました。客層は20~30代の若者が多く、最終日だったこともあり夜の回にしてはそこそこ混んでいました。


概要:監督は言わずと知れた塚本晋也。89年の『鉄男 TETSUO』、92年の『鉄男2 BODY HAMMER』につづく『鉄男』シリーズ3作目。全編英語作品。エンディングテーマをナイン・インチ・ネイルズが担当。
 東京の外資系企業に勤めるアメリカ人のアンソニー(エリック・ボシック)は、妻ゆり子(桃生亜希子)と3歳の息子トムと幸福な生活を送っていたが、ある日、最愛の息子が謎の男に殺されてしまう。絶望の淵にありながらも、父ライド(ステファン・サラザン)の教えを守り、怒りを抑え冷静に振る舞おうとするアンソニー。彼は息子が殺された理由を追って、解剖学者だった父が関わっていた“鉄男プロジェクト”へと辿り着く。そんな中、自分に向けられた妻の怒りに、いつしか冷静さを失っていくアンソニーだったが、やがてその身体に異変が生じ、怒りによって肉体が鋼鉄へと変貌していく。そこに強烈な死を望む"ヤツ"(塚本晋也)が襲撃をしかけてくる…。
"allcinema ONLINE"より抜粋)


 映画っていうのはスクリーンに映っているのがすべてであり、観客としてもそこに映っていないものを推測するのは(そういう見方の楽しさを否定はしないけれど)邪推にしかならない。で、この映画は良い意味で表層的な映画である。そしてそれ故に実に即物的な感触を持つ映画だと思う。それが論旨。
 言い換えれば『鉄男』パート1&2や他の多くの塚本作品と同様、ストーリーにそこまで深い意味はないと言っても差し支えはない。物語の深読みは無用で、作品を見て、頭ではなく、身体で感じとれることが全てではないかと。

 作品を見てまず最初に気がつくのはマゼンタとイエローを抑えたシアン調の色彩。それは非常に冷たくまるで「鉄」の質感。ギャスパー・ノエは『エンター・ザ・ボイド』で東京を狂気的に欲望が渦巻く街と描いたが、塚本晋也監督は東京を鋼鉄で構成された冷たい街と描く。

 その鋼鉄のひんやりとした触感を持つ街にて展開されるのは、鉄と鉄がこすれあう不快な音と、何をやっているのかわからなくなる不快なカメラワークと編集、そんな不協和音が凄惨な物語を奏でている。

 観客はその速いテンポの編集と、鼓膜に叩きつけるかのような爆音で響く音楽によって、冷たい鋼鉄の鈍器で頭をガンガン叩かれ、鋼鉄のチェーンソーでギリギリ身体を刻まれている感じに襲われる。


 物語の主人公アンソニーは、東京に住む外国人。人間らしさを抑圧されたこの冷たい街で、自分が自分でない感じ、地に足がついていないような宙ぶらりんな感覚におそわれている。フィルムのシアンの色彩が放つ空気感は、観客たちも、アンソニー同様に、アルミホイルを奥歯で噛んでいるかのような、冷たく居心地の悪い感覚にさせる。
 やがて、アンソニーの怒りとともに、彼の身体に生えた「鉄の芽」と同様、むくむくと抑圧を押しのけて頭をもたげはじめる、「生き物」としての感情。
 この「生き物としての感情」であるところの「怒り」が、その方向性の焦点を"ヤツ"へと定めたとき、それは鋼鉄の抑圧を押しのけ爆発する。そしてその感情はアンソニーの身体へと、鋼鉄の塊として、即物的に表れる。
 この爆発は映画と観客をさらにエキサイトさせる。アンソニーと"ヤツ"の戦いがヒートアップすればするほど、ストーリーや意味すら、置いてけぼりにして、ひたすら暴走する「生き物としての感情」。その感情は観念的なすべてを、次から次へと即物的なもの(「鉄」)へとシフトさせ、アンソニーの身体をどんどんいびつな鉄男へと変えていく。
 ここで、特筆すべきは、鉄男の変貌と戦いにCGを使わなかったこと。80年代を彷彿させる『鉄男』らしいSFXで見せてくれる。冷たい「鉄」は「即物的」である必要があり、手につかめないCGではこの感覚は表現できない。

 観客もやがてアンソニーと一心同体となりこの映画の暴走にまき込まれる。今作に関して「映画というよりライブを見ているようだった」といった感想をよく耳にするけれど、ミュージシャンのライブパフォーマンスを深読みしながら楽しむ観客は少ないように、ただその狂乱に身を任せ楽しむことがこの作品を楽しむベストな方法ではないかと考える。


 ネタバレも何もない気がしますが、以下ネタバレします。

 ラストのあの鉄男が"ヤツ"を取り込んでしまう決着方法についてです。第一作目『鉄男 TETSUO』の"ヤツ"も演じた塚本晋也本人が再度"ヤツ"を演じていて、彼が自分の作品に出る時、『TOKYO FIST -東京フィスト-』や『Bullet Ballet』など、生身の身体での感情の爆発を、命を削ったような演技で表現したい時に多いと思うのですが、感情の爆発で身体を鉄にしてしまうアンソニーと、感情の爆発で生命を燃焼させ生身の身体で暴走する"ヤツ"の融合によって、アンソニーの鉄化が治まった…みたいなことを考えても見たんですが…やはりなんだか邪推のような気がして。「なんとなく勢い的にそうしたかったから」、「暴走の波でそういうアクションが正しいと感じたから」、みたいなノリ重視であると読みとった方が楽しいような気がします。


 以上のように、「映画とはただ見た目の芸術である」みたいなことを、塚本晋也も尊敬している市川崑は言っていたが、この作品はただスクリーンに映っているものだけを、頭ではなく、身体で感じさせ、感情を冷たい都市の中で爆発させる狂乱にまき込む映画らしい映画なんだと思います。


 不満点は、もっとストーリーなくていいんじゃないのって。もっとシンプルにしないと、中途半端なストーリーをつらつかせてしまうと、ストーリーに引っ張られてライブ感が失われかねない気がします。
 あと、前作、前々作と比べると、若干パンチが弱いかなって。若干ね。特に塚本晋也の演技、すげーキマってはいるんですが、やっぱり若干年齢を感じてしまい…若干ね。


 まぁ、もちろん好き嫌いは分かれますが、決して難しい作品ではないと思います。とりあえず見てみることをオススメします。あ、こればっかりは『アバター』並に映画館でしか楽しめない映画だと思うので、映画館で、なるべく前の方の席で。塚本作品は比較的リバイバル上映が多いので映画館で見るチャンスも多いと思います。是非。
 川口春奈レベル。


 次回は見ないという選択肢ってあるの? ジョージ・A・ロメロ御大の『リビングデッド』シリーズ最新作『サバイバル・オブ・ザ・デッド』の感想でございます。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

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実験精神にあふれたカルト・ムービーの進化形。東京の外資系企業で働くアメリカ人男性アンソニーは、日本人の妻ゆり子と幼い息子のトムと3人で幸せに暮らしていた。ある日、謎の男が運転する車に息子のトムが轢き殺される事件が発生。絶望と怒りからアンソニーは次第に感...
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