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『闇の列車、光の旅』は『世界の車窓からハードコア』だよ。

闇の列車、光の旅

 以前、ここで扱った『かいじゅうたちのいるところ』をもう一度見ました。
 原作抜きに考えるとやっぱりいい映画だと思います。本当に楽しく美しい映画。編集と、音楽と。風と光の使い方が好き。なんとなく釈然としないのは、ぴょんぴょん飛び跳ねるかいじゅうたちに重量感が感じられないのが大きいと思う。
 ついでに日本語吹き替え版の子供店長バージョンも見たけれど、けっこうひどかったです。マックスの容姿に比べ異常に声が幼い。「子供から少年へ」ってテーマなのに子供のまんまといった雰囲気。


 てなわけで今回は『闇の列車、光の旅』の感想だい。また更新しないでごめんなさい。

 観に行った映画館はTOHOシネマズシャンテ。最近の不況でどこもおとなしめな映画は敬遠しがちな中、シャンテ枠はなかなか頑張っているかと。
 火曜日の会員1300円の日でしたが、たいして混雑もしていなく。例によってお年寄りが多め。


概要:監督・脚本はこれが長編デビューとなる日系アメリカ人のケイリー・ジョージ・フクナガ。
 ホンジュラスに暮らす少女サイラ(パウリナ・ガイタン)。父親は、彼女が幼いときにアメリカへと渡った不法移民。ある日、その父親が強制送還され戻ってきた。そして、今度はサイラも連れて再びアメリカを目指す。父親の新しい家族と一緒に暮らすという提案に気乗りはしないものの、父と叔父と共にメキシコへ向かい、そこからアメリカ行きの貨物列車の屋根に乗り込むサイラ。そんな無防備な移民たちを待ち構えていたのがリルマゴ(テノッチ・ウエルタ・メヒア)率いるメキシコのギャング団「MS(マラ・サルヴァトゥルチャ)」。疑問を感じながらも彼らと行動を共にしていた少年カスペル(エドガル・フローレス)だったが、リルマゴがサイラをレイプしようとするのを見て、ついにリルマゴを殺してしまう。裏切り者として組織から追われる身となってしまったカスペル。サイラは助けてくれた彼に恩義を感じ、その後を追ってしまうが…。
("allcinema online"より抜粋)


 描きようによっては『ジョニー・マッド・ドッグ』のように悲惨で残酷でとことん哀しい物語にもなりかねない作品なのだが、何故だかうっすら暖かい気持ちになる妙な映画である。
 その「暖かさ」とは何かについて考えたい。
 結論からいうと、本作は、凄惨な中南米の貧困層の現実を描きつつも、信頼の持つ心強さを描いた作品ではないかと考える。

 まず、これが非常にリアルでドキドキさせる中南米の現実の描写について書きたい。
 この社会にとって、少年が大人になる第一歩はその手で人を殺すことである。主人公が属するギャング組織「MS(マラ・サルヴァトゥルチャ)」から信頼を得るためには、ライバル団の捕虜を銃殺しなければならないし、まるで日本の小学生がポケモンを自慢するかのごとく、10歳程度の少年スマイリー(クリスティアン・フェレール)は銃を友人に自慢し、人殺しの方法についてけらけら笑いながら議論する。裕福な生活とは決して言えないのに、デジカメや携帯電話、マシンガンがやたら最新鋭なのが妙に生々しくて怖い。また人並みの生活をするには命がけの密入国を試みなければならず、その道中、「くそ野郎」と石を投げられ、あっさりと死んで行く不法移民たちの描写もゾッとする。そういった生々しい現実がスクリーンに展開される。その様は『シティ・オブ・ゴッド』か『ジョニー・マッド・ドッグ』か。

  『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』は閉塞感をうち壊そうとする青年たちの物語であったが、この作品もやはり似ている。少年達は「自分はこのままこの土地で埋もれて死んでいくのだろうか」という不安を抱え、そこから逃げ出そうとする。『フローズン・リバー』『ヒーローショー』『Dr.パルナサスの鏡』『プリンセスと魔法のキス』『アリス・イン・ワンダーランド』も皆悩んでいた問題。
 そういった閉塞感(この作品の場合、それは非常に暴力的で危険な生死に関わる圧迫なのであるが)から逃れるため、サイラとカスペルは、そんなうっくつとした闇の中よりのっそりと現れる貨物列車に乗って「光」のある元へ逃げようとする。旅の先には「光」があるはずだと信じて疑わない。だが邦題の『光の旅』に反して、サイラもカスペルも、ギャング団、移民差別、法などの生々しく残酷な現実に追われ、少しでももたついたらそれらにあっさりと絡まれてしまい、いつまでたっても光には到達できそうもない。


 ストーリーだけ語ると下手したら『クロッシング』のような凄惨な物語になりそうな設定だけれども、前述のようにこの作品には淡い光が溢れ、暖かい印象を覚える

 それは今作が「信頼」をテーマに描いた物語だからなのではないだろうか。
 カスペルは、サイラが彼に感じた「信頼」に触れた時、淡い光をあびる。映像の情緒的な美しさが際立つのは常に信じることを忘れないサイラが一緒にいるときである。

 一方でギャング団「MS」たちの信頼の証は「タトゥー」である。組織に信頼されたものは「MS」のタトゥーを刻まれる。その「信頼」を得る方法は「人を殺す」「13秒間リンチを受ける」などといった暴力に支配されたものである。
 しかしながら全身にタトゥーを刻んだリマルゴに寄せられるものは「信頼」ではなく「恐怖」のみであり、ギャングたちは主人公を捜索する時にその「タトゥー」を目印として探した。それが表すのは暴力と恐怖によって縛られただけのかりそめの信頼でしかない。

 それと比較されることで、カスペルとサイラが育む「信頼」が輝かせる旅路はとても美しく、暖かい。特に終盤の二人のやり取り、サイラが服を脱ごうとした時、決してそれを見ようとしないカスペルの描写などに、「信頼」の持つ暖かさをつよく感じる。
 だからカスペルは、その結末がどうあれ、「信頼」に触れたという点で彼にとってこの旅は「光の旅」であった。彼を追うスマイリーの旅路は、「光」を目指し、その目的を遂行しつつも、彼がたどり着いた地にあったものは「光」ではなかった。

 以上、物語は南アメリカの悲惨な少年犯罪と移民問題を取り扱っているが、その中心には淡くかすかに光る「信頼」が描かれているから、この物語はほんのり美しいロードムービーとなっているのではないだろうか。

 不満点はとくにございませんが、敢えて言えば前半と後半のテンションがあまりに違いすぎて、作品を俯瞰してみると一貫性が感じられにくいところくらい。
 池脇千鶴レベル

 次回は『プレデターズ』の感想を書くよん。
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テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/07/24(土) 02:02:27|
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